「ルソン経済回廊」は、中国の一帯一路プロジェクトに対抗するための、インド太平洋地域における「グローバルインフラと投資パートナーシップ」の最初の取り組みだ . 写真はフィリピンのフェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領(Photo by Jes Aznar/Getty Images)

米国、日本、フィリピンがルソン経済回廊を設立 中国の一帯一路に対抗

フィリピンが「一帯一路」イニシアティブから撤退して数か月後、アメリカ、日本、フィリピンのリーダーたちは会議を開催し、「ルソン経済回廊」プロジェクトの開始を宣言した。

これは、中国の一帯一路プロジェクトに対抗するための、インド太平洋地域における「グローバルインフラと投資パートナーシップ」の最初の取り組みだ。

三国は、インド太平洋地域での「PGIルソン経済回廊」プロジェクトを発表し、フィリピンのルソン島南西部のスービック湾、クラーク、マニラ、バタンガスを結ぶ交通網の強化と、インフラプロジェクトへの投資拡大を目指す。プロジェクトの焦点は、鉄道、港湾、クリーンエネルギー、半導体供給網、農業協力など多岐にわたる。

「PGI」とは、「グローバルインフラと投資パートナーシップ」(Partnership for Global Infrastructure and Investment : PGⅡ)の略称で、アメリカとG7が2021年に立ち上げた投資計画である。これは、中国の「一帯一路」に対抗する西側諸国の戦略の一部である。

ホワイトハウスが発表したところによると、アメリカの貿易開発庁は、公共および民間セクターから合計5億ドル(約773億円)以上を集め、フィリピンにおける高品質なインフラ整備を目指している。

加えて、22社のアメリカ企業と団体がフィリピンに10億ドル(約1546億円)を投資し、イノベーションを促進する経済活動、エネルギーの転換、産業のサプライチェーン強化に関するプロジェクトを支援することになる。

さらに、アメリカと日本はマニラで5G技術のオープンRANの実証実験を行い、800万ドル(約12億3737万円)を投じる予定だ。また、アジアオープンRANアカデミーを設立し、フィリピンにおける安全かつ信頼性の高いICTシステム(情報通信技術)の構築を目指している。

これまでのところ、アメリカと日本はこれらのプロジェクトに合わせて900万ドル(約13億8600万円)以上を投資してきた。今後は、フィリピンの学生がアメリカや日本のトップ大学で高度なトレーニングを受けることにより、三国間での半導体サプライチェーンの強化を図る人材育成プロジェクトを進める予定だ。

この取り組みは、技術サプライチェーンの中国依存を減らすことを目的とした三国の共同戦略の一部として認識されており、その将来には楽観的な見方がされている。

セントトーマス大学の国際研究教授、葉耀元氏は、「アメリカがインド太平洋戦略地域への大規模投資を進めており、特にフィリピンでの米日共同投資は、高度な科学技術産業の生産拠点を中国からフィリピンへと段階的に移す上で大きな後押しとなっている。

この共同プロジェクトは、他国がアメリカとの協力による成果を観察し、学ぶための一定の基盤を提供しており、東南アジアの他国にとっても模範となる効果が期待できる」と述べている

またシドニー工科大学の副教授、馮崇義氏は、「ルソン経済回廊は模範的な存在だ。彼らは技術と資金の両面で能力を持っている。かつて西側諸国は、技術と資本を中国市場との取引に使い、結果的に中国共産党政権の成長を助けてしまった。しかし現在、彼らはその誤りに気づき、中国を排除する方向で、これらの国々に直接技術と資金を提供しようとしている」と指摘している。

近年、フィリピンと中国との間で緊張が高まっている。中国共産党は「一帯一路」イニシアティブのもとでフィリピンへの240億ドル(約3兆6960億円)規模のインフラ投資を約束したが、まだ具体的なプロジェクトは実施されていない。昨年の後半には、フィリピンは中国との3件の鉄道プロジェクトに関する資金提供の交渉を中止した。

アメリカの経済学者、デイビー・J・ウォン氏は、「地政学的な緊張が高まる中で、フィリピンは南シナ海での戦争リスクや国防の安全性に関する懸念を理由に、領土問題を持たないアメリカとの経済的な連携を選ぶ傾向がある。経済規模を考慮すれば、日本とアメリカの経済力を合わせると、中国の貿易規模をはるかに超えることになり、これは彼らの主要な考慮事項だ」と指摘している。

シドニー工科大学の副教授、馮崇義氏は、「中国の「一帯一路」イニシアティブは、既に失敗したと言えるでしょう。最初は過剰な生産能力の問題を解決するためにスタートしましたが、その後、政治的、戦略的な意味合いも持つようになりました。とはいえ、90%以上のプロジェクトが収益を上げていない上に、中国の財政状況も厳しく、プロジェクトの継続が困難になっている。工事が止まっている場所も多い。このような状況で、アメリカと日本が市場に参入することは、フィリピンにとって大きなチャンスだ」と述べている。

ルソン経済回廊が成功すれば、それが「一帯一路」の代替となり得ると、専門家たちは考えている。

フィリピンとアメリカは5月にインド太平洋エリアで最大規模のビジネスフォーラムを共催し、その開催期間中には三国間でのイベントも行い、「ルソン経済回廊」に対する投資促進を図る計画だ。

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