中国共産党の汚職摘発などを担う中央規律検査委員会は、農業農村部党組書記兼部長の唐仁健氏(61)が「重大な規律・法律違反の疑い」により調査を受けていると発表した。習政権の3期目に入り、外相や国防相など現職閣僚が相次いで解任されたが、中央委員の失脚は初。
唐氏は昨年、中国共産党党首、習近平の特使としてミクロネシア連邦の新大統領就任式に出席している。大紀元評論家の岳山氏は「習氏の人選ミスの可能性もあるが、皮肉な状況だ」と指摘する。
現職の閣僚が調査対象となるのは異例だが、詳細は明らかにされていない。
唐氏は広西チワン族自治区政府副主席や甘粛省長などを経て、中央財経領導小組弁公室副主任などを歴任し、2020年12月に農業農村部のトップに就任。習近平指導部が米国との長期的な対立を見据えて掲げる「食料安全保障」の確立に向け、食料増産などの旗振り役を務めていた。
しかし、唐氏は2022年末に「農村管理法執行」を2023年1月1日より施行すると発表。この政策により、各地で農村管理担当者が村に乗り込み、横暴な態度で樹木を伐採したり、農家から家畜や物資を奪ったりする事態が相次ぎ、農民たちの反発を招いている。
相次ぐ失脚、解任…中央委員は初
習政権の3期目に入り、外相や国防相など現職閣僚が相次いで解任されたほか、軍部でも大規模な汚職疑惑が取り沙汰され、事実上の更迭人事が相次いでいる。
今年に入ってから、中国農業銀行副行長の楼文龍氏、司法部副部長の劉志強氏、広西チワン族自治区前副主席の秦如培氏など、24人の中央管理幹部の失脚が公式に発表された。
唐氏を除けば、そのうち中央委員や中央候補委員は一人もいない。昨年10月の中国共産党第20回全国代表大会(党大会)以降、失脚が確定した閣僚は、前外交部長の秦剛氏、前国防部長の李尚福氏、ロケット軍前司令官の李玉超氏。
中国共産党の序列において、中央委員は閣僚よりも上位に位置づけられている。唐氏は解任された秦剛氏や李尚福氏と異なり、農相であると同時に中央委員だった。
このため習近平が直接指名したとされる中央委員の失脚は、閣僚の解任よりも重大な意味を持つと言える。独立評論家の蔡慎坤氏は次のように解説する。
「党大会後、新華社は中央委員と中央規律検査委員の選出は習近平氏自らが把握していたと伝えた。すなわち、全ての委員と候補委員は習氏が直接指名したということだ。もしこうした人物が就任から1年もたたずに失脚すれば、習氏が選んだ高官の資質が疑われかねない。忠誠心が絶対的でないか、何か企みがあるのではないか」
唐氏は昨年7月、習近平の特使として、ミクロネシア連邦の新大統領ウェスリー・シミナ氏の就任式に出席していた。大紀元評論家の岳山氏によれば、「そうした習近平に近い人物の突然の失脚は、習氏の判断ミスを意味するのだろうか。いずれにせよ、これは習政権にとって痛烈な皮肉となるだろう」と述べた。
さらに岳山氏は、背景には内部権力闘争の結果である可能性を指摘する。唐氏はこれまで、習近平とは距離があるとされる胡春華・元国務院副総理や経済学者の劉鶴氏の部下だったが、政権の権力基盤強化の一環として狙い撃ちされた可能性があるという。
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