北村晴男議員(動画のスクリーンショット)

中国への移植ツーリズム巡り国会で質疑 「知らずに殺人加担」する危険性が指摘

中国への「移植ツーリズム」を巡り、18日、参議院行政監視委員会で日本人患者による中国渡航移植の実態や、政府の周知啓発の在り方について議論が行われた。

日本保守党の北村晴男議員は、中国ではウイグル人やチベット人、法輪功学習者らが大規模に強制収容され、DNA情報が管理されているとしたうえで「必要に応じて強制的に臓器を収奪する体制が整えられている」と指摘した。また、中国での臓器移植はドナー待機期間が他国に比べ極端に短いとされ「臓器の収奪は多くの場合殺人を伴う」と述べた。

中国による臓器収奪問題については、国連人権理事会で報告されているほか、ルビオ米国務長官もホワイトハウスで事実との認識を示していると説明した。

米連邦上院議員だった頃から、中国における生体臓器収奪を問題視してきたルビオ国務長官は5月5日のホワイトハウス記者会見でも、先日のトランプ大統領訪中を前に、強制臓器収奪を含む中国の人権侵害が「政権にとって引き続き重要な優先事項である」と確認していた。長官は「我々は常にこれらの問題を提起しており、今後も適切な場で提起し続ける」と述べていた。

北村議員に臓器を受けるために渡航した日本人の数を問われた厚労省の坂木原審議官は、中国における臓器移植の実態を網羅的に調査しているわけではないとしつつ、令和5年に厚生労働科学研究費補助金による研究班と連携し、海外で渡航移植を受けた患者の実態調査を実施したと応え、調査によると、令和5年3月31日時点で移植後に外来通院している患者3万1684人のうち、中国で渡航移植を受けた患者は175人だったと述べた。

北村議員は、中国への渡航移植の問題が「非常に重要な問題」であるとして、今後も最新の実態把握に努めるよう求めた。また、中国で移植を受けた日本人が帰国後に実態を知り、「自分が助かるために他人を死なせてしまった」と精神的苦痛を抱える事例があると紹介した。

そのうえで、厚労省が公開している移植ツーリズムに関する啓発動画について、「再生回数が2千回程度と少ない」と指摘し「内容も極めて不十分」と批判した。動画では臓器売買の違法性や渡航先医療機関の危険性には触れている一方、「強制的な臓器摘出や人身取引を助長し、知らずに殺人に加担してしまう可能性」について説明がないと問題視し、内容の見直しと啓発強化を求めた。

また、昨年の法務委員会で提案した空港の出国審査場などでの広報についても質問した。これに対し榊原毅審議官は、出入国在留管理庁と連携し、空港などで普及啓発資材を掲示する予定だと説明。現在、啓発資材の作成に着手しており、「臓器取引や移植ツーリズムのリスクも含めた、臓器移植に関する正しい理解に資する情報発信に努めていきたい」と述べた。

北村議員はこれを評価しつつ、「移植ツーリズムに参加する方は自身の健康を回復したいという当然の思いに基づいている」と述べ、単なる注意喚起だけでは不十分との認識を示した。そのうえで、「中国で臓器移植を受ければ殺人に加担する可能性も相当ある」ことを十分認識できるような広報にすべきだと訴えた。

さらに質疑では、2015年に中国で腎臓移植を受けた患者が帰国後に浜松医大病院を受診した事例にも言及した。同病院ではイスタンブール宣言に基づき、中国で臓器移植や臓器ブローカーが関与した移植を受けた患者への診療を行わないとの申し合わせがあり、治療継続ができないと患者に伝えたという。

患者側はこれを医師法第19条の応召義務違反として提訴したが、地裁、高裁ともに請求は棄却された。

北村議員は、「臓器収奪に加担しないために診療を拒否した結果、医師法違反に問われるという事態は極めて不適切」と述べ、国としてイスタンブール宣言を推進するための指針やガイドラインを示すべきだと主張した。特に、どのような場合に応召義務違反に当たらないかを明確化する必要性を訴えた。

これに対し榊原審議官は、イスタンブール宣言では各国が自国における移植医療の自給自足に努めるべきとされていると説明した。そのうえで、厚労省は臓器移植法の運用指針において、「イスタンブール宣言に則り国内における臓器移植を推進することが重要」であり、「臓器あっせん機関を介さない臓器移植を行ってはならない」と明記していると答弁した。

また、医師法上の応召義務についても、通知で「診療の求めに応じないことが正当化される具体的事例等」を示しているとし、「引き続きこのような指針等の周知に努めていきたい」と述べた。

北村議員は最後に、「医師の方が安心してイスタンブール宣言に従った行動を取れるように、厚生労働省が緻密なガイドラインを示してほしい」と求め、質疑を締めくくった。

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