子供の素行の悪さが、どうして両親の脳に結びつくのか?(2)

憎しみに満ちた頭と散漫な頭

非生産的で有意義な改善もなく「結婚セラピー 」を9か月間続けた後、チャールズの状態はさらに悪化しました。ある日、チャールズが私との個人セッションを行った後、私は彼の両親をオフィスに呼びつけました。

 「どうすれば事態が好転するか、お二人とも懸命に努力してこられたと思いますが、問題は一向に改善されず、家の中の緊張が子供たち、特にチャールズに悪影響を及ぼしています。穏便に離婚して、あなたたち自身とチャールズに距離を置くか、そうでなければ、あなた方の脳をスキャンして、物理的なパズルのピースが欠けていないかどうか調べさせてください」

私がそのように提案すると、 二人は脳の精密検査を受けることに同意しました。

この夫婦とは9か月の付き合いなので、脳のスキャンフィルムを見たとき、その所見の臨床的意義は、これ以上ないほど明確でした。 実際、もっと早くそうしなかった自分に少し腹が立ちました。 ベッキーさんの脳は帯状回(大脳の内側面において、脳梁の辺縁を前後方向に走る脳回)が過剰に働いているため、焦点を変えることができず、特定の考えやアイデアに頑固に囚われてしまうのです。

対照的に、ボブ氏の脳のパターンは、落ち着いているときには問題なく機能していたのですが、複雑な仕事に集中しようとすると、集中するにつれて活動が高まるはずの脳の前部が、かえって完全に停止してしまったのです。 

つまり、ベッキーさんに集中しようとすればするほど、彼の注意はどこか別の場所に逸れていき、彼はしばしば葛藤を引き起こすことで脳を刺激しようとしたのです。 ボブ氏の症状と検査は、彼が彼の子供たちと同じように、ADHDであることを示していたのです。(ADHDは通常、遺伝的疾患である)

私は今、この夫婦には少なくとも部分的には身体的な問題があり、精神科の治療が効かないのであれば、脳の生理学を活性化させる必要があると判断しました。

 私はベッキーさんにプロザック(成分:フルオキセチン)を飲ませました。プロザックはレクサプロと同様、帯状回の過活動を抑え、注意をあることから別のことへより自然に移行させ、特定の思考や行動に囚われなくなります。

私は通常、これらの薬を、脳のギアをシフトさせるための 「潤滑油 」として使っています。 私は、ボブ氏にはリタリンを飲ませました。リタリンは、ADHDの子供や大人が、目の前の仕事に集中しやすくし、衝動的でなくなるのを助ける興奮剤です。 夫婦間のセラピーに薬を使うことに猛反対する人はたくさんいると思いますが、私はこのケースには必要だったと信じています。

最初の改善と薬の効果は、二人が同じソファに座って隣同士になったとき現れ、2つめのヒントは、ベッキーさんがボブ氏の太ももに手を置いたときでした(非常に楽観的なサインです)。 ベッキーさんは口うるさく「追いかける」ことがなくなり、ボブ氏はより注意深くなり、攻撃的でなくなりました。 

脳が正常に働くようになったことで、結婚セラピーをフル活用して2人の関係を改善できたことをうれしく思っています。ふたりは一緒にいる時間を増やし、お互いの育て方についてより合意し、以前よりもさらに頻繁に性行為を再開しました。 ベッキーさんとボブ氏が良くなるにつれて、チャールズも良くなりました。 

離婚や長期的な不幸に終わる家族の多くが、人の脳の動作モードが、夫婦の親密さを妨げて子供に悪影響を与えているのかも知れませんね。

 

(つづく)