帝国データバンクは、消費税や固定資産税などの各種「税金(公租・租税)」、厚生年金保険や健康保険などの「社会保険料(公課)」について納付ができない、または滞納状態が続いたことで自社の資産等を差し押さえられ経営に行き詰まった企業の倒産(公租公課滞納倒産)について調査・分析を行った。
<調査結果(要旨)>
社会保険料・税金などの「公租公課滞納」倒産が急増 2023年度は138件、過去最多に
集計期間:2024年3月31日まで
集計対象:負債1000万円以上法的整理による倒産
調査機関:株式会社帝国データバンク
[注] 「公租公課滞納」倒産 [定義]
消費税や固定資産税などの各種「税金(公租・租税)」、厚生年金保険や健康保険などの「社会保険料(公課)」について納付ができない、または滞納状態が続いたことで自社の資産等を差し押さえられ経営に行き詰まった企業の倒産
社会保険料・税金などの「公租公課滞納」倒産が急増 2023年度は138件、過去最多に
消費税や固定資産税、厚生年金保険などの「公租公課」を納付できない、または滞納による差し押さえで経営に行き詰まった「公租公課滞納」倒産は、2023年度に138件判明した。月次ベースでは、2024年1月(14件)以降、2月(16件)、3月(20件)と、過去最多を更新し続けている。
公租公課のうち、企業にとって特に負担の重い社会保険料は、コロナ禍に最長3年にわたる納付猶予措置が設けられ、企業の資金繰りを支えてきた。しかし、ポストコロナに向けて企業活動が正常化するなかで特例措置も順次縮小。業績不振のなかで消費税と社会保険料の支払いに窮した企業や、猶予期間中に業績を立て直すことができなかった企業の倒産増加が目立っている。
社会保険料や税金など、「公租公課」の滞納が要因となった企業の倒産が増加している。多額に上る公租公課の滞納や延滞金の未納により、自社の預金口座や土地などの資産を差し押さえられ、経営に行き詰まった「公租公課滞納」倒産は、2020~2023年度の4年間で334件判明した。このうち、2023年度は138件となり、全体の41.3%を占めた。2022年度の97件から1.4倍に増加したほか、支払いが猶予されていたコロナ禍の2020年度(46件)からは3倍に増えた。
2020~23年度に発生した334件を業種別にみると、最も多いのは「サービス業」の86件で、ソフトウェア開発などの業種で多く発生した。トラック運送などの「運輸・通信業」(64件)や「建設業」(55件)、「製造業」(48件)などが続いた。
態様別では、ほとんどのケースで破産となり「清算型」の倒産が多かった。累計334件のうち、清算型が314件・94.0%を占め、再生型は民事再生法を中心に20件にとどまった。
日本年金機構によると、厚生年金保険を含む社会保険料を滞納している事業所は、2022年度末時点で14万811事業所に上り、適用事業所全体に占める割合は5.2%を占めた。前年度に比べて滞納事業所数は減少したものの、依然として多くの企業が納付に苦慮する状態が続いている。
社会保険料や各種税金の納付は、社会保障制度を維持するために企業が公平に負う義務であり、差し押さえ等で事業継続に行き詰まる企業の増加を年金事務所等の責任にすることはできない。一方で、コロナ禍での特例措置や支援策の縮小、物価高などの影響も重なり、社会保険料の支払い催促に対して弁済可能な資金を有する中小企業は決して多くない。社保や税金滞納分の支払い見込みが立たず、事業継続を断念するケースは今後さらに増えていくことが予想される。
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