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アンデスイワドリを追って 南米雲霧林での奇跡の瞬間

エクアドルの山岳地帯にある野生動物保護区では、旅行中の写真家たちが湿度の高い雲に覆われた森林(雲霧林)で、鮮やかなオレンジ色の鳥が披露する壮麗な儀式を撮影しようと、長いレンズを構えて待ち構えていました。

早朝、ブラジル・ブラジリア出身で、普段は銀行に勤務するクラウディア・ブラジレイロさん(48歳)は、アンデス山脈に位置する「レフヒオ・パス・デ・ラス・アベス」を訪れ、繁殖期のオスのアンデスイワドリを撮影するため現地にやってきました。

ブラジレイロさんとツアーガイドのハビエル・ムニョスさんは、サント・ドミンゴから北東へ約3時間の山麓にある保護区内で、オスが「レッキング」という求愛儀式を行う特定の場所を選びました。繁殖期のオスは、他のオスと羽を広げて威嚇したり、頭を下げて挨拶したり、さまざまな鳴き声を発したりと複雑な行動を見せます。

しかし、この日の朝は驚くほど静かでした。

「1羽だけ現れたのですが、距離が遠く、光の条件も悪く、すぐに飛び去ってしまいました」とブラジレイロさんはエポック・タイムズに語っています。「とてもがっかりしました。素晴らしい鳥の行動をしっかり撮影したかったのに、うまくいかなかったんです」

エクアドルのRefugio Paz de Las Aves近くの雲霧林。(Shutterstock/Gert Olsson)
エクアドルのレフヒオ・パス・デ・ラス・アベス近くの雲霧林(写真提供:Shutterstock/ゲルト・オルソン)
(Shutterstock/imageBROKER.com)
(写真提供:Shutterstock/ゲルト・オルソン)

この鳥は見逃すことがほぼ不可能なほど目立ちます。深いオレンジ色や緋色の羽毛に包まれ、緑のジャングルの中でも一際映えます。とくに額の円盤状の大きな冠羽が特徴的です。尾羽は黒く、肩羽は淡い灰色をしています。

このエクアドルの雲霧林は常に曇りがちで、レフヒオ・パス・デ・ラス・アベスはアクセスの良さから、森林の奥に生息する多くの鳥類を観察できる場所として知られています。アンデスイワドリは赤道付近のアンデス山脈全域の熱帯ジャングルに生息し、現在のところ生息地破壊による深刻な脅威は受けていません。

アンデスイワドリは、額に目立つ円盤状の冠羽を誇示しています。(クラウディア・ブラジレイロ提供)
アンデスイワドリは額に円盤状の目立つ冠羽を持つ。写真提供:クラウディア・ブラジレイロ
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エクアドルのアンデス山脈にあるレフュジオ・パス・デ・ラス・アベスに止まるアンデスイワドリ。写真提供:クラウディア・ブラジレイロ

この場所はつがいが巣を作るのにも適しています。繁殖期になるとオスは鮮やかな羽毛を誇示しながら跳ねたり首を振ったり、さまざまな鳴き声を発してメスを引き寄せます。交尾後、メスは岩の張り出しの下に泥で巣を作り、1羽で卵を温めます。メスは茶色の地味な羽色で、冠羽も目立ちません。

アンデスイワドリは主に果物や昆虫を食べますが、カエルや小型の爬虫類、さらにはネズミを食べることもあります。ただし、オスは交尾後にメスへ餌を運ぶのではなく、新たなメスを引きつけるため再びレッキングに加わります。つまり一夫多妻制の鳥です。ブラジレイロさんが訪れたのはちょうど繁殖期で、時期としては完璧でした。しかし、鳥は現れませんでした。

まだ、この時点では。

朝は静かに始まりましたが、バードウォッチャーたちは諦めずにアンデスイワドリを探し続けました。レッキングの季節には多くのオスが姿を現し、華麗なショーを見せてくれることがあるためです。ブラジレイロさんは今朝見られなかったことに落胆していました。

アンデスイワドリの顔の羽毛の詳細。(クラウディア・ブラジレイロ提供)
アンデスイワドリの顔の羽毛の詳細(写真提供:クラウディア・ブラジレイロ)
雄が他の雄との交尾や競争のために複雑な儀式を行うレッキングシーズン中に頭を下げるアンデスイワドリ。(クラウディア・ブラジレイロ提供)
レッキングの季節に競い合いながら求愛するアンデスイワドリ(写真提供:クラウディア・ブラジレイロ)

 

「ハビエルは、私が泣いていたのを見ました」とブラジレイロさんは語ります。彼は「鳥たちは夕方に戻ってくることもある」と言い、2人は夕方に再訪することにしました。そして、運命が変わりました。

「1時間以上立ちっぱなしで、何も起こりませんでした。諦めようかと話したのですが、やめませんでした」とブラジレイロさん。

「すると1羽が鳴きながら少し離れた場所に止まりました。でも幸運なことに、3羽以上が鳴き始め、踊り、近くに姿を見せてくれたんです。ハビエルと私は大興奮で、また泣いてしまいました…鳥たちが来てくれたことが本当に嬉しくて」

止まり木に止まったア​​ンデスイワドリが、黒い尾羽と灰色の肩羽を見せている。(クラウディア・ブラジレイロ提供)
止まっているアンデスイワドリ。黒い尾羽と灰色の肩羽が見える(写真提供:クラウディア・ブラジレイロ)

 

高音の鳴き声を響かせ、求愛ディスプレイを見せる様子は「素晴らしい体験だった」と彼女は語ります。鳥たちは臆することなく止まる場所を頻繁に変えながら、写真家のすぐ近くまでやって来ました。

しかも、現れたのはアンデスイワドリだけではありません。

ブラジレイロさんはインドからマチュピチュまで世界各地を訪れ、現地ガイドに「タンガラ」「オオハシ」「コンゴウインコ」「ハチドリ」などの情報を尋ねながら、鳥への情熱と撮影欲を満たしています。今回も例外ではなく、「赤胸オオハシ」「アオバネヤマタンガラ」「キンムネタンガラ」などの珍しい鳥も撮影することができました。

胸が赤いオオハシ。 (クラウディア・ブラジレイロ提供)
赤胸オオハシ(写真提供:クラウディア・ブラジレイロ)
青い羽を持つマウンテンタナゴ。(クラウディア・ブラジレイロ提供)
アオバネヤマタンガラ(写真提供:クラウディア・ブラジレイロ)
ゴールデンウナギタナガー。 (クラウディア・ブラジレイロ提供)
キンムネタンガラ(写真提供:クラウディア・ブラジレイロ)

「ハチドリはすでに222種撮影しました」とブラジレイロさんは語ります。全体で363種いる中、「2026年、50歳になる前に3分の2を達成するのが目標です」。しかし残り20種となった今、「1回の旅で10種以上撮るのは難しくなってきました」とも話します。

数千種もの鳥を撮影し、複数の写真集も出版している彼女は、自らを「クレイジーなバードウォッチャー」と称し、「ライファー(初めて見る鳥)」を撮るため過酷な旅も厭わないと言います。

ある旅では「6時間の列車、12時間の車、さらに2時間ラバに乗って」ヒマラヤモナルを撮影したこともあるそうです。

「特別なハチドリが現れたと聞いて、キト行きの航空券を買ったこともあります。財布にはほとんどお金が残っていませんでしたが、最終的に撮影に成功しました」

「本当に素晴らしい旅でした。ハチドリの場所に3日間滞在し、何度かチャンスもありました。最終日、彼が協力的になってくれて、その後また姿を消しました」

クラウディア・ブラジレイロさんが撮影したその他の鳥たち:

きらめくコケットハチドリ。(クラウディア・ブラジレイロ提供)
スパンコールハチドリ(写真提供:クラウディア・ブラジレイロ)
癜風ゴシキドリ。 (クラウディア・ブラジレイロ提供)
バーバット(色鮮やかな鳥)写真提供:クラウディア・ブラジレイロ
プレートクチバシを持つ山オオハシ。(クラウディア・ブラジレイロ提供)
プレートビルド・マウンテン・オオハシ(写真提供:クラウディア・ブラジレイロ)
七色のタナゴ。(クラウディア・ブラジレイロ提供)
七色タンガラ(写真提供:クラウディア・ブラジレイロ)
写真家がハチドリと撮った最近の写真。(クラウディア・ブラジレイロ提供)
ハチドリと一緒に写る最近の写真(写真提供:クラウディア・ブラジレイロ)

(翻訳編集 井田千景)

カナダのカルガリーに拠点を置くライター兼編集者。主に文化、人間の興味、トレンドのニュースについて執筆。