市民の家の門(ドア)に貼られた「対聯(ついれん)」の赤いインクや墨が湿気で溶けて流れた様子。(SNS投稿動画よりスクリーンショット)

今年もやってきた「回南天」の季節 室内にいても「ずぶ濡れ」になる高湿度=中国 広東

広東省などの中国南部では、今年も「回南天(ホィナンティエン)」の気候に見舞われている。

「回南天」とは、中国南部などで、冬の終わりから春先にかけて現れる「湿度が極めて高い気象現象」を指す。日本の梅雨とは比べ物にならないほど雨が多く、高湿度の日々が続くのだ。

今年もきた忍耐の季節、その名は「回南天」

その「回南天」が、今年も激しい。広東省では湿度が75~100%に達しているというから、ほとんど水に浸かっているようなものだ。

街中から幹線道路まで、至る処で濃霧が発生し、省全体がまるで「巨大な水簾洞」のような状態になっている。水簾洞(すいれんどう)の水簾とは滝のことで、つまり「滝の裏側にある洞窟」ということだ。

今月5日「広東省は今、巨大な水簾洞の状態だ」というトピックが、中国の大手検索サイト百度(バイドゥ) のホットリサーチ入りした。それほど中国南部の「回南天」は、今年も話題になっている。

水簾洞と聞いて思い出すのは『西遊記』のなかの一場面である。花果山の仙石から生まれた孫悟空は、誰も(その他のサルたち)が入る勇気のなかったこの洞穴に飛び込んだ。

そのことをきっかけに、孫悟空は猿の王となったという、中国人なら誰でも知っている一節である。それが今では、別の意味で「水簾洞」という言葉が有名になっているようだ。

人々は、まるで滝の裏側の穴に入ったように、窓の外で降り続く大雨を眺めている。

なかでも、旧正月の飾りである「対聯(ついれん、縁起の良い対句を記したもの)」の赤いインクや墨が溶けて流れ落ちている光景は、何やら気味の悪い「不吉な予兆」であるようにも見えてしまう。

(広東省の市民の家の門に貼られた「対聯(ついれん)」の赤いインクが、あまりの湿気によって溶けてしまった。SNS投稿)

事故多発「視界50メートル」の恐怖

「回南天」とは例年2月~3月、つまり旧正月頃から始まる約1か月の間、とくに広東省や広西省に住む人が頭を悩ませる気象現象だ。

春先とは言え、中国南部は気候が暖かいので、湿度が高ければあらゆるものがカビやすくなる。もちろん洗濯物は、干しても乾かない。食物が腐敗しやすいほか、下水道の汚水があふれるため公衆衛生上からしても感染症発生のリスクが高まる。

また、室内もふくめて、普段濡れない場所が「びしょ濡れ」になるため、地元の人でさえ滑って転倒することもある。

毎年、「回南天」の季節になると、広東省の気象台は「むやみにドアや窓を開けっぱなしにせず、除湿などの湿気対策を行うように。また、路面が滑りやすくなっているので転倒にも気をつけて」と注意喚起を行っている。

また気象関係の統計によると、「回南天」がひどいときは、路上の視界が50メートルまで低下することもあるという。路面が濡れていれば、走行中の車が急ブレーキを踏んでもスリップして非常に停車しにくくなる。そうした特殊な状況では、車の衝突事故やバイクなどの転倒事故も多発する。

 「回南天」の期間、中国南部の住民は、大変な苦労を強いられることになる。

(「回南天」に関するSNS投稿。街全体が「水没」したかのようだ)

(広東省汕頭市のユーザーによるSNS投稿。室内の天井が「水びたし」に)

(「回南天」を実体験中のユーザーによるSNS投稿)

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