毎年の猛暑日になると、外はサウナのように暑苦しいですが、エアコンが効いた室内はくしゃみが出るほど冷やしています。エアコンのない夏は想像できないほど、現代社会にとってエアコンは必要不可欠です。
昔、エアコンも冷蔵庫も扇風機もなかった時代に、人々は暑い夏をどのようにしのいでいたのか、現代人は一度考えてみると良いでしょう。
エアコンがなかった5千年の間、先人たちは夏を快適に過ごすための知恵を身につけていました。以下に9つの昔ながらの暑さ対策をご紹介します。
自然環境
北宋の時代の著書「夏日」に「木陰の下が涼し、水際の風が冷たし」という記述があるように、水辺は常に涼しいです。そのため、夏になると、皇室や貴族は山紫水明な避暑地に移動する慣例がありました。例えば、中国の清の時代には、紫禁城の外側に西苑、南苑、暢春園、円明園など避暑地が用意されていました。最も有名な避暑地は承徳避暑山荘です。
庶民も涼しさを求め、森の中や木陰で涼んだり、舟遊びや釣りを楽しんだり、風景を眺めながら詩を吟じたりしました。
2. 寝具
昔の時代には石で寝床を作ることがありました。また、磁器製の枕も使われ、釉薬を施した枕で寝ると涼しくて気持ちが良いとされていました。
より快適さを求める場合、寝床に竹敷物を使いました。中国では唐の時代に、皇室や貴族は象牙で作られた敷物を使用していたと言われています。庶民は安価で丈夫な茅葺の敷物を使いました。現代でも、夏になると竹や茅葺の敷物を使えば、エアコンを付けなくても涼しくて安眠できます。
建物の工夫
中国の首都北京には、四方を建物で囲み、中央を庭園とする「四合院」という伝統的な家屋があります。北を背にして南を向くことで、西からの強い日差しを防ぎます。さらに屋根や壁は厚く作られ、冬には防寒、夏には遮熱の効果があります。
明の時代には、北京宮殿の屋根の長さと角度が工夫されました。「夏至」からは日差しを遮断し、「冬至」からは日差しをたくさん取り入れる仕組みで、冬は暖かく、夏は涼しい室内環境が作り出されます。
避暑のために設計された建物もあります。例えば、漢の時代には「清涼宮殿」、清の時代には「水木明瑟宮殿」などが作られました。室内に風を送るために、「水激扇車」という水力の風車が使われました。流れ水の力で風車の羽を動かし、風を作る仕組みです。また、水を屋根の上に引き上げ、屋根周辺から自然に滴らせることで、まるで雨が降ったように水のカーテンを作り、冷却効果を高めました。
地下室の利用
「地下室」を作る方法もありました。地下は外部の影響を受けにくく、温度が比較的安定しています。冬は暖かく、夏は涼しいです。
秦の時代には「洞窟室」が流行していました。これは洞窟のような「地下室」です。明と清の時代には「冷房井戸」が使われていました。室内に深い井戸を掘り、井戸口に穴を開けた蓋をして、夏になると地下から冷えた空気が上がってくる仕組みです。この井戸は冷房の役割だけでなく、氷や食品を冷蔵するための冷蔵庫としても使われました。
氷の利用
昔は氷を作ることはできませんでしたが、冬にできた氷を保存して夏に使うことができました。周の時代の史書『周礼』には、氷の保管を管理する「凌人」という役職が記されています。明や清の時代には、氷の使用が広く普及しており、史書『大清会典』には王宮紫禁城周囲に18か所の「氷窖」(氷を保管する場所)があったと記録されています。
また、中国の歴史では早くから原始的な冷蔵庫も存在しました。戦国時代に出土したブロンズ製氷容器「氷鑑」から、様々な氷容器が作られ、食物の冷蔵や室温を下げるなどの用途に使われました。
冷たい飲み物
氷があれば、冷たい飲み物やデザートも簡単に作れます。例えば、氷甘酒、酸梅湯(梅ジュース)、銀耳蓮子湯(白きくらげと蓮の実のスープ)、杏仁豆腐などがあります。もちろん、アイスクリームも作れます。
しかし、先人が最も推奨した暑さ対策は、体内環境を整えることです。例えば、スイカ、ゴーヤ、キュウリ、緑豆などを食べれば、熱やのぼせを取ることができます。
漢方医の知恵
明の時代の名医李時珍は著書『本草綱目』の「夏冰」の章で、「膻中(だんちゅう)というツボに氷を一つ置くと、熱やアルコール中毒を解消する効果がある」と記しています。膻中のツボは胸の真ん中にあります。熱中症対策として試してみてください。
中国では端午節(旧暦5月5日)の前に、宮廷医師が熱中症対策として漢方を処方し、それを食事に加えて未然に防ぐ慣例があります。また、暑さ対策のために漢方錠剤を作り、携帯する慣例もあります。特に蚊に効く虫よけになる漢方錠剤もありましたが、その作り方は失われ、今に伝わっていません。
温かい飲み物
漢方医書『本草綱目』によれば、「お茶は苦く、甘く、微寒、無毒」とされ、「痰熱を取り除き、溜まったガスを消化する」効果があります。また、医書『荊楚歳時記』には「暑い日に温かいタンメン、これは悪を消滅する」と記されています。
中国の年寄りは季節を問わずお湯を飲む習慣があります。これには理由があります。夏に熱いお茶を飲むと、体温を下げ、解毒効果があります。熱い食べ物を食べると、大量の汗をかき、体内に溜まった熱や湿気を排出できます。その後、熱々のお風呂に入ることで、すっきりします。
心が穏やかになれば、自然と涼しく感じられる
唐の時代の詩人白居易は、自分の作品の中で次のように述べています。
「人は暑さ対策を走り回るが、禅師は部屋から出ない。部屋が涼しいのではなく、禅の心は穏やかだからである」つまり、心が穏やかであれば、自然と涼しく感じられるのです。
気持ちのコントロールは本当に体に影響を与えます。漢方では、悩みや焦りが原因で体内に溜まった悪い熱を「上火」や「肝火」と呼びますが、西洋医学でもこれを解釈できます。怒り、苛立ち、傲慢、軽蔑、嫉妬などのマイナス感情は体温を上げ、体に異常をもたらします。心の穏やかさを保てば、体温が下がり、涼しく感じるはずです。
清の時代の康熙皇帝は非常に修養を積んだ方で、暑い夏でも扇子を使わず、帽子を取らず、窓を開けずに過ごしていました。心が穏やかで清らかであったため、暑く感じませんでした。さらに、夏に冷たい環境に長居することを禁じました。冷たい環境は体内の熱を閉じ込め、秋になると胃腸不調になりやすいと警告しました。
宋の時代の詩人温革の著書『瑣碎録』には「避暑には妙法があり、泉や石にあるのではなく、心の底が静まれば涼しみにたどり着く」と記されています。
(翻訳編集 正道 勇)
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