専門家が疑問を解く
走るときに鼻と口、どちらで呼吸しますか? 一部の専門家は、ランニングなどの激しい運動をするときは、鼻で呼吸したほうが運動が楽になるのではないかと主張しています。
英アングリア・ラスキン大学(Anglia Ruskin University)の心肺運動生理学助教授であるゴードン(Dan Gordon)氏と博士候補のフランキー(Chloe French)氏とメルヴィル(Jonathan Melville)氏は、運動中の鼻と口での呼吸がどう違うのかを「The Conversation」のウェブサイトで分析しました。
呼吸は無意識の行為であり、人々は普段どのように呼吸するかを考えることはないと彼らは書いていました。しかし、運動をしていると、ほとんどの人は呼吸の様子を意識していて、時には呼吸する度に気をつけていることもあります。
自転車や散歩などの中低強度の運動に従事すると、多くの人が鼻で息を吸い、口で息を吐き出しています。しかし、運動の強度が高くなるにつれて、口で息を吸ったり吐いたりする傾向が強くなります。
多くの人が、激しい運動に従事する時、口で呼吸するのが一番だと思っています。それは、筋肉のために多くの酸素を吸い込むことができるからです。もちろん口は鼻の穴よりも大きいからです。しかし、実際には、ちょうどこのような見方とは逆の証拠があるのです。激しい運動中には、実は、鼻で呼吸するのが最善の方法かもしれません。
なぜ運動中に鼻で呼吸したほうがいいのですか?
この3人の学者は、異なる強度の運動に従事する際、口で吸い込むよりも鼻で吸い込む酸素が少ないことを示す一連の研究があると指摘しています。これは、鼻で呼吸するとき、体は比較的少ない酸素を使用して、継続的な等量運動に従事できることを意味しています。
これは利点かもしれませんが、特に持久力のある選手にとっては。酸素を自動車が使用する燃料と想像することができます。自動車が単位距離ごとに走行するために必要な燃料が少ないほど、その燃費(fuel economy)が良好になります。同様に、運動時のステップごとに必要な酸素が少ないほど、体に使用されるエネルギーは少なくなります。そうすれば、すぐに疲れを感じずに遠くまで走ることができるということになりますね。
研究によると、吸い込む酸素が少ないのに加えて、運動中に鼻で呼吸する頻度も口より低いことが分かりました。これはあまり論理的ではないようですね。しかし、ここで理解する鍵は、空気が圧力の高い場所から圧力の低い場所に流れることです。鼻から吸い込まれる酸素は口より少ないですが、圧力が高いため、呼吸器系内に空気を早く流入させることができます。その結果、酸素は必要な筋肉に早く伝わり、呼吸するたびに酸素を多く放出できるというのです。
これは、なぜ同じ運動をしているときに、鼻や口で呼吸しても、心拍数に明らかな違いがないのかを説明できます。言い換えれば、運動中に鼻で呼吸するのは、吸入される酸素が少ないにもかかわらず、心臓が心拍数を増やして酸素を筋肉に伝える必要はありません。つまり、心臓は余分な圧力に耐えられないのです。
研究者によると、鼻で呼吸することには、酸素を肺や筋肉に転送しやすくするだけでなく、空気中の病原体(ウイルスなど)が人体にダメージを与えるのを予防できる一酸化窒素を多く発生させるメリットがあるといいます。
血圧を下げ、血液の流れを助けることで、一酸化窒素は酸素を運動中の筋肉に送りやすくできます。
瞬間的な瞬発力が必要な他のスポーツタイプ、例えば重量挙げについては、鼻で呼吸するのが良いという明確な証拠はありません。これらのタイプの運動は、酸素ではなく筋肉に貯蔵された糖(グルコース)など、他の源から吸収されたエネルギーに依存します。しかし、これらの新陳代謝の過程は酸素で回復する必要があります。
この3人の学者は、ランニング中に鼻で呼吸するのはいいことですが、練習が必要だとまとめています。練習なしで早合点すれば、空気飢餓感(air hunger)、つまり呼吸の最後に二酸化炭素の一部が残ることになり、肺の換気のし過ぎや、不快感を招く可能性があるといいます。
彼らは「運動中に鼻で呼吸するのは非常に効果的です。しかし体が傷つかないように、調整する時間があるように練習しなければなりません」と結びました。
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