小さな生活習慣の変更が健康に大きく寄与することがあります。ヨーロッパ心臓病学会の会議で最近発表されたメタ分析によると、階段を使う習慣がある人は、死亡リスクを約25%低減できるとされています。研究結果を公表するにあたり、研究者たちはエレベーターを使わずに階段を選ぶことを推奨しました。
イーストアングリア大学とノーフォーク、ノリッジ大学病院財団信託のソフィー・パドック博士はこのように述べています。「階段かエレベーターか選べる時は、心臓の健康のために階段を選んでください。短い時間の運動でも健康には良い効果があり、日常生活に階段を使うことは簡単に取り入れられます」
心臓病は、アメリカのほとんどの民族の最も多い死因となっています。しかし、メタ分析の著者たちは、運動などの生活習慣によって心臓病は大部分が予防可能であると指摘しています。にもかかわらず、世界の成人の4分の1以上は推奨される習慣の身体活動目標を達成していません。
階段の上り下りは誰にでもできる運動です。そこで研究者たちは、階段の上り下りが心血管疾患のリスクや早死を減らすかどうかを明らかにするために、メタ分析を行いました。この調査には、35歳から84歳までの48万0479人が参加しました。そのうち女性が半数以上を占め、参加者の中には健康な人もいれば、心筋梗塞や末梢動脈疾患の既往歴がある人もいました。
階段を上る場合と上らない場合を比較すると、階段を上ることにより、あらゆる原因による死亡の可能性が 24 パーセント減少しました。また、心筋梗塞、脳卒中、心不全を含む心血管疾患のリスクを減らすことにも関連しており、これらの病気による死亡リスクは39%低下していました。
パドック博士は「これらの結果を踏まえて、日々の生活の中で階段を使うことを人々に推奨します。研究によれば、階段を多く使うほど、その恩恵は大きいとしていますが、これはさらなる確認が必要です。職場でも自宅でも、あるいは他のどこかでも、階段を選んでください」と述べています。
代謝症候群予防のために階段登り
過去の研究によれば、階段昇降には代謝症候群のリスクを下げる健康効果があるとされています。代謝症候群とは、高血圧、HDL(善玉)コレステロールの低下、トリグリセライドの上昇、空腹時血糖値の上昇など、複数の症状が一緒に現れる状態を指します。
2021年にBMC Public Healthに掲載された研究では、日常生活の中で短時間の活動を積み重ねる身体活動でも健康に良い影響を与えるとされています。このことは、最近のメタ分析の結果と合致しています。これまで、運動が健康に良い変化をもたらすためには、少なくとも10分間は続ける必要があると考えられていました。
研究著者は、階段昇降は自身の体重を重力に逆らって持ち上げる動作を伴うため、行う時間と強度によっては、相応のエネルギーを消費すると述べています。782名の参加者のデータを分析した結果、日常的に階段を使うと報告した人は、そうでない人に比べて体重が軽く、コレステロール値が正常で、血圧も低く、代謝症候群の発症率も低かったことがわかりました。
研究者たちは、階段昇降が代謝症候群の予防に役立つと結論づけています。ただし、その効果を得るためには、一日に複数回の階段昇降を行うことが必要だと指摘しています。
階段を登ることで気分向上の可能性
2019年に「心理学の最前線」誌に掲載された研究によると、階段を短時間登る運動は気分と認知機能の向上に寄与することが示されています。19.4歳の中央値を持つ32人の大学院生を対象に行われた調査では、男性は難易度の高いタスクにおける認知能力が向上しました。一方で、女性にはそのような効果は見られませんでした。しかし、男女共に「疲労感や緊張感が軽減し、エネルギーが増したと感じた」と報告されています。
続く
(翻訳編集:清川茜)
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