アメリカの大学では、この時期に卒業式が行われます。卒業式では、ゲストがスピーチを行い、自身の経験や知識を基に、新たな門出を迎える卒業生たちに対して貴重な教訓を伝えます。
毎年、多くの著名な作家や企業のリーダー、政府高官、エンターテインメント業界の著名人が卒業式の壇上に立ちます。彼らのスピーチは、メディアの注目を集め、聴衆の心に深く刻まれるような印象的なものが多いのです。
卒業式のスピーチは、すぐに忘れられてしまうものから、記念すべきスピーチまで多岐にわたります。私たちの多くは、高校や大学の卒業式で壇上から頂いた言葉を、ずっと前に忘れてしまっています。
一方で、卒業式のスピーチが卒業生やその家族、友人たちに深く響くスピーチもあります。しかし、その影響はスピーチが行われた講堂や体育館の外にはあまり広がらず、ほとんど影響を与えません。
多くの場合、大学は卒業式のスピーチを行うために有名な公人を選びます。これにより、広く一般の関心を引くことがあります。例えば、2024年6月9日には、伝説的なテニス選手であるロジャー・フェデラー氏はダートマス大学の卒業生に向けてスピーチを行いました。フェデラー氏はテニスコートでの例を用いてメッセージを伝えましたが、最も印象的だったのは彼が伝えた喜びの感覚でした。
明らかにスピーカープラットフォームに立つことを喜んでいたフェデラー氏は、ユーモアとウィットを交えて話し、学生とその学校を称賛し、スピーチの一部として短いテニスレッスンまで提供しました。何よりも彼の将来への熱意が最高でした。「どのゲームを選んだとしても、全力を尽くしてください。ショットを打ってください。自由にプレーし、すべてを試してみてください」「そして何よりも、お互い親切にしあい、楽しんでください」と締めくくりました。
そして、卒業生の心に触れるだけでなく、インスピレーションや指針を示し、何百万人もの人を魅了する卒業スピーチも稀にあります。
ハーバード大学のハリー・ポッター
2008年6月5日、J.K.ローリング氏は、ハーバード大学の卒業生に向けてスピーチを行いました。ハリー・ポッターシリーズの著者として世界的に有名なローリング氏のスピーチは、メディアからの注目を集めました。ユーモアと厳粛さを兼ね備えたメッセージは何百万人のファンや、大勢の人の共感を呼びました。
スピーチの冒頭で、ローリング氏は「今日は皆さんに何を話そうかと頭を悩ませてきました」と述べました。そして「失敗の利点と想像力の力」という2つの主要なテーマに絞って話をしました。前者については、大学を卒業した後の自分の人生を振り返りながら、「卒業からわずか7年後、私は壮大な失敗していました。非常に短命だった結婚は破綻し、私は無職で、シングルマザーとなり、ホームレスではないにしても、現代のイギリスでは、生活が可能なだけの貧しい状態でした」と言いました。
奇妙なことに、その一連の失敗によって、ローリング氏は子供の頃からの夢を追いかけて、小説を書く自由を得ました。
「私の最大の恐怖は現実になりましたが、私はまだ生きていて、愛する娘がいて、古いタイプライターと大きなアイデアがありました。そして、どん底が私が人生を立て直すための堅固な基盤となりました」失敗して強くなり、自分が自分を信じることのできる知識は、彼女が生き残り前進する能力に自信を持たせました。
ローリング氏の2つ目のテーマ「想像力の力」の意味は、ローリング氏がもっている何百万人もの人に愛される物語を語る能力のことでした。彼女は「想像力はおそらく最も変革的で啓示的な能力であり、私たちが共有したことのない経験を持つ人々に共感する力を与えてくれます」と述べました。ローリング氏は、ロンドンのアムネスティ・インターナショナルで働いていた時に、「他の国での抑圧や拷問の恐ろしい話に直面し、自分の想像力と共感の力が一体となったことに気付きました」と述べました。
このスピーチは、その後、何百万ものオンライン視聴者によって視聴されています。
(編集翻訳 清川茜)
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