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毎食十分な量のタンパク質を摂取するには?

タンパク質は健康的な食生活に欠かせない栄養素ですが、多くの高齢者が十分な量を摂取できていません。

『The Journal of Nutrition, Health and Aging』に掲載されたある研究によると、高齢者の最大46%が推奨される1日のタンパク質量を下回っていることが分かっています。

 

タンパク質を多く摂るメリットとは?

初期の研究では、特に動物性タンパク質の過剰摂取が体内の酸性度を高め、骨の健康に悪影響を与えると考えられていましたが、長期的な研究では、高タンパク質の食事が、実際には、骨の健康を改善することが示されています。タンパク質を多く摂取する人は、加齢による骨量の減少を抑え、骨粗しょう症骨折のリスクが低くなります。特に閉経後の女性でその効果が顕著だと言われています。

「タンパク質は骨粗しょう症の予防において重要な役割を果たします」と、ニューヨーク市ブルックリン区の登録栄養士であり植物ベースのシェフでもあるジャッキー・ニューゲント氏は『The Epoch Times』に語っています。

高齢者の健康と活力を保つためには、特に女性にとってタンパク質の摂取は非常に重要です。

また、高タンパク質の食事は、炭水化物や脂肪の多い食事よりも満腹感を増加させることが示されています。これにより、食欲を抑え、目標体重を達成し維持するのに役立ちます。

高タンパク質の食材例(Shutterstock)

 

『The American Journal of Clinical Nutrition』に掲載された研究によると、タンパク質の摂取量を増やすことで、「自由に食事を摂取できる条件下で、エネルギー摂取量の減少を促進する可能性がある」と示されています。

さらに、タンパク質を多く摂ることで、食欲を抑え、夜遅くの間食を防ぐ効果も期待できます。『Obesity』に掲載された研究によれば、タンパク質の摂取量を総カロリーの25%に増やした肥満男性は、タンパク質摂取量が少ない男性と比べて食欲が減少し、夜遅くに間食する可能性が半分に減ったと報告されています。

タンパク質を多く摂ることのもう一つの利点は、熱生成の増加です。これにより、体が消費するエネルギー(カロリー)が増加し、筋肉量の維持や代謝機能の向上も期待できます。

さらに、引き締まった体型を維持することは、寿命を延ばす可能性もあります。『The American Journal of Clinical Nutrition』に掲載された研究では、体脂肪率が低く、筋肉量が多い人は、筋肉量が少ない人よりも長生きする傾向があることが示されています。

 

最適なタンパク質の種類

タンパク質の摂取源、特に動物性タンパク質と植物性タンパク質のどちらが良いかについては、多くの議論があります。

しかし、家庭医であるテッド・ナイマン博士は、特にダイエットや減量目的で、タンパク質の摂取量を増やすことを考えている場合、これらの議論はあまり重要ではないと考えています。

「結局のところ、タンパク質は胃で分解されて20種類のアミノ酸になるだけなので、どこから摂取するかよりも、総量が十分かどうかが重要です」とナイマン博士は、同僚のガブリエル・リヨン博士とのポッドキャスト「Achieve Your Ideal Body Composition」の中で述べています。

植物性のタンパク質は、「不完全なタンパク質」と呼ばれることがあります。これは、体の臓器の働きや筋肉の修復に必要な全てのアミノ酸が含まれていないからです。例えば、穀物やシリアルに含まれるタンパク質は、リジンという必須アミノ酸が少ないです。

一方、豆類にはリジンが豊富に含まれていますが、他の重要なアミノ酸であるトリプトファン、メチオニン、シスチンが不足しています。だから、穀物と豆類やレンズ豆を一緒に食べると、アミノ酸のバランスが取れるので良いとされています。

豆類やレンズ豆を一緒に食べると、アミノ酸のバランスが取れる(Shutterstock)

 

ナイマン博士によると、非動物性タンパク質を十分に摂取している限り、その効果は動物性タンパク質と同じです。しかし、食事全体でのタンパク質の摂取量が少ない場合、動物性タンパク質が重要になります。つまり、ヴィーガンやベジタリアンは、タンパク質摂取量を増やし、できるだけ多様な食材からタンパク質を摂ることが推奨されます。

これは、ビタミンB12や鉄などの微量栄養素の欠乏を防ぐためです。登録栄養士でスポーツ栄養学の専門家であるケリー・ジョーンズ氏は、豆類やレンズ豆を、ファロやブルガー、キヌアなどの高タンパク質の穀物と一緒に食べることを勧めています。

ファロは古くから栽培されている小麦の一種で、栄養価が高く、グルテンが少ないのが特徴です。ブルガーはデュラム小麦から作られた中東や地中海でよく食べられている食材です。また、キヌアは南アメリカ原産の「スーパーフード」として知られ、栄養価が非常に高いことから世界的に注目されています。

キヌア(Shutterstock)

 

ただし、タンパク質の質が無関係というわけではありません。ホットドッグやハンバーガーに含まれるタンパク質には、脂肪、炭水化物、食品添加物も一緒に含まれています。

「私は、タンパク質と非タンパク質のエネルギーの比率を気にしています」とナイマン博士は述べています。

もう一つの重要な点はタイミングです。夕食にまとめてタンパク質を摂るのではなく、各食事で優先的にタンパク質を摂取することで、筋肉タンパク質の合成が促進されることが示されています。日中にタンパク質を十分に摂取した人は、夕方以降の総カロリー摂取量が少なくなる傾向があります。マウスを対象にした研究では、高タンパク質の朝食が筋肉の成長を促進することが示されています。

 

どれくらいのタンパク質が十分なのか?

タンパク質の推奨食事摂取量(RDA)は、身体活動が少ない人の場合、体重1キログラムあたり0.8グラム(1ポンドあたり0.36グラム)とされています。これは、病気や重大な疾患を防ぐために必要な最低量です。身体活動がある人は、これより多くのタンパク質が必要です。

しかし、多くの栄養士や医師は、強さを維持し、退行性疾患を予防するためには、より多くのタンパク質を摂取する方が望ましいと考えています。

現在、多くの専門家は、最低でも体重1キログラムあたり1.2グラムのタンパク質を摂取することを推奨しています。この量は、「満腹感を維持し、血糖値の正常な反応を助ける効果があり、これらはタンパク質が体内で重要な他のタンパク質を生成する前に果たす重要な役割です」とケリー・ジョーンズ氏は『The Epoch Times』に語っています。

さらに、閉経前後の女性は体重1キログラムあたり1.4グラムを目指すべきだとも述べています。

タンパク質粉末(Shutterstock)

 

「閉経前後の女性は、筋肉量や骨量が減少しやすくなりますが、高タンパク質の摂取は筋肉の減少を抑え、長期的な筋肉機能と自立性を支えることができます」とジョーンズ氏は述べています。

また、一部の専門家は、特に定期的に運動をしている人や筋肉の回復を効率的に促進したい人、筋肉を増やしたい人には、体重1ポンドあたり1グラムのタンパク質が良い目標であると考えています。

短期的な研究では、RDAの2倍にあたる体重1キログラムあたり2.4グラム(これは1ポンドあたり1グラムに近い値)を摂取することで、特に高強度の運動と組み合わせた場合に、筋肉量の増加と脂肪量の減少に効果があることが示されています。ジョーンズ氏は、体重1キログラムあたり2.5グラム以上の摂取は推奨しないと述べています。

また、ナイマン博士はポッドキャストの中で、タンパク質の計算は現在の体重ではなく、理想的な体重や目標とする体重に基づいて行うべきだと強調しています。すでに理想の体重に達している場合を除き、目標体重を基準にすることが重要だと述べています。

 

タンパク質を増やす方法

タンパク質の必要量を満たすためには、特に朝食や間食を含め、すべての食事に良質なタンパク質源を取り入れることが重要ですと、ニューゲント氏は言います。

彼女はクライアントに「間食はタンパク質プラス野菜や果物」という考え方を持つよう勧めています。例えば、フムス(中東や地中海地方で古くから親しまれている、ひよこ豆をベースにしたペースト状のディップ)とキュウリのスライスや、ナッツバターとバナナを加えたスムージーなどは、手軽で簡単に作れる組み合わせです。

ただし、スムージーを選ぶ際には、レストランやチェーンのジュースバーで販売されているものは避けた方が良いでしょう。これらは余分な糖分やカロリーが多く含まれていることが多いからです。高品質なプロテインパウダーを水や好みのミルクに混ぜ、ベリーなどの低糖の果物を少し加えるだけで、手軽に栄養補給ができます。

さらに、ホウレンソウや亜麻仁アマいう植物の種子のこと)チアシード(メキシコ原産のシソ科の植物「チア」の種子)、ヘンプシード(麻の種子)などを加えることで、食物繊維や健康的な脂肪、タンパク質を増やすことも可能です。

ホウレンソウとチアシードを加えたスムージー(Shutterstock)

 

ジョーンズ氏は、野菜入りの卵マフィンやフリッタータ(イタリア生まれの、オムレツやキッシュを彷彿とさせる卵料理)の冷凍ブリトー(メキシコ料理の定番であるブリトーを冷凍保存できるよう加工したもの)を事前に作り置きしておくことを勧めています。

これなら朝食に簡単に温めて持ち運ぶことができます。また、ギリシャヨーグルトや植物性のギリシャヨーグルトをシリアルや果物と組み合わせるのもおすすめです。卵はタンパク質の豊富な栄養源であり、栄養士にとっても人気の食材です。特に、卵黄が以前考えられていたほど血中コレステロールに悪影響を与えないことが分かってきています。

手軽で持ち運び可能な間食も、健康的なタンパク質の摂取源となります。肉スティックやジャーキーはここ数年で人気が高まっており、ほとんどが10~12グラムのタンパク質を提供し、炭水化物はほとんど含まれていません。できるだけ、牧草で育てられた肉を使用し、添加物が少ないものを選ぶのが良いでしょう。

また、タンパク質を多く含む食事を提供し、調理の手間を減らしてくれる食事配達サービスもあります。

 

(翻訳編集 華山律)