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40秒に1人が脳卒中 その8割は回避可能

アメリカでは、40秒に1人が脳卒中を発症しています。遠い話のように感じるかもしれませんが、これはアメリカで第5位の死因であり、長期的な障害の最大の原因でもあります。脳卒中は突然起こる急性疾患であると同時に、後遺症が残りやすく再発の危険も高いため、「慢性的な病」ともいえます。

しかし朗報もあります。脳卒中によって一度損傷した脳の細胞は元に戻りませんが、早期に適切な治療を受ければ、症状の進行を抑えたり、機能を回復させたりすることは可能です。そして何より重要なのは、脳卒中の多くが予防できるという事実です。実際、発症の8割以上は防ぐことができるのです。では、脳卒中という「脳の危機」をどう理解し、どう防げばよいのか、一歩ずつ整理していきましょう。

敵を知ることから始めよう:脳卒中の2つのタイプ

脳卒中には大きく分けて2つのタイプがあり、それを理解することが予防と治療の第一歩です。

① 虚血性脳卒中:血管が詰まるタイプ

発症割合:全体の約87%を占め、最も多いタイプです。

原因:脳へ血液を送る血管が血栓や動脈硬化によるプラークで詰まり、脳細胞が酸素不足で死んでしまうことで起こります。これは、脳へつながる「高速道路」が突然渋滞で完全に止まってしまうようなものです。特に、脳に血液を送る主要な血管である頸動脈の病変がよく見られます。

新しい発見:2024年に『ニューイングランド医学雑誌』に発表された研究では、マイクロプラスチックが危険な「共犯者」である可能性が示されました。研究チームは多くの頸動脈プラーク内にマイクロプラスチックを発見し、体内にマイクロプラスチックを持つ人は脳卒中のリスクがなんと4.5倍にも上ることを報告しています。

② 出血性脳卒中:血管が破裂するタイプ

原因:脳の中や表面の血管が破れて出血し、血液が周囲の脳組織に広がって血腫を作り、脳内の圧力が急激に上昇して脳細胞を直接傷つけます。主な原因は高血圧の管理不良であり、先天的に血管の構造に異常がある人も発症リスクが高いとされています。
 

緊急サインを見逃さないで!「F.A.S.T.」ルールで見分けよう

脳卒中の症状は、ある日突然現れます。早く気づくことが命を守る第一歩です。覚えておきたいのが、国際的に推奨されている救命の合言葉「F.A.S.T.」です。

F – Face drooping(顔の下がり):
相手に笑ってもらい、口角の片方が下がっていないか確認しましょう。

A – Arm weakness(腕の力の低下):
両腕を水平に上げてもらい、一方が下がってしまわないかを見ます。

S – Speech difficulty(言葉のもつれ):
簡単な言葉を言ってもらい、ろれつが回らない、または話せない様子がないか確認します。

T – Time to call 911(すぐに救急車を呼ぶ):
上記のどれか一つでも当てはまる場合は、ただちに救急車を呼び、症状が現れた時間を記録してください。
 

他にも注意すべき危険サイン:

次のような症状が突然現れた場合も、すぐに医療機関を受診してください。

  • 顔・腕・脚の片側がしびれる、または力が入らない
     
  • 意識がもうろうとする、言葉や状況が理解しにくくなる
     
  • 片目または両目が見えにくくなる、視界に黒い影が現れる
     
  • 歩きにくくなる、バランスを崩す、激しいめまいがする
     
  • 原因不明の強い頭痛がある

女性に多い「非典型的な症状」にも注意してください:

女性では、典型的な麻痺や言語障害が出ない場合もあります。突然の全身のだるさや顔・手足の痛み、しゃっくり、吐き気、胸の痛み、動悸、息苦しさなども脳卒中のサインであることがあります。違和感を覚えたら、すぐに医療機関を受診することが大切です。
 

治療よりも予防が大切:あなたは高リスク群ではありませんか?

脳卒中のリスクのうち、実に約9割は自分でコントロールできる要因によるものです。次のチェックリストを見て、あなたの生活に「危険サイン」がないか確認してみましょう。

① 自分で変えられる「生活習慣リスク」

不健康な習慣:喫煙(受動喫煙を含む)、過度の飲酒(男性は週14杯以上、女性は7杯以上)、覚醒剤やコカインなどの薬物使用。

食事と活動:高カロリー・高トランス脂肪の食事、炭酸飲料の過剰摂取、長時間座りっぱなしの生活。

睡眠とメンタル:6時間未満または9時間以上の睡眠、慢性的なストレス、不安、うつ状態、社会的孤立。

② 医療管理が必要な「健康状態リスク」

三高(高血圧・高脂血症・高コレステロール):これらは虚血性脳卒中の最大の引き金です。

心血管疾患:心房細動、鎌状赤血球貧血、頸動脈疾患などは血栓を作りやすくします。
 
その他の病気:糖尿病、閉塞性睡眠時無呼吸症候群なども危険因子です。
 
薬の影響:一部の経口避妊薬、ホルモン補充療法、抗凝血薬、抗うつ薬などは血液の凝固機能に影響を与える場合があります。

③ 注意が必要な「環境・新たなリスク」

環境汚染:大気中の微小粒子(PM2.5)への長期または短期的な曝露は血管を傷つけます。
 
マイクロプラスチック汚染:近年注目されている新しいリスク因子です。
 
新型コロナウイルス(COVID-19)感染:研究により、感染と虚血性脳卒中の発症リスクには強い関連があることが確認されています。

④ 変えられないが注意すべき「先天的リスク」

年齢と性別:55歳を過ぎるとリスクが倍増します。発症率は男性が高いものの、致死率は女性のほうが高い傾向にあります。

遺伝と家族歴:家族に脳卒中の既往がある人、あるいはCADASILのような遺伝性疾患を持つ人は要注意です。

人種と血液型:アフリカ系やヒスパニック系の人はリスクが高く、血液型ではAB型がO型よりもわずかに高い傾向があります。
 

あなたがコントロールできる80%:今日から始める予防計画

変えられない要因を心配するよりも、変えられる80%に集中しましょう。今日からできることがあります。

血圧・血糖・コレステロールの管理:医師と相談しながら、数値を健康範囲に保ちましょう。

脳に良い食事をとる:焼き魚や蒸し魚、大豆製品、野菜、果物、全粒穀物を中心とした食事は、脳卒中のリスクを21%減らすと報告されています。

定期的に運動する:週に150分以上の中強度の有酸素運動(速歩き、水泳、自転車など)を。太極拳やヨガもバランス感覚や気分の改善に役立ちます。

質の良い睡眠をとる:毎晩7〜9時間の睡眠を目標に。

シンプルで効果的な習慣:毎日デンタルフロスを使うことで、虚血性脳卒中のリスクが22%下がるという研究結果もあります。

 

もし脳卒中が起きてしまったら:命を救う「黄金の時間」と回復の道

万が一発症した場合でも、現代医療には多くの治療法があります。救急対応からリハビリまで、どの段階も命と生活の質を左右します。

① 黄金の3時間:急性期の治療

薬による治療

  • 虚血性脳卒中:発症から3時間以内に「tPA」という血栓溶解剤を投与するのが鍵です。アスピリンなどの抗血小板薬で再発を防ぐこともあります。
     
  • 出血性脳卒中:出血を止め、脳圧を下げることが最優先。降圧薬や凝血薬が使われます。

外科的治療

  • 虚血性脳卒中:血栓を取り除く「機械的血栓除去術」や「頸動脈内膜切除術」などで血流を回復させます。
     
  • 出血性脳卒中:動脈瘤クリッピングや開頭手術によって血腫を除去し、脳圧を下げます。

② 長期戦のリハビリ:新しい生活を取り戻す

回復には時間がかかりますが、あきらめないことが大切です。

最新技術の支援:神経リハビリ支援装置「Neurolutions」や「Vivistim」など、FDAが認可したデバイスは手の機能回復を助けます。

伝統・自然療法:

鍼灸:脳の血流を改善し、神経の再生を促すことが研究で確認されています。

生薬:高麗人参、黄耆、イチョウ葉などは回復をサポートする可能性がありますが、処方薬との併用は必ず医師に相談してください。

日常生活での脳トレ:クロスワードやチェスなどの知的活動は脳の回復に有効です。

心のケア:前向きで楽観的な気持ちは、うつの予防や生存率の向上にもつながります。

③ 後遺症と向き合う:現実の戦い

脳卒中の後には、片まひ、肩の痛み、嚥下障害、認知機能の変化、うつなど、さまざまな課題が残ることがあります。患者の約7割が情緒の変化を経験するといわれています。

この道のりでは、自分を責めず、家族や友人、心理療法士などの支援を積極的に受けることが、再び立ち上がるための最大の力になります。

医学的レビューと事実確認:ジミー・アーモンド医師
(翻訳編集 華山律)

健康記事を担当するエポックタイムズ記者。