春になると、頭痛、肌のかゆみ、関節の痛み、だるさを感じることはありませんか? 実は、これらは「風邪(ふうじゃ)」が原因かもしれません。
中医学では、人が病気になるのは六つの邪気が影響していると考えられています。それは「風邪」「寒邪」「暑邪」「湿邪」「燥邪」「火邪」です。その中でも風邪は「百病の元」と呼ばれ、さまざまな病気の引き金になります。季節を問わず現れ、特に春は影響を受けやすい時期です。
風邪はほかの邪気と組み合わさることで、さらに体に悪影響を及ぼします。風邪と寒邪が重なると、風邪をひきやすくなり、冷たい風に当たると頭痛や首のこわばりを感じ、体が冷えて動きにくくなります。
風邪に湿邪や寒邪が加わると、関節が腫れて痛み、動きが鈍くなることがあります。
風邪と燥邪が合わさると、肌が乾燥してかゆみが増し、ひどく掻きむしると傷になります。
風邪に熱邪が加わると、頭痛や発熱、イライラといった症状が現れ、重症化すると脳卒中のリスクが高まります。
ツボ押しで頭痛を和らげる
春は気候が変わりやすく、冷たい風に当たると「風邪(ふうじゃ)」の影響を受けやすくなり、風邪による頭痛を引き起こしやすくなります。特に、バイクに乗る人や配達員、営業職など、屋外で活動することが多い人は注意が必要です。頭痛を防ぐ最も効果的な方法は、首元を温かく保つこと。マフラーやスカーフを着用し、冷たい風が直接当たらないようにしましょう。
このような風寒型の頭痛は、後頭部や首の後ろから始まり、目の奥に痛みを感じ、仕事に集中しにくくなります。しかし、このタイプの頭痛は、薬を使わずに簡単に対処できます。親指を使って、後頭部の髪の生え際の少し上にあるくぼみ、「風池(ふうち)」と「風府(ふうふ)」というツボを押すだけです。左右のツボを1日1~3分ほどマッサージすると、頭痛を効果的に和らげることができます。

かゆみを和らげるスープ
春は「風邪(ふうじゃ)」と「熱邪(ねつじゃ)」が組み合わさり、肌に赤い発疹や蕁麻疹ができ、温まるとかゆみが増すことがあります。そんなときにおすすめなのが「緑豆甘草湯」です。このスープには高い解毒作用があります。
古い薬膳書『食療本草』には、緑豆には体の調子を整え、五臓の働きを助け、精神を安定させる効果があると記されています。また、体内の気の流れをスムーズにする作用もあるとされています。緑豆は皮ごと食べることで薬効が発揮されるため、皮を取らずに使うことが大切です。現代の研究でも、緑豆には豊富なタンパク質や抗酸化作用のあるフラボノイドが含まれており、解毒作用があることがわかっています。甘草は漢方において「万能の調整役」とされ、ほかの生薬と組み合わせることで効果を高める働きがあります。
緑豆甘草湯

材料:
- 緑豆 300g
- 生甘草 15g(4~5枚)
- 水 1000ml
作り方:
緑豆を洗い、鍋に入れて1000mlの水を加え、1時間浸しておきます。その後、生甘草を加えて火にかけ、沸騰したら弱火にして約15分煮ます。火を止めたら、さらに5分蒸らします。甘みを加えたい場合は、適量の砂糖を入れて混ぜます。そのまま飲んでも大丈夫です。
気を付けるべきことは、体が冷えやすい人や、消化不良・下痢をしやすい人は、緑豆や緑豆スープの摂りすぎに注意してください。
関節痛を和らげるスープ
春の雨の日、関節がこわばって痛む人は少なくありません。中には、天気予報よりも早く気候の変化を察知できるほど敏感な人もいます。これは「風邪(ふうじゃ)」の影響によるものです。風邪が体に入り、経絡(けいらく:気の流れ道)が詰まると、関節リウマチのある人は特に痛みを強く感じ、重症化すると関節が変形することもあります。
中医学では、風・寒・湿の三つの要因が関節や骨、筋肉の痛みを引き起こすと考えられており、これを「痺症(ひしょう)」と呼びます。風邪や湿気を取り除く方法の一つとして食事養生があり、台湾の伝統的なスープ「四神湯(ししんとう)」はおすすめです。
四神湯

材料:
- 芡実(けんじつ)60g
- 淮山(わいさん)30g
- 蓮子(れんし)60g
- 茯苓(ぶくりょう)25g
- 薏仁(いにん)30g
- 水 1500ml
作り方:
鍋に1500mlの水を入れ、食材をよく洗って加えます。強火で沸騰させた後、弱火にして40分ほど煮ます。
四神湯は肉と一緒に煮込むと、さらに美味しくなります。台湾では豚の腸や胃を加えるのが一般的ですが、スペアリブや鶏肉を入れてもよいでしょう。ベジタリアンの方は、きのこを加えてアレンジするのもおすすめです。
四神湯には湿気を取り除く効果があり、下痢やお腹の張りなどの消化不良の改善にも役立ちます。ただし、妊娠中の方は避けたほうがよいでしょう。薏仁に含まれる成分には、流産を引き起こす可能性があるためです。
また、関節リウマチの人は、魚の皮や内臓、ストローマッシュルーム、アスパラガス、濃い肉スープなどを控えましょう。これらの食材は炎症を悪化させる可能性があるからです。
春の養生におすすめの3つの食材
古い医学書には「春に風邪(ふうじゃ)の影響を受けると、夏に消化器系の不調を招く」と記されています。つまり、春に風邪を防ぐことが、夏の健康を守ることにつながるのです。
春に特におすすめの食材を3つ紹介します。
- ほうれん草:
中医学では、春は肝臓を養う季節とされています。ほうれん草は肝臓の働きを助け、血の巡りを良くし、貧血を防ぐ効果が期待できます。また、乾燥を和らげて喉の渇きを癒し、目を保護し、老化を遅らせる作用もあるとされています。
- 大豆もやし:
大豆もやしは「春のデトックス食材」とも呼ばれ、体の熱を冷まし、解毒し、利尿作用で余分な水分を排出する効果があります。春に出るアレルギーや皮膚のかゆみの改善にも役立ちます。研究によると、大豆が発芽すると生理活性物質の働きが高まり、特に発芽から4日経った大豆には、未発芽の大豆の6倍もの活性ペプチドが含まれており、抗炎症作用がより強くなることが分かっています。
- クコの実:
クコの実は肝臓と腎臓を補うのに適した食材です。お茶に入れるだけでなく、そのまま食べても効果的です。毎日ひとつかみのクコの実を摂ることで、目を保護し、肌の血色を良くする働きが期待できます。
また、クコの実に含まれるゼアキサンチンジパルミテートという成分は、肝臓に良い影響をもたらすカロテノイドの一種で、肝機能を守り、肝線維化を抑え、抗酸化・抗炎症作用を持つことが知られています。
春は風邪が活発になる季節です。しっかりと体を温め、食事を調整し、適度にツボをマッサージすることで、風邪の影響を減らし、健康を保ちましょう。
(翻訳 華山律)
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