黄千峯医師(大紀元/大道修)

「無関心が被害を拡大させる」 中国で続く強制臓器収奪 日本の制度の遅れに警鐘=台湾国際器官移植関懐協会 副会長

中国で行われている強制臓器収奪の問題は、長年にわたり国際社会の深刻な懸念となってきた。

台湾は2015年、「人体器官移植条例」を大幅に改正し、台湾海峡をはさんだ対岸の隣国、中国での違法移植を受けた自国民に対しても処罰が可能となる域外適用を導入した。

それは、中国の医療システムで大量の臓器源が供給され続けている異常な状況を前提に、台湾社会が他国の非人道的行為に加担しないという倫理的立場を明確に示すものでもある。今回、台湾の立法過程、中国での強制臓器収奪の実態、さらに日本が抱える潜在的リスクについて、台湾で中国の強制臓器収奪の問題に携わっている黄千峯医師に取材した。

台湾が導入した「域外処罰」の背景

台湾が臓器移植に関する法整備を急いだ理由は、2000年代以降、台湾人患者が大量に中国へ移植を受けに出向いた事にある。台湾の健保(国民健康保険)データベースによれば、当時、毎年100〜300人の台湾人が中国で移植手術を受けていた。

当初、中国政府は臓器源を「死刑囚」と説明していたが、後に、移植件数と死刑囚数が統計上整合しないことが判明。2006年にはカナダの人権弁護士デービッド・マタス氏とカナダ政府の前閣僚だったデービッド・キルガー氏が調査報告を出し、結果、臓器源の相当部分が、法輪功学習者をはじめとする「良心の囚人」である可能性を指摘。さらに2016年には新疆ウイグル自治区で拘束されている住民からの強制摘出である可能性も指摘した。

台湾社会はこの問題に強い反応を示した。20万人以上の国民署名、5千人の医師の連署が集まり、政府に対し法整備と倫理的対応を迫った。当時の台湾の健康保険は、中国で移植を受けた患者に帰国後、免疫抑制剤を支給していたため、「人権侵害に加担した手術を受けた患者に公費を投入するのは不合理だ」との批判が広がった。

この結果、2015年の「人体器官移植条例」改正では、違法な臓器売買に加担した者への刑事罰の強化、海外で移植を受けた場合の情報登録義務、登録なき患者への健保支給停止といった厳格な制度を導入した。

台湾がこの法改正に踏み切ったのは、「違法移植を阻止」するためだった。

中国で何が起きているのか

取材に応じた黄医師は、中国の臓器移植システムの実態を次のように説明。

「当初、人々は臓器源が死刑囚に限られると思っていた。しかし実際には、法輪功学習者、ウイグル族、その他の良心の囚人、さらには一般市民にまで対象が広がっている可能性がある」

近年、中国国内でも「突然病院で死亡し、臓器が摘出された後に火葬され、家族に説明がなされない」という事例が報告されている。

また黄医師は臓器にとどまらず、皮膚、骨格など医療用途の人体組織まで産業チェーンに組み込まれており「臓器移植に関係のない一般の日本人であっても、医療現場で使用する人体由来製品を通じて、知らぬ間にこの産業に関与している可能性が高い」と語る。

日本が被害国になり得る

日本も台湾同様、臓器提供が慢性的に不足している。移植を希望する患者の待機期間は長く、海外渡航移植へ依存する部分が一定数存在する。しかし日本では、海外移植における臓器の出所を問う制度がほとんど存在せず、域外処罰の法制度も整備できていない。

黄医師は日本の状況について次のように述べている。

「日本では、この問題を真に表面化して議論していない。多くの日本人は、中国で行われている人権侵害の深刻さを理解していても、『生きた状態での臓器摘出』という実態を想像しにくい。しかし、この無関心が被害を拡大させる」

「もし日本が法律的な障壁を設けなければ、臓器売買の犯罪は国境を越えて広がり、日本が次の被害国になる可能性が高い」

日本が強制臓器収奪のターゲットとなる理由は、臓器提供不足、海外移植への依存、医療倫理をめぐる法制度の不備にある。

黄医師は台湾人がカンボジアで詐欺に遭い、生きたまま臓器を摘出される寸前だった事件が実際に存在すると述べ、「この問題はもはや中国だけの話ではない」と警鐘を鳴らす。

問題を直視しなければならない時が来ている

中国では、拘束されている人々が拷問を受け、臓器と身体組織が国際市場へ流出する構造が存在すると指摘され続けている。話者は「この医療を犯罪とする殺戮を止めるためには、国際社会が関心を持つことが不可欠である」と訴える。

台湾は法整備によって国内の加担を防ぎ、臓器移植の倫理基盤を守ろうとしている。一方、日本では、臓器移植の不足と制度の遅れが、国際的な人権侵害との接点を生み出す潜在的リスクとなっている。

中国の強制臓器収奪の問題は、医療倫理の次元を超え、国家の安全保障、国際人権、そして国民の生命の問題といえる。台湾の立法過程が示すように、社会全体の認識と議論がなければ、制度は前進しない。

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