(続き)
以下は、科学者たちの研究成果の一部です。
1.森林浴は免疫細胞を活性化し、がんや感染症に効く
日本の森林医学の権威者である李卿(リー・チン)氏は2007年に国際免疫病理学と薬理学期誌『International Journal of Immunopathology and Pharmacology) 』で研究を発表しました。研究で彼のチームは12名の男性に、2泊3日の日程で異なる3カ所の森を訪れ、その間に合計6時間歩いてもらいました。
旅の終わりには、男性の血液中のナチュラルキラー細胞の活性が約50%上昇しました。ナチュラルキラー細胞は、様々な種類のがん細胞や感染細胞を破壊することに特化した免疫細胞です。 また、ナチュラルキラー細胞の3大抗がん性タンパク質がすべて増加し、これらの効果は森林浴後7日以上持続しました。
続いての研究で、李卿氏は、植物が昆虫やバクテリアから身を守るために放出する揮発性有機化合物であるフィトンチッドの存在を、森林の空気中から検出しました。李卿氏は、都会の室内環境であってもこのフィトンチッドを吸い込むと、ナチュラルキラー細胞の活性や抗がん作用が高まることを明らかにしたのです。 森林浴による免疫力向上効果には、フィトンチッドが重要な役割を担っているのです。
また、17年に雑誌「Toxicology Research」に掲載された韓国の研究では、フィトンチッドの主成分であるテルペン類は、がん細胞には毒性を示すが、健康な細胞には毒性を示さないことが明らかにされました。この論文では、森に含まれる様々なテルペンの抗腫瘍、抗炎症、神経保護の可能性について詳しく述べられています。
2.森林浴はストレスホルモンを減らす効果がある
都会で蓄積されたストレスは、森に来ることで解消されることがあります。
李卿氏の研究チームは、再び13人の女性を募集して、森林旅行実験を繰り返ししました。
追加で尿サンプルを採取したところ、森林浴の後、尿中のアドレナリンやノルアドレナリンなどのストレスホルモンの濃度が低下していることが分かりました。
この実験では、彼女たちの血液中のナチュラルキラー細胞や抗がん性タンパク質のレベルが上昇しており、前回の結果を再確認することができました。
李卿氏は、森林浴の健康効果は運動の効果ではなく、森林環境によるものであることを検証するために、別の対照実験を行いました。 被験者たちは、森への旅行と樹木のない街への旅行に出かけました。 どちらも2泊3日の旅行で、環境以外の生活習慣や行動は同じでした。その結果、都会の旅では森の旅と同じ効果は得られず、α-ピネンやβ-ピネンなどのフィトンチッドは都会の空気には存在しないことが分かりました。
(つづく)
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