寝ている間に「脂肪燃焼」3つの方法

運動や健康的な食事は体重減少に役立ちますが、体の脂肪燃焼能力を引き出すもう一つの鍵は「良質な睡眠」です。

ファスティングや機能的健康の専門家であるカイロプラクターのミンディ・ペルツ氏によると、研究によって、実際に睡眠中に脂肪を燃焼させることができることが明らかになっています。

睡眠前にできる3つの戦略を実践することで、体重減少を持続させ、全体的な健康状態を改善する一歩を踏み出すことができます。

 

どうやって睡眠中に脂肪を燃焼させるのか?

睡眠中の脂肪燃焼は、主に代謝ホルモンの働きによって行われます。

代謝

体の代謝は、食べたものをエネルギーに変える役割を担っています。体が休んでいる時でも、体温の維持や食物の消化、臓器の機能維持といった基本的な機能を行うためにエネルギーが必要です。

睡眠中、体はこれらの基本機能を支えるために脂肪を燃焼してエネルギーを供給します。

ホルモン

睡眠中、ホルモンのレベルは変動し、その中には脂肪燃焼を助けるものもあります。例えば、成長ホルモンは「脂肪燃焼ホルモン」とも呼ばれ、深い睡眠中に多く分泌されます。この成長ホルモンは脂肪の分解を促進し、脂肪をエネルギーとして利用するよう働きかけます。

また、睡眠不足は満腹感を感じさせるレプチンと、空腹感を引き起こすグレリンというホルモンのバランスを崩し、空腹感が増し、満腹感が減少する可能性があります。その結果、体重増加に繋がることがあります。

インスリンの減少

睡眠はインスリン感受性を改善し、体がインスリンをより効果的に使って、血液中のグルコースを細胞に運び、余分なグルコースを脂肪として蓄えるのを防ぎます。

研究者によると、睡眠はストレスを軽減し、インスリン抵抗性に関連するストレスホルモンであるコルチゾールやノルエピネフリンの減少に繋がる可能性があります。

副交感神経の活性化

副交感神経系は、体のリラックス反応をコントロールし、睡眠中に活性化されます。これにより、消化や脂肪代謝などの代謝プロセスが刺激され、脂肪燃焼が促進されます。

 

脂肪燃焼を促進する3つのヒント

1.夜遅くに食べない

一部の研究によると、体重減少のためには就寝の数時間前に食事を終えることが有益である可能性があります。メラトニンは脳の松果体で生成されるホルモンで、睡眠サイクルの調整に役立ちます。メラトニンの生成は暗くなると増え、眠気を促進し、明るくなると減少して覚醒を助けます。

「明るいうちに食事をすることが重要です。暗くなるとメラトニンの分泌が増加し、インスリン抵抗性が高まり、体がグルコースを細胞に送り込むためのインスリンを作りにくくなるからです」と、ペルツ氏は2022年に『Cell Metabolism』に発表された研究を引用しています。「夜遅くに食事をすると、その食事から得たグルコースは脂肪として蓄積されてしまいます」

研究者たちは、遅い時間に食事をすると空腹感が増し、食欲を調整するホルモンが変化し、これらの変化が肥満のリスクを高めることを予測しました。

遅い時間に食事をすると空腹感が増し、食欲を調整するホルモンが変化し、肥満のリスクを高める(Shutterstock)

 

また、無作為化プラセボ対照試験では、メラトニンサプリメントを摂取すると、2型糖尿病の患者においてインスリン感受性が低下することが確認されました。

「2型糖尿病の患者には、高用量のメラトニンの使用を制限することを推奨します。インスリン感受性の低下は2型糖尿病の病態生理の中心的な要素です」と、研究の著者らは述べています。

一般的なガイドラインとして、ペルツ氏は就寝の少なくとも2時間前には食事を終えることを推奨しています。

さらに、整骨医でありベストセラー作家のジョセフ・メルコラ博士は、最後の食事を就寝の少なくとも3時間前に摂ることを勧めています。

「これはインスリン抵抗性を減らし、ウエスト周りを引き締める最も簡単で効果的な方法の一つです」と、メルコラ博士は記事の中で述べています。

 

2. 部屋を涼しく保つ

いくつかの研究によると、涼しい部屋で寝ることが副交感神経系を活性化させる可能性があることが示唆されています。副交感神経系は「休息と消化」のシステムとも呼ばれ、消化や代謝を調整し、脂肪燃焼を助けます。研究によると、涼しい環境に身を置くことで副交感神経が働き始めます。

「これは冷水浴と似ています。冷水浴中は落ち着かないかもしれませんが、その後に落ち着きを感じることがあるでしょう」とペルツ氏は述べています。「夏場であれば、非常に冷たいシャワーを浴びてからベッドに入ると良いでしょう」

冷たいシャワーを浴びてからベッドに入ると良い(Shutterstock)

 

2014年の研究では、5人の健康な成人男性を4か月間観察した結果、室温を華氏66度(約19度)に下げることで、一晩に追加でカロリーを消費する可能性があることが示されました。これは、体が体温を維持するためにより多くのエネルギーを使うからです。

研究では、1か月間涼しい環境にさらされた後、参加者の褐色脂肪の量が42%増加したことが確認されました。褐色脂肪は白色脂肪とは本質的に異なります。白色脂肪は肥満を引き起こしますが、褐色脂肪はエネルギーと熱を生成します。大人は褐色脂肪をほとんど持っていませんが、寒冷な環境では活性化し、カロリーを燃焼して体温を維持します。この研究では、代謝活動も10%増加したことが確認されました。

2か月目に室温が中立に保たれた際には、褐色脂肪の増加や脂肪燃焼の代謝活動は減少しました。最終月には、参加者が暖かい温度にさらされたため、これらの効果は完全に元のレベルに戻りました。研究者たちは、これらの変化が季節の影響を受けずに発生したことを指摘しています。

 

3. 就寝前のストレスを軽減する

就寝前にリラックスした副交感神経優位の状態に入ることは、良質な睡眠を促進する助けになります。

その一つの方法として、夜の時間帯に感情的な会話を避けることが提案されています。「私の家では、寝る前にストレスの多い会話をしないというルールがあります。そういう話は朝にしましょう、と決めています」とペルツ氏は述べています。

寝る前はリラックスした状態いることが良いとされている(Shutterstock)

 

コルチゾールは体のストレスホルモンで、これが高まると脂肪の蓄積を促進します。睡眠中、コルチゾールのレベルは自然に低下し、この脂肪蓄積効果が止まります。高いコルチゾールレベルは、日中のエネルギー消費を支えるために体にエネルギーを蓄えるよう信号を送り、その結果として脂肪が増えます。

2022年4月に発表された研究によると、2週間の軽度のカロリー制限(1日の消費エネルギー量の10%減)後、1晩5時間半しか睡眠を取らなかった参加者は0.6キログラムの脂肪がなくなりましたが、8時間半睡眠を取った参加者は1.4キログラムの脂肪がなくなりました。

もう一つのリラックス方法としては、コメディを見ることが挙げられます。

ペルツ氏は、「ほとんどの人が就寝前にテレビを見る習慣がありますが、見るならスタンドアップコメディをお勧めします」と述べています。

寝る前にコメディーを見ることでコルチゾールが減少し、深い眠りにつくことができる(Shutterstock)

 

「一日の緊張感が私を高警戒状態のベータ波に留めていますが、笑うとオキシトシンが増え、コルチゾールが減少し、睡眠が少し楽になり、休息も深くなります。そして、睡眠から得られる休息が増えれば、より多くの脂肪を燃焼できるのです」とペルツ氏は説明しています。

 

(翻訳編集 華山律)

オーストラリアのシドニーに拠点を置き、健康と科学に関するニュースを担当するレポーター。