消費税減税 赤字国債に頼らず財源確保へ 片山財務相 日本版DOGEにも言及

2026/08/07 更新: 2026/08/07

政府が8月5日の臨時閣議で決定した「給付付き税額控除」の基本方針は、物価高への対応に加え「年収の壁」に伴う働き控えを解消し、現役世代の手取りを増やすことを目指す制度改革となっている。

本格導入は令和11年度を予定している。それまでのつなぎ措置として、来年、令和9年4月1日から2年間、飲食料品の消費税率を現行の8%から1%へ引き下げる。所得情報を活用した給付も組み合わせ、飲食料品にかかる消費税負担を実質的にゼロにする方針だ。

片山さつき財務相は6日の閣議後の会見で、外税表示において消費者が本体価格に敏感になるため事業者が値上げをしにくく、税率が1%に下がることで減税分が消費者に還元されやすくなるとの見方を示した。

一方、仕入れ税額控除の還付を受けられない農業従事者らへの対応や、外食産業への影響を見極めた上での資金繰り支援策など、制度設計には課題が残る。最大の焦点は、減税によって生じる年間約5兆円の減収をどのように埋めるかである。

赤字国債に頼らず財源捻出へ

政府は財源確保に当たり、特例公債、いわゆる赤字国債には頼らない方針を掲げる。補助金や租税特別措置、税外収入をゼロベースで精査し、市場の信認を維持しながら必要な財源を確保する考えである。

その司令塔となるのが、内閣官房に設置された「租税特別措置・補助金見直し担当室」通称「日本版DOGE」である。自民党と日本維新の会の連立政権合意に基づいて設立され、片山財務相を主管として約30人で構成される。

米国のDOGEが政府組織の統廃合や「小さな政府」を志向したのに対し、日本版は既存予算や税制優遇の内容を精査し、成長投資や減税の財源を生み出す「財政基盤の整備」に重点を置いている。

政府の意見募集には約3万7千件が寄せられた。片山氏は国民から寄せられた意見を行政に対する監視圧力として活用し、自身のXなどを通じて見直しの状況を発信する方針だ。省庁が抵抗した場合には公開討論も辞さない姿勢を示している。

各省庁の120項目では廃止方針は1件

しかし、各省庁による自主点検では、改革の難しさが浮き彫りとなった。13府省庁の計120項目を点検した結果、明確に廃止方針が示されたのは、経済産業省の「事業再編登録免許税軽減」の1件だけであった。

この制度は導入以来の利用実績がゼロであり、廃止しても財源捻出の効果はほとんどない。約5兆円の財源が必要とされる中、実質的な削減額は極めて限定的である。

一方、約111万社が利用する中小企業向けの法人税軽減措置については維持する方向が示された。こども家庭庁は結婚・子育て資金の一括贈与に対する非課税措置について「延長を慎重に検討する」として事実上の制度終了を示唆し、農林水産省も利用実績の乏しいスマート農業関連税制の廃止を見送った。

片山氏は会見で自主点検の結果について、7月7日の閣議後記者会見で「査定官庁として是認できるものではない」と批判した。各省庁に自ら制度の必要性を点検させる手法が、結果として現状維持につながった形である。

特例公債頼みを否定、税外収入と外為特会剰余金を「ソリッドに活用」

政府は財源確保に当たり、市場の信認を守るため、特例公債(赤字国債)には一切頼らない方針を重ねて示している。8月5日の臨時閣議後記者会見において片山財務相は、日本版DOGEによる補助金や租税特別措置(租特)の削減のみに頼るのではなく、歳出歳入のあらゆる手段を組み合わせる考えを改めて強調した。

具体的には、今年度において約9兆円規模に上る「税外収入」について、さらなる歳入確保に向けた取り組みを「ゼロベースで進める」と言明した。さらにこれに加える形で、外国為替資金特別会計(外為特会)の剰余金の活用にも言及。外為特会は為替や金利の変動に左右されやすい性質があるものの、これまでも防衛財源等に一部活用してきた実績を挙げ、「ある程度ソリッド(堅実)に活用されている現実がある」と指摘した。

片山氏は、こうした多様な歳入歳出改革を通じて必要な財政需要に個別に対応する計画を進めており、財源確保について「我々は確信を持っている」と自信をのぞかせた。今後は市場の財政悪化懸念を払拭するため、市場関係者に対してもこうした方針を丁寧に説明し、信認を確保していく構えだ。

独立機関やAI評価を提言

野村総合研究所の木内登英氏は、省庁の自主点検による成果は「限りなくゼロ」と指摘し、省庁から独立した強い権限を持つ第三者評価機関が必要だと論じている。

東京財団政策研究所は、民主党政権時代の「事業仕分け」による削減額が1兆6千億円にとどまった教訓を挙げる。

その上で、個別事業の是非を判断する絶対評価から、目的が類似する事業をAIでコード化して効率を比較する相対評価への転換を提案している。さらに、見直しを閣議決定に基づく実施計画とし、拘束力を持たせなければ5兆円の捻出は困難だと指摘する。

政府が「廃止1件」にとどまった自主点検をどこまでやり直し、12月の予算編成と税制改正大綱の決定までに、基金や租税特別措置へ踏み込めるかが問われている。消費税減税を実現しながら財政の信認を維持できるか、日本版DOGEと片山財務相は約5兆円の財源確保という難題に直面している。

エポックタイムズの記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。他メディアが報道しない重要な情報を伝えます
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