2015年8月4日、ワシントンDCで行われた上院の公聴会で証言するニコラス・バーンズ元国務次官 (Alex Wong/Getty Images)

米は対応を変えて中国に接するべき=駐中米国大使

米国の駐中国大使ニコラス・バーンズ氏は6月6日、シンクタンク「アジア協会」でのスピーチにおいて、今後20年以上に渡って、米国と中国は戦略的競争を続けるだろうと述べた。

この競争関係の変化は、中共(中国共産党)が国内での抑圧を強化し、国際舞台でもより強硬な態度を取るようになったことが背景にあり、それに応じて米国もその対応を見直していると語り、「私たち二国間の関係は、長期的な戦略的競争に入っている。私たちは根本的に異なる価値観を持つ相手と競争しており、自由に対する考え方においても我々は全く異なる立場にある」と語った。

バーンズ大使は、クリントン政権時代に中国が世界貿易機関(WTO)に参加し、国際社会の一員となった後、中国の行動パターンに、変化が見られたと指摘した。

現在、中共は台湾の周辺海域でしばしば軍事演習を実施し、東シナ海や南シナ海での紛争を継続しており、さらに中印国境には最新型の戦闘機を配置している。バーンズ大使は、中共がインド太平洋地域での支配を目論んでいることははっきりしているという。

一方で、中国のプロパガンダは、米国をアジアでの外国勢力の覇権として批判している。

バーンズ大使は「実際のところ、全く逆で、歴史的、地理的、経済的、政治的にも、私たちはインド太平洋地域の、それぞれが不可欠なメンバーだ」と強調した。

また大使は、「私たちはすでに中国(中共政府)に対し、ヨーロッパの未来は、アメリカにとって核心的な利益であることを伝えている」と述べ、中共が、ロシアの防衛産業を支援していることが、米中関係に長期的な悪影響を及ぼしていると指摘した。

最近の北大西洋条約機構(NATO)外相会議において、米国のブリンケン国務長官は、ロシアが輸入する工作機械の70%とマイクロエレクトロニクスの90%が中国からのものだと指摘した。こうした中共の支援がロシアの武器生産の加速と、ウクライナとの戦争を助長させ、ヨーロッパの安全を深刻に脅かしている。

バーンズ氏は「我々はまだ政府の方針を根本から変える時期ではないと見ている。政府の方針を直接的に変更するのは困難だが、その環境を変えることはできる。これは、中国を取り巻く新しい環境を構築するためだ」と述べた。

バイデン大統領の就任以来、アメリカは英国、オーストラリアとの同盟(AUKUS)を形成し、アメリカ、日本、インド、オーストラリアの4か国による安全保障対話(QUAD)を強化し、米国、日本、韓国の関係をより堅固にした。加えて、インドやヨーロッパと連携し、「インド-中東-ヨーロッパ経済回廊」の推進に努め、西側諸国と協力してリスクを減らすための戦略的な措置を取っている。

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