【ニュースレターが届かない場合】無料会員の方でニュースレターが届いていないというケースが一部で発生しております。
届いていない方は、ニュースレター配信の再登録を致しますので、お手数ですがこちらのリンクからご連絡ください。

イメージ図。(Shutterstock)

高齢者が長期に認知力を維持するには

2025/08/28
秋生

一般的に言えば、人は加齢の過程で徐々に認知能力が低下していきます。アルツハイマー病は、どうにもならないように思われがちですが、実際の状況は人それぞれ異なります。なぜなら、人間には無限の可能性があるからです。研究によって明らかになったいくつかの正しい方法は、高齢者が長期的に良好な認知能力を維持する助けになります。

アメリカの研究者たちは『米国医師会雑誌』（JAMA）に論文を発表し、7月28日（月）に行われたアルツハイマー病協会の国際会議でも報告しました。それによると、「より健康的な生活習慣」を取り入れた人たちは、加齢に伴う典型的な認知機能の低下が緩やかで、脳のテストでは「1〜2歳若返った」ようなスコアを記録したということです。

要するに、「より健康的な生活習慣」とは、以下の3つの要素を指します：運動を多く行うこと、脳を積極的に使うこと、健康的な食事をとることです。

言い換えれば、認知能力の低下を心配する高齢者は、身体と脳を鍛え、より健康的な食事を心がけることで、鋭い頭脳を長期にわたり維持できるのです。

これは、アメリカで行われた厳密な研究による初期結果であり、アルツハイマー病のリスクを持つ高齢者が生活習慣を段階的に改善することを目的としています。

研究の参加者は60歳代から70歳代の人々で、それぞれ異なる生活背景や習慣を持っていました。

イリノイ州オーロラ市に住む66歳のフィリス・ジョーンズ（Phyllis Jones）さんは、アルツハイマー病を患った母親の介護をしており、自身の健康問題にも取り組んでいました。彼女は「これは、脳を守るために積極的な方法をとった初めての経験です」と語っています。

現在の段階では、加齢に伴う認知機能低下を遅らせることで、将来的なアルツハイマー病やその他の認知症のリスクを下げられるかどうかは明らかになっていません。しかし、ジョーンズさんを含む研究参加者たちは脳のスキャンや血液検査を受けており、研究者たちはこれらのデータを分析して、アルツハイマー病に関連するタンパク質の蓄積が減少しているかなどの手がかりを探しています。

ウェイクフォレスト大学医学部のローラ・ベイカー（Laura Baker）氏がこの研究の責任者です。彼女は「私たちは皆、認知の老化という道を歩んでいますが、その歩みを遅らせることができれば、大きなメリットがあると考えています」と述べています。

この研究は、アルツハイマー病協会および米国国立老化研究所の支援のもと、ベイカー氏の研究チームが60歳から79歳までの高齢者2,100人を対象に、2年間にわたり実施しました。

参加者たちは無作為に2つのグループに分けられました。第1グループは運動と食事の改善プログラムに参加し、さらに脳に挑戦する宿題をこなしました。このグループは仲間からの支援を受け、コーチが進捗を追跡しました。

運動：　週4回、各30分の中程度の強度の運動に加え、週2回、10〜15分のストレッチ運動と15〜20分の筋力トレーニングを実施しました。
食事：　「健脳食」（MIND diet）に従い、葉物野菜やベリー類、全粒穀物、鶏肉、魚などを多く摂取しました。食事制限は厳しくなく、赤身肉、揚げ物やファストフード、甘いものは控え、バターやマーガリンの代わりにオリーブオイルを使用することが強調されました。
脳のトレーニング：　毎週誰かと会ったり、新しいことに挑戦したり、「Brain HQ」というオンラインプログラムを使って脳のトレーニングを行いました。

対照グループには、脳の健康を守るためのアドバイスと最低限のガイダンスだけが与えられ、どのステップを実践するかは本人の自由でした。

どちらのグループも以前より改善が見られましたが、第1グループの方が明らかに良い成果を上げました。

ベイカー氏は、中程度の強度の運動とは「心拍数が上がり、息が少し上がっても会話できる程度の運動」と説明しています。彼女は「自分が好きで安全な運動を選び、ゆっくり始めてください。最初は1回10分でも構いません。徐々に時間を延ばしていきましょう」とアドバイスしています。

脳のトレーニングにもさまざまな方法があります。パズル、読書クラブ、楽器の演奏、新しい言語の習得などです。

研究者たちは今後4年間、さらに参加者の健康状態を追跡し続ける予定です。アルツハイマー病協会は、研究結果をもとに地域社会のプログラムへの導入を進めています。

ジョーンズさんは、体重が約13kg減り、心臓の状態が改善され、脳の働きも鋭さを増したと感じています。特に、複数の作業を同時にこなす能力が向上しました。しかし、プログラムの指導が終了した後に、身につけた食習慣が崩れ、検査で血糖値の上昇が判明しました。現在は研究に参加していた81歳の友人と互いにサポートし合いながら、生活を再び正しい軌道に戻しています。

彼女は「生活習慣の改善は、体に良いだけでなく、心と精神にも良い影響を与えてくれます」と話しています。