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小さな庭師

花を束ねる庭師 アメリカナキウサギの暮らし

アメリカナキウサギは、その愛らしい外見だけではありません。この北アメリカ西部に生息する野生動物は、夏の間ずっと最良の花を集める才能あふれる花職人でもあります。

この愛くるしい高山性の草食動物が冬を越すために食料の貯蔵を始めるとき、人々は、美しい「花束」を運びながら忙しそうに走り回る様子を目にするのです。

成体のアメリカナキウサギは、通常約200gの重さです。(Shutterstock)
(Marina Poushkina/Shutterstock)

アメリカ国立公園局は、アメリカナキウサギについて、ウサギやノウサギの近縁で、体は小さく、冬眠はせず、寒い季節も岩の隙間や雪の下にあるトンネルの中を活発に動き回ると説明しています。そのため、高山の草地に野花が咲き乱れるころ、このふわふわした動物は冬に備えて十分な食料を集めなければなりません。この作業は「貯草」と呼ばれ、甘美でありながら非常に重労働な仕事です。

この可愛い小動物はハムスターほどの大きさで、脚の長さは5センチ未満です。しかし、コロラド・ナキウサギ・プロジェクトによると、それでも毎日200回も草地に降りては収穫を抱えて岩だらけの斜面を駆け上がり、高地の巣へと戻っていくことができるのです。

(Ghost Bear/Shutterstock)
(Brett Swain/Shutterstock)

豊かな収穫物は「干し草の山(ヘイスタック)」と呼ばれます。そこには草、花、ハーブなどが混ざった栄養豊富なごちそうが詰まっており、彼はそれを太陽の下に広げて乾かします。生育期はとても集中的で活発だが、わずか約10週間と短いため、この小さな動物は10か月分の食料を蓄えなければなりません。したがって、日光に当てて乾かすことでカビの発生を防いでいるのです。

ある研究では、この愛らしい毛むくじゃらのウサギには、有毒な植物への驚くべき対策があることも明らかになっています。

咲き誇る野花の中には、毒性の強い二次代謝物質[1]を大量に含んでいる種類もあり、それを直接食べるとナキウサギは体調を崩してしまいます。そのため、賢いナキウサギはこうした植物を他の草花と一緒に乾草堆に入れて保存します。これにより乾草全体のカビの発生を抑えることができるのです。冬になるころには毒素が分解され、安心して食べられるようになります。

一方、消化しやすい植物はその場でむしゃむしゃと食べてしまい、ナキウサギは冬に備えて体重を増やしていきます。

[1] 植物が自らを守るために生成する化学成分

(Eivor Kuchta/Shutterstock)
(Frédéric Dulude-de Broin/CC BY-SA 4.0 DEED)
(Eivor Kuchta/Shutterstock)
(Wirestock Creators/Shutterstock)
(Kendall Collett/Shutterstock)

アメリカ西部やカナダの岩場や高山の草原に生きるナキウサギの生活はとても過酷です。年間を通じて多くの時間を厳しい冬と食料不足の中で過ごさねばなりません。しかし夏が来ると、太陽は豊かな食糧をもたらします。勇敢な草食動物にとって、それは絶好の準備期間なのです。

果てしない食糧集めの旅は、大変な労力を伴います。また、ナキウサギたちは互いの干し草の山から盗み合うため、自分の縄張りを厳重に守っています。

もしあなたが夏にロッキー山脈を訪れ、ゴム製のオモチャのような「キーキー」とした甲高い鳴き声を聞いたら、それはもしかすると自分の花と草の宝物を守ろうとしている、不満げなナキウサギの声かもしれません。

「アメリカナキウサギはとても声の大きな動物なんです!」とコロラド・ナキウサギ・プロジェクトは語ります。

(Danita Delimont/Shutterstock)

(翻訳編集 井田千景)