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ほてり・腰痛にも? 広がるガバペンチン処方と注意点

ほてり、腰痛、不眠――これらの症状に共通する点は何でしょうか。近年、こうした症状に対して、同じ処方薬であるガバペンチンが用いられるケースが増えています。

この抗てんかん薬は、てんかん発作の患者が急増したわけではなく、医師がアメリカ食品医薬品局(FDA)の承認を受けていない用途、いわゆるオフラベルで数多く処方していることにより、静かに全米で5番目に多く使われる薬となりました。

現在では、依存性や長期的な認知機能への影響を懸念する声も高まり、専門家の間では、この薬の使用について、より慎重な監視が必要かどうかが議論されています。
 

ガバペンチン処方が急増

ガバペンチンは、部分発作と帯状疱疹後神経痛の2つの疾患に対してFDAの承認を受けています。また、徐放型製剤であるガバペンチン・エナカルビル(商品名ホリザント)は、2011年に成人の中等度から重度のむずむず脚症候群の治療薬として承認されました。しかし実際には、ほてりから腰痛まで、さまざまな症状に対してオフラベルで広く処方されています。

こうしたオフラベル使用については、最近、アトランタの疾病対策センター(CDC)の研究者によって詳しく分析されました。医学誌『Annals of Internal Medicine』に掲載された研究によると、ガバペンチンの調剤率は2010年から2016年にかけて約2倍に増加し、その後2016年から2024年にかけても、増加ペースは緩やかになったものの、引き続き上昇傾向にあることが示されています。

ガバペンチンの調剤は高齢者で特に多く、現在も増加しています。研究者たちは、その背景として、65歳以上の人に多い原因が特定しにくい痛みや、さまざまな症状に対するオフラベル処方の増加を挙げています。

またCDCの研究者は、今回使用したデータが、小売薬局以外での処方(病院、長期ケア施設、郵送薬局など)を含んでいない点を指摘し、実際にはガバペンチンの使用頻度は、さらに高い可能性があるとしています。
 

ガバペンチンが役立つ場合

人々がガバペンチンを服用する最も多い理由は痛み、特に腰痛だと、今回の研究には関与していないToolBox Genomicsの創設者で最高医療責任者を務める薬剤師、エリカ・グレイ氏は述べています。

「次に多いのが睡眠障害です」と、彼女は続けます。

ウィスコンシン州在住の引退した実業家ロジャー・パソウ氏は、強い脚の痛みと脱力感により、睡眠や歩行が困難になりました。X線検査でも明確な原因は見つからず、主治医からは「対応が難しい」と告げられ、整形外科専門医からも「この症状と付き合っていくしかない」と言われたといいます。

診断が確定しない中で、痛み専門医から夜間に600mgのガバペンチンが処方されました。十分な効果を感じられなかったため、用量は900mgに増量されました。「薬を飲んでいても、痛みが残る夜はあります。ほとんど一晩中です。本当に辛い」と、パソウ氏はエポックタイムズに語っています。長期的な影響への不安はあるものの、他に有効な選択肢が見つからず、服用を続けているそうです。

研究結果から、ガバペンチンは特定のオフラベル症状に対して役立つ場合があることが示唆されていますが、症状によっては、他の薬剤の方が適しているとされるケースもあります。

ガバペンチンが一定の効果を示す可能性があるとされる症状には、次のようなものがあります。

  • 糖尿病関連の神経障害:2025年の研究では、糖尿病性末梢神経障害による痛みを軽減する可能性が示されましたが、プレガバリンやデュロキセチンほどの効果は確認されていません。
     
  • 神経性疼痛:2025年の系統的レビューでは、神経痛の軽減が報告されましたが、プレガバリンの方が効果は高いとされています。
     
  • 原因不明の慢性咳:2023年に行われた6つの研究(参加者536人)の解析では、難治性の慢性咳に対して一定の有用性が示され、同系統の薬より安全性が高い可能性が示唆されました。
     
  • アルコール使用障害:飲酒を完全に止める効果は明確ではありませんが、一部の研究では、重度の飲酒日数がプラセボと比べて減少したと報告されています。
     
  • ほてり:2020年のメタアナリシスでは、服用した女性で、ほてりの回数や持続時間が短くなったと報告されています。ホルモン補充療法を受けられない、または望まない女性の代替選択肢として検討されることがあります。

一方で、双極性障害や不眠症に対しては、十分な有効性を裏付ける証拠は乏いとされています。2021年に『Molecular Psychiatry』に掲載された系統的レビューでは、これらの症状に対する明確な効果は確認されませんでした。

全体として、インディアナ州エバンズビルのDeaconess Health Systemで神経科主任を務める認定神経科医、ルーク・バー博士は、エポックタイムズに対し、ガバペンチンを処方する前に、理学療法などの非薬物療法を試したり、睡眠の問題や炎症、個々の生活背景を検討したりすることが重要だと述べています。
 

オフラベル使用がなぜこれほど広まったのか?

ガバペンチンの現在の広範な使用を理解するには、過去の問題と、現実の臨床ニーズの両面を見る必要があります。

1990年代後半、ガバペンチンを「ニューロンチン」という商品名で販売していた製薬会社ワーナー・ランバートの子会社パーク・デイビスは、ADHD、疼痛障害、片頭痛など、承認外のさまざまな疾患に対して積極的なマーケティングを行っていました。

同社はまた、医師に対して「コンサルタント会議」への参加名目で高級な食事を提供したり、オフラベル使用を紹介する講演付きの会合に報酬を支払ったりしていたと、アメリカ司法省は指摘しています。2004年、内部告発を受けた訴訟の結果、同社は承認外用途に関する違法かつ不正な販売促進を認め、罰金および民事損害賠償として4億3000万ドルを支払うことで和解しました。

ただし、20年前の製薬スキャンダルだけでは、現在の処方状況をすべて説明できません。ガバペンチンの処方増加には、他にも複数の要因が関与しています。

バー博士によると、医師がガバペンチンを選びやすい理由の一つは、三環系抗うつ薬などの古い薬に比べ、副作用が比較的少ないと認識されている点にあります。

また、慢性痛の治療において、依存性の高い合成オピオイドではなく、ガバペンチンを選択する医師が増えています。オピオイドは深刻な依存問題を引き起こし、2024年だけでも5万4000人以上が過量摂取で亡くなったとされています。そのため、患者側もオピオイド以外の選択肢を求める傾向が強まっています。

さらに、薬価が比較的低く、一部の症状に対して効果が期待されている点も、処方増加の要因と考えられています。

「これらの要因が重なり合い、オフラベル使用が受け入れられやすい環境が生まれ、場合によっては十分な監視が行われないまま使用されていることもあります」と、バー博士は述べています。

また、適切な治療選択肢が限られていることも、オフラベル処方が増える一因です。グレイ氏によると、多くの人にとってガバペンチンは、完全ではなくとも一定の痛みの軽減をもたらし、日常生活を何とか送れる状態に戻す助けになっている場合があるといいます。
 

リスクを理解する

研究によると、ガバペンチンを処方された人のうち、有意な痛みの軽減を実感できるのは半数未満にとどまり、副作用や有害事象を経験する可能性が比較的高いことが示されています。

2019年、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、ガバペンチンを特定の薬と併用した場合、重い呼吸障害や死亡のリスクが高まる可能性があるとして、患者と医師に警告を出しました。ルーク・バー博士は、オピオイドやベンゾジアゼピン系薬と併用していた患者で、過度な鎮静や呼吸障害が見られ、一部では救急治療が必要になったケースもあったと語っています。

「この相互作用は、最も重要な安全上のメッセージの一つです」と、バー博士は強調します。

高齢の患者の中には、めまいやふらつきといった一般的な副作用により、転倒したり、車の運転を控えたりするようになった人もいます。バー博士はまた、他の薬の副作用を抑えるためにガバペンチンが追加され、根本的な原因が解決されないまま処方薬が増えていく悪循環が生じるケースもあると指摘しています。

エリカ・グレイ氏によると、用量そのものがリスクになる場合もあります。「ガバペンチンで特に懸念されるのは、処方医が高用量まで増量してしまう点です。これは高齢者や多剤併用の患者で特に問題になりやすい」と彼女は述べています。「また、ガバペンチンは腎臓で排泄されるため、加齢に伴う腎機能の低下も考慮する必要があります」

グレイ氏は、患者の腎機能が低下しているにもかかわらず、用量が適切に調整されていないケースを多く見てきたとも語っています。
 

依存の可能性

ガバペンチンによる依存は、オピオイドやベンゾジアゼピン系薬と比べると少ないとされていますが、他の薬やアルコールを併用している人、オピオイド使用障害のある人ではリスクが高まる可能性があります。そのため、一部の州ではすでに、乱用・依存リスクが比較的低いものの管理が必要なスケジュールVの規制物質に指定されています。

「より高用量を求める要求や、医療目的以外で使用している兆候を見たことがあります」と、バー博士は述べています。

また、数か月にわたって高用量を服用していた患者が、急に中止した際に、不眠や不安、まれに発作などの離脱症状を経験した例もあったといいます。

ガバペンチンには離脱症状のリスクがあるため、医師は通常、不快な症状を抑える目的で、徐々に減量する方法を勧めます。認定救急・依存医学医師で、Nashville Addiction Recovery、Belle Mede AMP、Recovery Nowの創設者であるロジャー・スターナー・ジョーンズ・ジュニア博士は、離脱症状が最長で10日ほど続く可能性があると、エポックタイムズに語っています。

スターナー・ジョーンズ博士は補足として、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)の点滴が、薬物依存患者の離脱症状を和らげ、渇望感を抑える助けになる可能性が示されていると述べています。
 

ガバペンチンのさらなる研究が必要

てんかん発作の治療に関する初期の研究では、ガバペンチンは比較的安全で有効性があり、忍容性も良好とされてきました。2013年の論文では、帯状疱疹後神経痛の治療において、長期使用による大きな安全性の問題は見つからなかったと報告されています。

しかし、近年の研究では、長期使用が記憶障害のリスクを高める可能性が示唆され、新たな懸念も浮上しています。医学誌『Regional Anesthesia & Pain Medicine』に掲載された観察研究では、10年間に6回以上ガバペンチンを処方された65歳未満の腰痛患者は、服用していない人と比べ、認知症や軽度認知障害のリスクが2倍以上高かったと報告されています。

ロジャー・パソウ氏は、3年間ガバペンチンを服用した後、MRI検査によってようやく痛みの本当の原因が判明しました。それは、重度の関節炎、椎間板ヘルニア、そして脚へ向かう神経を圧迫する椎骨の問題でした。現在は、影響を受けている神経へのステロイド注射治療を待っており、それで効果が得られなければ、手術も選択肢になる可能性があります。

パソウ氏のケースは、より広い問題を示しています。ガバペンチンが、本来であれば別の標的治療によって改善が見込める患者にとって、長期的な「代替策」となってしまうことがある点です。彼は3年間、ほとんど効果を感じられない薬を毎日服用し続けていましたが、実際には、より適した治療法が存在していました。現在は、ステロイド注射によって痛みが軽減し、「これ以上、薬を飲まなくて済むようになること」を願っています。

パソウ氏の妻も、似た経験をしています。原因不明の頭皮の痛みに対して医師からガバペンチンを処方されましたが、「怖くて飲む気になれませんでした。少し試しましたが効果がなく、すぐにやめました」と語っています。その後、薬ではなく、単純な頭皮マッサージによって症状が改善したことが分かりました。

(翻訳編集 日比野真吾)