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食事は1回20分以上が理想!中医学がすすめる脾胃ケアの8つのポイント

中医学では、脾胃(ひい)は「後天の本(もと)」とされます。人体の五臓六腑はすべて脾胃の滋養によって支えられており、後天的な生命活動を維持する土台となっています。体に現れるさまざまな不調の多くは、脾胃の問題に起因している可能性があります。

ここでは、中医学の観点から「なぜ胃の調子が悪くなるのか」、そして「根本的な健康維持のためにできること」をご紹介します。

現代人は、生活習慣や食生活の不規則さ、ストレスの多さなどが影響し、胃痛や腹部の膨満感、胃酸の逆流、ゲップといった脾胃に関わる症状を訴えて外来を訪れる方が増えています。治療の観点では、中薬(漢方薬)でも西洋薬でも、これらの胃の症状は比較的短期間で改善可能です。

しかし実際には、多くの患者が同じような胃の不調を繰り返し、なかなか根本的な改善に至らないという現実があります。その主な原因は、患者自身が正しい生活習慣や食習慣の知識を持たず、それを継続できないことにあります。

実際には、重度の胃の病でも、正しい生活と食事の習慣を根気よく続けることで、薬に頼らずとも回復することは十分可能です。
 

中医学における脾胃の理解

中医学の五行学説によると、脾と胃は「土」に属しており、土は万物を支え、生み出す性質を持っています。人間にとって、脾胃は「後天の本」、すなわち生命活動を支える基盤とされています。

ここで言う「脾」は、西洋医学における脾臓に限らず、「消化吸収を担う体内のシステム全体」を指します。そのため、一般的に「脾虚(ひきょ)」とは、消化・吸収機能の低下を意味します。

脾は、食物や水分を精微な栄養に変換し、それを全身の臓腑に送り届ける生理機能を持っています。また、血液を血管内にとどめ、漏れ出さないようにする役割もあります。

一方、胃は、飲食物を受け取り、それを消化・分解し、栄養となる精微物質を脾が体全体に送れるようにする助けを担っています。

脾と胃は、表裏一体の関係にありながら、生理的には正反対の特性を持っています。この違いは、養生や治療の際に特に注意すべきポイントです。

  • 「脾気(ひき)は昇を主とし、燥を好み、湿を嫌う」
  • 「胃は通降を主とし、潤を好み、燥を嫌う」

このような脾胃の生理機能が障害されると、さまざまな不調や病気が引き起こされることになります。
 

脾気の弱りが内臓下垂を招く

たとえば、脾気が不足し、「昇清(栄養を上へ届ける)」機能が失われた場合、次のような不調が現れることがあります:

  • 頭部へ精気が届かず、めまいや倦怠感を感じる
  • 腹部では汚れた気が停滞し、膨満感や腹痛を感じる
  • 下半身では精気が流れてしまい、軟便や下痢になる

さらに、脾には内臓を「上に持ち上げて固定する」作用、つまり「昇提作用」があります。そのため、胃下垂、子宮下垂、膀胱下垂などの症状には、脾気を補うことで内臓が正しい位置に戻り、場合によっては手術を避けられることもあります。

重度の胃の病気でも、食生活や生活習慣を正しく見直せば、薬に頼らず改善できることがあります。(Shutterstock)

 

朝の習慣:脾胃を痛める二大禁忌

  • 空腹時に大量の白湯を飲むこと
  • 空腹時に生の冷たい野菜・果物ジュースを飲むこと

近年、「朝起きて空腹のときにコップ一杯以上の白湯を飲むと、血液がサラサラになり脳血栓を予防できる」「腸の蠕動を促し便通が良くなる」といった健康法が広まっています。本当にそれが体に良いのでしょうか?

筆者自身、過去に2週間ほど試してみたことがあります。毎朝約250 mlの温かい白湯を飲んでみたのですが、もともと便通がよかったにも関わらず、胃腸の張りやゲップが多く、不快感が続きました。白湯をやめてみたところ、3日後にはそれらの症状が自然と解消しました。

この経験から、診察時に「朝、大量の白湯を飲む習慣がありますか?」と患者さんに尋ねるようにしました。すると、毎朝200〜500 mlほど飲んでいる人が多く、その理由は「健康に良いと聞いたから」だそうです。

そこで、1週間だけ「朝に白湯を飲まない」生活を試してもらい、薬は処方しませんでした。その結果、多くの患者さんが「胃の張りやゲップが大きく改善した」と報告しています。
 

朝に大量の白湯が脾胃を傷める理由

なぜ空腹時の大量の白湯が脾胃を傷つけるのでしょうか? 中医学の観点から脾の生理的特性を見ると理解できます。

朝は脾の陽気が目覚め始めたばかりで、「生まれたての太陽」のような状態です。この時、冷たく陰性の大量の水(または生の果物・野菜ジュース)を体に入れると、脾の陽を打ち消し、脾が弱ってしまいます。

脾気が虚弱になると、膨満感・消化不良・むくみ・疲労感・めまい・動悸・視界のかすみなど、さまざまな症状が現れます。
 

脾と胃をいたわる8つの生活処方

脾胃を健やかに保つための方法には、以下の8つのポイントがあります:

1、よく噛み、時間をかけて食事する(1食20分以上)

胃もたれや胃痛を抱える人に共通しているのは「早食い」です。1口あたり50回以上噛み、唾液をたっぷり出すことで、食物が粥状になり、消化を助けます。

2、食事中は集中して噛む。他のことをしない

食事中にテレビ、新聞、スマホ、会話、思考などをすると、脾胃の消化機能が妨げられます。

3、食事中にスープや液体を大量に摂らない

食事中に多量のスープや液体を飲むと、胃液が薄まり消化不良を招きます。スープは食事前に少量飲むのがおすすめです。

4、食後すぐ横になるのはNG

食べたものが胃から排出されるには約2時間かかります。食後2〜3時間経ってから横になることで胃酸逆流を防げます。

5、食後は座らず、10〜15分の軽い散歩を

胃は「通じて下降する」ことを好みます。食後すぐ座ってテレビや本を見ると、胃の気の流れが滞り、不調になります。軽く歩くことで消化が促進されます。

6、消化に負担をかける食材を控える

うどん、パン、スイーツ、辛いもの、お酒、酸っぱい・粗い食材などには注意が必要です。特に玄米や雑穀米などは栄養価が高くても消化には不向きで、胃腸が弱い人には逆効果になることがあります。

7、生冷食品は禁止。果物は食後に

生野菜、生肉、冷たい飲食物は脾胃の陽気を傷つけます。多くの果物は「陰性」で「生もの」であり、空腹時に食べると脾胃を痛めます。果物は食後30分~1時間後に摂るのが適切です。なお、夜は「陰」が強まるため、夕食後には果物を避けましょう。

8、食事は時間と量を守ること

胃液は一定のリズムで分泌されており、空腹時でも分泌が続きます。食事の時間を守らないと胃壁を傷つけ、過食も脾胃を損ないます。

キビは脾・胃・腎を補う効果があります。(Fotolia)

脾胃を養う薬膳の王様――キビ

キビは性質が「涼」、味は「甘・塩」で、脾を補い胃を養い、腎を滋養する効果があります。胃の不快感や痛み、膨張感、腸炎や下痢の際には、キビをお粥にして食べることで、薬以上の効果が期待でき、副作用もありません。

(翻訳編集 里見雨禾)

呉国斌
心医堂漢方医院院長