ジェニファー・ジェニングスさんは、新品の服のパリッとした見た目と、清潔で爽やかな着心地が大好きです。しかし実際のところ、その新品の服は彼女の肌にとって決して優しいものではありませんでした。濃く染色された衣類は、まるでスポンジのように肌へ染料が染み出し、店頭に並ぶほとんどすべての新品の服で肌が熱を帯びて赤くなります。そして最終的には大量の汗をかくようになります。
「素材が何であっても関係ありません。私は新品の服に対して明らかに過敏な反応を起こします」と、彼女はエポックタイムズに語りました。
しかし、ジェニングスさんは決して珍しい存在ではありません。新品の衣類に反応を示す人は少なくありません。そして、多くの人が気付いていないのは、オンラインで購入した服や古着も含め、すべての衣類には目に見えない刺激物が潜んでいる可能性があるということです。
新品の服には「見えない履歴」がある
服がこれまでどこに保管され、どのような処理を受け、いつ包装され、その包装材には何が使われ、誰が触れてきたのか──そうした履歴を知ることはできません。クリーブランド・クリニックの皮膚科医、シルピ・ケーターパル医師はエポックタイムズにそのように語りました。
さらに、衣類には製造工程のあらゆる段階でさまざまな化学物質が加えられます。その始まりは洗浄工程です。ノースカロライナ州立大学で繊維科学を教えるカレン・レオナス教授は、羊毛や綿などの天然素材には汚れや汗が付着しているため、それらを除去する必要があると説明しています。
「かなり強力な化学処理が施されます」と彼女は言います。「その後も糸の製造や生地の製造工程で、漂白や界面活性剤を使った精練(不純物を取り除く工程)が行われます」
敏感肌の人の場合、漂白剤に含まれる次亜塩素酸ナトリウムや過酸化水素は皮膚のバリア機能を損なうことがあります。また、洗剤に含まれる香料も刺激になる可能性があります。しかし、より問題視されるのは仕上げ加工に使用される化学物質です。
衣類は通常、染色されるだけでなく、撥水、防炎、抗菌、防しわ、柔軟性を持たせるなどの目的で化学加工が施されることがあります。こうした化学物質の一部は洗浄で落ちますが、一部は効果を持続させるために生地に残るよう設計されています。
特に問題となるものの一つが、しわになりにくくするために使われるホルムアルデヒド系樹脂です。近年は使用量が制限されていますが、現在でも使用されています。また、ヨーロッパでは衣類への使用が禁止されているアゾ染料は、衣類を扱う作業者や着用者に皮膚炎を引き起こすことが知られています。
学術誌『Current Treatment Options in Allergy』の総説では、「アゾ染料は安価で使用しやすく、幅広い色を表現できるため、最も一般的な染料群となっています。しかし、繊維には完全には結合せず、一部が遊離した状態で残るため、アレルギー反応を引き起こしやすいと考えられています」と説明されています。
子ども用パジャマなどに使われる難燃剤は、ホルモンの働きを乱す可能性があり、動物実験では神経毒性があるとされています。
さらに近年では、「永遠の化学物質」とも呼ばれるPFAS(有機フッ素化合物)への懸念も高まっています。PFASは衣類に防汚加工を施し、長持ちさせる目的で使用されています。
レオナス教授は、生地に余分な化学物質が残っていることは珍しくないと話します。
「十分にすすがれていないことがよくあります」
また、とくに海外で製造された衣類は長い流通経路をたどるため、店頭に並ぶまでに多くの人の手を経由します。ほとんどの衣類はバックヤードや倉庫、工場などで保管され、その間に汚れや細菌、ほこり、カビが付着する可能性があります。
店頭では試着され、更衣室の床に置かれ、踏まれ、再びハンガーに掛けられることもあります。着用後に返品された商品である可能性もあります。製造から販売までの間に衣類へ触れたすべての人が、少なからず微生物を生地へ移していることになります。
誰でも反応する可能性がある──特に注意が必要な人
新品の衣類による影響を受けやすいのは、乳児や幼児、年間を通して厳しい気候の地域で暮らす人、発疹やアレルギー反応を起こしやすい人です。
新品の衣類に含まれる化学物質で最も懸念されるのは皮膚炎です。皮膚炎は激しいかゆみ、赤み、腫れ、乾燥などを引き起こす炎症です。遺伝や免疫機能の過剰反応、皮膚バリア機能の低下が組み合わさって起こるアトピー性湿疹も皮膚炎に含まれます。
「症状が悪化した理由や、なぜ急に湿疹がひどくなったのか分からない人もいます」とケーターパル医師は話します。皮膚トラブルを起こしやすい人であっても、新しい服が原因だとはあまり考えられないことが多いそうです。
普段から買った服を洗わずにそのまま着ている人に対して、ケーターパル医師は警鐘を鳴らしています。
「これまで平気だったものにも、肌が敏感になることがあります。肌は年齢とともに変化しますし、皮脂の分泌量も減っていきます」
皮脂はワックス状の油分で、肌を覆って保護する天然のバリアです。水分を閉じ込め、有害な細菌や刺激となる化学物質の侵入を防ぐ役割があります。
寒い季節や寒冷地では皮脂の分泌が低下しやすく、肌本来の防御力が弱まることがあります。
ホルムアルデヒドや染料には発がん性との関連も指摘されています。ただし、衣類による発がんリスクは、日常生活で接触する他の化学物質を含めた長期間の累積曝露が関係すると考えられています。
着る前に正しく洗うことが大切
対策はとてもシンプルです。新品の衣類だけでなく、シーツやタオルも使用前に洗いましょう。
洗濯によって余分な化学物質を洗い流しながら、生地にしっかり定着している加工剤は本来の効果を維持できます。
衣類を長持ちさせるには冷水で洗うのがおすすめです。洗剤と組み合わせれば、熱いお湯だけで洗うよりも化学物質を落としやすくなります。また、鮮やかな色落ちを防ぎ、生地の劣化も抑えられます。
実は、洗剤選びも多くの人が思っている以上に重要です。香料入りの洗剤は避けた方がよいとケーターパル医師は言います。香料は肌の水分を奪いやすく、皮膚バリアを弱めて刺激に敏感にすることがあるためです。
「私たちはいつも無香料、あるいは『フリー&クリア(香料・着色料無添加)』タイプの洗剤をおすすめしています。香料やその他の刺激物を肌に加えないためです」
乾燥機用シートも、できるだけ化学物質を含まない製品を選ぶべきだとしています。
ビーズや刺繍などの装飾が付いた衣類は裏返して洗うと傷みにくくなります。また、濃い色に染められた衣類は色移りを防ぐため単独で洗うのがおすすめですが、それ以外の新品の衣類は他の洗濯物と一緒に洗っても問題ありません。
コートや、衣類の上から着るセーターなどのアウター類は、肌に直接触れないため比較的リスクは低く、多くの場合は洗濯を後回しにしたり、省略したりすることもできます。
化学物質と免疫システムの複雑な関係
近年、新品の衣類による皮膚トラブルが増えている背景には、さまざまな業界で使用される化学物質の増加と、本来免疫システムが接するべき健康的な細菌への曝露が不足していることが関係している可能性があると、ケーターパル医師は考えています。
健康な皮膚常在菌(皮膚に存在する善玉の微生物)のバランスは、皮膚トラブルを防ぐ最前線の防御機能です。そのため、漂白剤や抗菌製品ではなく、石けんと水で洗うことが推奨されます。抗菌製品は有害な細菌だけでなく、有益な細菌まで取り除いてしまうことがあります。皮膚表面の健康な細菌は、炎症や皮膚障害を引き起こす細菌の増殖を抑えてくれます。
また、免疫システムは体の内側からも影響します。腸内細菌叢(腸内フローラ)の多様性が高く、有益な細菌が豊富であることは皮膚炎の予防につながる可能性があります。色とりどりの野菜や果物を豊富に含む健康的な食事を心掛け、特に幼少期には抗生物質の使用を必要以上に避けることで、皮膚炎になりやすい体質を改善できる可能性があります。
一方で、レオナス教授によると、繊維製品に残る余分な化学物質は以前より減少してきています。技術の進歩によってメーカーは必要な量だけを正確に使用できるようになり、無駄やコストも削減されています。
それが実際に皮膚トラブルの減少につながるかどうかはまだ分かりません。しかし、繊維用染料によるアレルギーは十分に多く見られるため、現在では皮膚パッチテストの対象にも含まれています。
「化学物質の管理は以前より改善されていますが、それでも含まれている製品がなくなるわけではありません。肌に触れる可能性のある残留化学物質を減らすためにも、着る前に洗うことは常に良い方法です」と彼女は話しています。
ジェニングスさん自身は、新品の服に対して強く過敏な反応を示す一方、夫や子どもたちにはこれまで同様のトラブルは見られていません。それでも、その習慣は今では家族全員にとって当たり前になっています。試着室で服を試しただけで強い反応が出てしまい、気に入った服でも購入を諦めることがあるそうです。
それでも、そのひと手間には十分な価値があると言います。
「原因が何なのかは正確には分かりません。どんな素材でも起きるからです。でも、着る前に洗うしかないと決めました。靴下でさえ、すべて洗ってから使っています」
(翻訳編集 井田千景)
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