中国 学位を重ねても出口が見えない現実

中国 博士なのにまた修士 就職難で学び直し制度に疑問

2026/04/24 更新: 2026/04/24

中国で今、「博士なのに、さらに修士を取る」という奇妙な動きが広がっている。背景にあるのは、深刻な就職難だ。

複数の大学が新たに導入したのは、博士課程に在籍しながら別分野の修士号も同時に取得できる制度だ。表向きは「異分野の知識を持つ人材を育てる」としているが、実際には「卒業を先送りする仕組みではないか」との見方が広がっている。

例えば、西北工業大学や北京理工大学などがこの制度を開始。山東大学でも、博士課程の学生から選抜し、別の専門分野の修士を追加で取得させる試みが始まった。

制度の根拠となるのは、2025年に中国政府が打ち出した「博士と修士を組み合わせた学位制度」の試行方針だ。政府は「高度な複合型人材の育成」を掲げるが、現場の受け止め方は大きく異なる。

ネット上では、「一生学生でいろということか」「博士の後に修士、その後また博士と無限ループ」といった皮肉が相次いだ。中には「働く期間より、学んでいる期間の方が長くなる」と冷ややかな声もある。

実際、学生側の負担は軽くない。ある博士課程の学生は「もともと研究のプレッシャーが大きいのに、さらに修士を追加すれば卒業は確実に遅れる」と話す。長期化する在学期間は、生活費や将来設計にも影響を及ぼす。

中国ではここ数年、大学卒業者の数が急増する一方、企業の採用は伸び悩んでいる。若者の失業問題は深刻で、政府は大学院進学や公務員試験への誘導などで「就職待ち」の人口を吸収してきた。

今回の制度も、その延長線上にある。表向きは教育改革だが、実態は「就職できない若者を学校に留める」対策ではないかという疑問が消えていない。

学位を増やせば未来が開けるのか。それとも、出口のない競争を引き延ばしているだけなのか。 

李凌
中国出身で、日本に帰化したエポックタイムズ記者。中国関連報道を担当。大学で経済学を専攻し、中国社会・経済・人権問題を中心に取材・執筆を行う。真実と伝統を大切に、中国の真実の姿を、ありのままに、わかりやすく伝えます!
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