2023年10月28日、オーストラリア・メルボルンのチャイナタウン入り口。(Susan Mortimer/大紀元)

オーストラリアに存在する3種類の中国共産党スパイ

解説

中国の元工作員が、中国共産党(中共)の約1200人のスパイがオーストラリアで活動していると暴露した。これは現地の移民と関わった経験のある人にとっては、特に衝撃的なことではなく、また意外なことでもない。

キャンベラで開催された「オーストラリア防衛会議」で「エリック」と名乗る元中国共産党スパイが語ったところによると、スパイ活動に協力する人々にはいくつかの種類がある。

第一種、中国共産党役人

第一のグループは、中共当局の利益を明確に追求する様々な外交官を含む中共役員である。

今週、彼らの行動の一端が明らかになった。ニューサウスウェールズ州の中国領事が、台湾の新総統、頼清徳氏の就任式を記念する行事に出席した国会議員11人に激しく非難する電子メールを送った。

この書簡が暴露されたとき、中共政府関係者は、まるでいじめのような文通が外交として容認されているかのように怒った。

中共の外交官には、オーストラリアの州議員や連邦議員の行事への出席を禁止する権利はない。

少なくとも、オーストラリアの問題に対するこのレベルの干渉は目に見えて明らかだ。。

第二種 プロの中国共産党代理人

さらに問題なのは、公然と活動する領事官やその他の工作員によるオーストラリア内政への持続的な干渉だ。

これらの活動には、大学やその他の高等教育機関での中国人留学生の常時監視が含まれている。

このような活動はオーストラリアに限らず、世界中で行われている。

実際、先週にはドイツから、ヨーロッパの大学で中国人学生が監視されているという報告があった。

イギリスでは、議員のスタッフ数人がスパイ行為に関連する罪で告発されている。

監視活動だけでなく、中共領事館職員が学生をデモに連れて行ったり、抗議活動の組織を手伝ったりしている。

オーストラリアの留学生の間では、自分たちの言動が絶えず監視されているという認識が広がっている。

元スパイの「エリック」によると、オーストラリアには約200人のプロの工作員がいるとされている。その中には中共政府や地方政府の従業員も含まれている。

これらの人はビジネス界の人間を装うなど、さまざまな偽装をして活動している。

第三種、ディアスポラコミュニティ内のスパイ活動

第三のレベルの監視は、オーストラリアに住む親中派住民、特に中国系移民である。中国系コミュニティの多い選挙区を代表する国会議員として、私は地元で中国共産党の工作員に関するクレームが頻繁に出されていることを知っていた。

最も明白な例は、昨年、国会議員に違法に影響を与えようとした海外在住の外国人が有罪判決を受けたことだ。

これらの活動は、中共の統一戦線工作部とその国内の表向きの組織の活動が何年も前から続いている。

クライブ・ハミルトン氏とマレイケ・オールバーグ氏の二人の学者は、著書『サイレント・インベージョン ~オーストラリアにおける中国の影響~(静かなる侵略、英語: Silent Invasion: China’s influence in Australia)』と『ヒドゥン・ハンド ~中国共産党がどのように世界の形を変えているか暴く~』で、中共の影響力と監視網を明らかにした。

習近平は統一戦線を中国共産党政府の重要な機関と位置付けている。

スパイはもっといるかもしれない

オーストラリアにおける中国系コミュニティの規模と、相当数の中国人を抱える選挙区の数を考えると、中共スパイや支援者がたったの1200人ということには驚かされる。

今週、「エリック」と名乗る人物からの主張があったとはいえ、この問題はオーストラリアの保安情報局(ASIO)の長官が何度も取り上げてきた事柄だ。

最近の年次報告では、ASIOのトップ、マイク・バージェス氏が、国内テロの脅威が同機関の最大の懸念事項であると指摘した。

これはオーストラリアでの外国によるスパイ行為の重大性を軽視しているわけではない。現在の状況、特に中東での出来事において、テロ事件が発生する可能性が高まっているという評価に過ぎまない。

過去数年間、ASIOは外国による監視を懸念事項のトップに位置付けてきた。

治安機関のこれら 損害は、今後数年間にわたって続くだろう。どちらもすぐになくなることはない。

直面すべき継続的な脅威

エリック氏の証言は、私たちが抱える脅威を改めて浮き彫りにしている。

中国(共産党)がオーストラリアを含む西洋諸国に対して強化しているサイバー戦争の影響は深刻で、オーストラリア人の監視問題も依然として解決すべき重要な課題だ。

自国内に外国のスパイが潜んでいる事実を知った多くのオーストラリア人は怒りを感じるだろうが、それは向き合わなければならない現実だ。

否認の時代はとうに過ぎ去り、オーストラリアは中国共産党による西側諸国に対する多面的な戦争による現実的、継続的な脅威に直面している。

外国の工作活動に気づくことが問題解決への第一歩である。そして、セキュリティ機関が彼らの活動を明らかにし、それに対抗するための十分な資源を持つことが次の重要なステップである。

ASIOとオーストラリアの秘密情報局(ASIS)のトップを国家安全保障委員会の正式メンバーに復帰させることは、アルバニーズ政権が緊急に実施すべきことである。

オーストラリアの国家安全保障に関する議論へのASIOとASISの定期的な参加は不可欠である。わが国の安全保障が定期的に議論される場から彼らを隔離し続けることは、わが国の自由と民主主義をないがしろにするものだ。

 

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