コロナ感染の影響ではない?
パンデミック期に日本国内で増加したがん死亡率に関して、論文著者らはエポックタイムズにコメントを寄せた。
「Cureusでの7名の査読者からの30にも上る建設的なコメントに支えられ、特定の死因ごとにパンデミックがなかった時期の死亡率の増減傾向を少なくとも10年間さかのぼって確認し、多変量解析を用いてパンデミック期の死亡率の乖離の有無を厳密に解析しました」
「その結果、がん全体でも超過死亡が生じていましたが、いくつかの特定のがん種:卵巣がん、白血病、前立腺がん、口腔・咽頭がん、すい臓がん、乳がんにおいて、予測される死亡率を2022年に特に有意に上回っている事実が明らかになりました」
「それはパンデミック期における社会活動の制限によるがん検診や受診の遅れでは説明できないこと、流行株の毒性がもっとも高かった2020年にはがん死亡が増加していなかったことから、コロナ感染の影響でも説明しにくいと考えられました」
「これらのがん種はいずれも細胞にエストロゲン受容体を有するタイプが多く、さらにがん抑制遺伝子BRCA1・BRCA2の不全の際に増えるがん種でもあるという共通した特徴がありました」
なぜ特定のがんが増加?
論文は、考えられるがん増加のメカニズムの1つとして、「エストロゲン受容体アルファ(ERα)」に言及している。エストロゲン受容体は主に「女性ホルモン」として知られるエストロゲンによって活性化される。ERαは生殖器、中枢神経系、骨格筋、心血管系など、体中で広く発現している。
論文著者らは、mRNAワクチンが人体内で大量かつ長期に渡り産生する新型コロナウイルスのスパイクタンパク質と、このERαとの関連性に関する先行研究を取り上げ、特定のがん種で超過死亡が生じた理由を機序(メカニズム)の面から考察している。そのキーポイントは以下の通りだ。
学術誌Science Advancesに掲載された研究では、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質がERαと強く結合することで、ERαの活性が高まることが発見された。ERαの活性が高まるとエストロゲン感受性のあるがん細胞は潜在的なものも含めて増殖する。
また別の研究によると、ERαの活性が高まった際にその細胞核で二本鎖切断や四重鎖構造の過剰蓄積(いずれも発がんの危険性あり)が生じるが、正常時はがん抑制遺伝子であるBRCA1がそれらの修復を担うためにDNAが正常に戻ることが分かっている。
一方、mRNAワクチンによって大量に産生されるスパイクタンパク質が核内に侵入できる性質を持つこと、そしてスパイクタンパク質のS2部位ががん抑制タンパク質であるBRCA1・BRCA2・P53と結合してしまうことで、それらによるDNA修復機能が働かなくなってしまうことも研究で示されている。
つまり、スパイクタンパク質が結合することでERαが活性化し、それに伴い生じる可能性のある異常なDNAを修復するためにBRCA1タンパク質へのニーズが高まる一方で、BRCA1がスパイクタンパク質に捉えられ機能しにくくなるという「複数の問題の同時発生」が発生しているということだ。この「複数の問題の同時発生」が、国民の多くが3回目以降のコロナワクチンを接種した時期に特定のがん種による死亡が超過した要因として考えられることを論文は示している。
コロナワクチンによるその他の影響
さらに論文では、新型コロナワクチンによる炎症、血栓形成、免疫抑制など、がん死亡全般の増加につながりうる機序についても示している。
「がんは多くの場合、さまざまなメカニズムを通じて凝固を活性化させるため、がん患者の主な死因の一つはがん関連血栓症(CAT)であり、最も極端な場合には播種性血管内凝固(DIC)として現れる」と論文は説明した。
「そのため、mRNA脂質ナノ粒子ワクチンによるさらなる血栓形成の傾向が、がん患者にとって非常に危険であると考えるのは理にかなっています」
最近の研究では、スパイクタンパク質の特定のセグメントが非水溶性の繊維状タンパク質であるアミロイドの形成を誘導し、これが血液凝固および線溶性障害において重要な役割を果たすことが示されている。
また、細胞表面に現れるスパイクタンパク質に抗体が結合することで、自己免疫炎症反応を引き起こすことも分かっている。
さらに、2,3回目以降の接種後にコロナワクチンが体内で産生するスパイクタンパク質抗原への長期間の大量ばく露が、IgG1抗体やIgG3抗体からIgG4抗体への変換(クラススイッチ)を生じ、免疫寛容(免疫系が異物を受け入れてしまうこと)をもたらすことが分かっているが、IgG4抗体についてのレビューでは、がん細胞の増殖を引き起こす可能性があることが議論されている。
結論と研究の限界
論文の結論は以下の通りだ。
「日本の人口の3分の2以上が新型コロナのmRNA脂質ナノ粒子ワクチンの3回目以降の接種を受けた後の2022年に、全てのがん及び特定の種類のがん(卵巣がん、白血病、前立腺がん、口唇/口腔/咽頭がん、すい臓癌、乳癌)の年齢調整死亡率の統計的に有意な超過が確認された」
「これらのエストロゲン受容体α感受性がん死亡率の明らかな増加は、コロナ感染やロックダウンによるがん治療の減少ではなく、mRNA脂質ナノ粒子ワクチン接種の複数の作用機序によるものと考えられる。この点についてはさらなる研究が必要だ」
ただし、この研究には限界がある。同研究は公式の情報源からの記述統計を用いて行われており、臨床的な検証はなされていない。
「今後、ワクチン接種回数別に見た分析疫学的研究が不可欠です」と論文著者らはエポックタイムズ に語った。「また、ワクチン接種後にがん発症や進行した方に生じている病態を明らかにするため、病理組織におけるワクチンスパイクタンパク質の存在、ゲノム医学的、免疫学的な検索を含む徹底的な腫瘍学・臨床医学的研究が早急に望まれます」と付け加えた。
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