古代の赤色は、昨今の目障りな赤とは異なります。古代の绛、赤、朱、丹、紅、绯、茜という色は、すべて赤ではありますが、厳密には異なる色です。伝統的な「赤紅」は、少し暗めで柔らかで、人の目に優しいものでした。写真は伝統的な赤で彩られた紫禁城(GuoZhongHua/shutterstock)

伝統色の奥妙(一)

民族や国家には、独自の伝統色があります。それは、この世界を彩り豊かなものにしてくれていますが、そうした見た目の印象に留まりません。伝統色には、民族や国家それぞれに受け継がれてきた意味合いがあるのです。現代社会では各地域の伝統色は多種多様で、似通ったものがあったとしても違いはあり、全く異なる場合さえあります。ここで全ての伝統色について網羅的に述べることは難しいのですが、誰もが身近に感じるいくつかの色について、読者の皆さんと一緒に奥妙を探ってみたいと思います。

現代の中国人の多くは、伝統色と言えば赤を思い出すでしょう。赤は中国人にとって、めでたい色なのです。結婚すると家の中に赤い飾り物をたくさん飾り、新郎新婦は赤い婚礼衣装を着ます。正月には誰もが赤い紙で対聯を書きます。様々な祝典でもよく赤を基調とします。赤色政権(中国共産党政権はよく赤色政権と呼ばれます)が政治目的で宣伝している「赤い中国」はさて置き、多くの人にとって、赤はとても良い意味を持っています。「紅紅火火」という中国語は、直訳すると「燃え盛る赤い火のように」という意味あいで、最上の吉の象徴です。

しかし、中国古代の文化を伝統的な三つの宗教の観点で見てみると、儒教は中正かつ穏やかであり、道教は心静かで何事も自然に委ね、仏教は四大みな空であり、いずれも現代の極端に刺激的な赤としっくりこないのです。中国では古代以来、各時代の色彩の基調は、例えば厳粛であったり、穏やかであったり、古朴であったり、高雅であったり…、様々な基調がありますが、すべて刺激的なものではありません。中国民族の性格は控えめであり、眩しい赤は全くそぐわないのです。

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