人の生命エネルギーや体の状態は、腎の健康と深く関係しています。幼い頃から腎の働きが活発になるにつれ、歯が生え、体が成長します。若い頃は腎の力がピークに達し、体も最も活力に満ちた状態になります。しかし、中年になると腎の働きは安定しながらも少しずつ衰え始め、老年期に入るとさらに弱まり、歯がぐらついたり、髪が白くなったり抜けたりします。
腎は、生命活動や成長を支える重要なエネルギーを蓄える「貯蔵庫」のような存在です。この貯蔵庫に十分なエネルギーがあれば、体全体が元気で健康を保てます。だから私はよく周囲の人にこう言います——「健康を守るには、まず腎を養うこと。体の調子を整えるなら、まず腎を整えること」
腎は、生命に必要なエネルギーを蓄える倉庫のようなものです。この倉庫がどれだけ大きく、しっかり機能しているかによって、貯められるエネルギーの量が決まります。中医学では、体の基本的な要素である「陰」「陽」「気」「血」「津液(しんえき)」などはすべて腎に蓄えられ、これらが生命活動のエネルギー源になると考えられています。
つまり、腎という倉庫がしっかり整っていれば、必要なときに十分なエネルギーを供給でき、健康を維持できるのです。
腎の働きが良くなると、免疫力が上がり、髪が白くなりにくく抜けにくくなる、声に力が出る、肌の血色が良くなる、活力が増すなど、さまざまな良い変化が現れます。また、生殖機能も正常に保たれます。しかし、中医学の知識がないと、自分の腎の状態を正しく判断できず、逆効果なケアをしてしまうことがあります。例えば、腎の潤いが不足している「腎陰虚(じんいんきょ)」の人が、腎を補うと聞いてニラや羊肉などの「腎陽を補う食材」を積極的に食べると、かえって体調を崩してしまうのです。では、腎を正しくケアするにはどうすればよいのでしょうか?
食べ物によって腎を養い、守ることができます。特に、腎の機能を整えるために効果的なのは「黒い食べ物」です。中医学では、五行説に基づき「黒い食べ物は腎の働きを助ける」と考えられています。実際の研究でも、多くの黒い食材が腎の健康維持に役立つことが確認されています。
ただ、黒い食べ物の良さをよく知らず、「見た目が地味で美味しそうに見えない」と思う人もいるかもしれません。しかし、見た目はともかく、黒い食材には健康に良い成分がたくさん含まれているのです。
そこで今回は、腎の働きを助ける黒い食べ物を使ったおすすめの料理をいくつかご紹介します。
1.黒米と龍眼の薬膳粥

材料:黒米(紫米)80g、乾燥龍眼(桂円)15g、黒糖適量
作り方:
黒米をよく洗い、鍋に入れる。適量の水を加え、強火で沸騰させたら、弱火にして8分通り火が通るまで煮る。龍眼を加え、とろみが出るまでさらに煮込む。最後に黒糖を加え、よく混ぜたら完成。
効果:黒米と龍眼の粥は、心を落ち着けてリラックスさせ、腎を養い精力を補う働きがあります。
黒米は火が通りにくいため、煮る前に一晩水に浸しておくのがポイント。少し手間はかかりますが、健康のためにしっかり準備して作りましょう。
2.黒ごまとクコの牛肉煮込み
材料:牛肉500g、黒ごま100g、クコの実30g、ピーナッツ油(またはサラダ油)適量、片栗粉適量、その他の調味料(酒、醤油、塩、うま味調味料など)
作り方:牛肉を洗い、薄切りにする。ボウルに牛肉を入れ、酒、醤油、ピーナッツ油、片栗粉を加えてよく揉み込み、しばらく漬けて味をなじませる。黒ごまを洗い、水気を切ったらフライパンに入れ、弱火で香ばしくなるまで炒る(焦がさないように注意)。クコの実を洗い、牛肉、黒ごまと一緒に土鍋に入れる。沸騰したお湯を適量加え、強火でひと煮立ちさせた後、弱火で4時間じっくり煮込む。最後に塩やうま味調味料で味を調えたら完成。
効果:この料理は、肝腎を養い、体を強くし精力を補う効果があります。黒ごまは焦がさないように炒ることで、栄養の吸収や風味が損なわれるのを防ぎます。
3.きゅうりとキクラゲの炒め物
材料:きゅうり2本、黒キクラゲ50g、赤パプリカ(または赤唐辛子)適量、豚もも肉(赤身)適量、塩適量、うま味調味料(鶏がらスープの素など)適量、酢適量、片栗粉適量、サラダ油適量
作り方:キクラゲは水で戻し、根元を取り除いて洗う。赤パプリカは斜めに切って菱形にする。豚肉は薄切りにし、塩・酢・片栗粉を加えてよく揉み込み、少し置いて味をなじませる。フライパンに油を熱し、漬けておいた豚肉を炒める。肉の色が変わったら、きゅうり・キクラゲ・赤パプリカを加え、全体を炒め合わせる。きゅうりが8分ほど火が通ったら、塩・うま味調味料で味を調えて完成。
効果:黒キクラゲは、腎を養い、血を浄化し、肺や胃の働きを助けるとされており、体の乾燥を防ぎ、健康を維持するのに役立ちます。また、体内の老廃物を排出する働きもあるといわれています。
4.ユリ根と桑の実の健康ドリンク

材料:ユリ根(乾燥)15g、干しナツメ15g、桑の実(乾燥)15g
作り方:ユリ根、桑の実、干しナツメをよく洗い、水気を切る。鍋に干しナツメと適量の水を入れ、沸騰させる。弱火にして約30分ほど煮る。ユリ根と桑の実を加え、再び沸騰したら火を止めて完成。
効果:桑の実は腎機能を整え、血を補い、体を潤し、喉の渇きを和らげる働きがあります。このドリンクは特に腎を養い、体の潤いを保つ効果があり、女性におすすめです。
5.黒米と黒豆の豆乳
材料:黒豆60g、黒米30g、クコの実10g
作り方:黒豆と黒米をよく洗い、一晩水に浸す。豆乳メーカーに黒豆と黒米を入れる。浸していた水の黒い液体を豆乳メーカーに加え、水を適量まで補って豆乳を作る。豆乳ができたら、熱いうちに洗ったクコの実を加えて完成。
効果:黒豆は、甘みがあり、消化を助ける「脾(ひ)」と腎の働きを整えるとされ、形も腎臓に似ていることから、腎を養う食材として知られています。黒豆と黒米を組み合わせたこの豆乳は、腎を養い、体を潤し、エネルギーを補うのに最適な飲み物です。
また、黒い食材だけでなく、魚介類やナッツ類も腎を強くするのに役立ちます。黒い食材は栄養価が高く、特に腎の働きを助ける効果があるため、積極的に取り入れることで体力が向上し、病気の予防にもつながります。さらに、動脈硬化や心疾患、脳卒中のリスクを減らし、老化を遅らせる働きもあるため、まさに「健康を守るための食材」といえるでしょう。
(翻訳編集 華山律)
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