処暑、体は静かに新しいサインを出し始めます

梨 × 白きくらげのスープ  乾燥を潤し、余分な熱を冷ます【薬膳一品】

処暑を過ぎると、暑さは少しずつ退いていきます。

ただ、この時季には次のような変化を感じる人も少なくありません。

  • 肌や唇が乾燥しやすい
     
  • 喉が少しかゆく、時々乾いた咳が出る
     
  • 以前ほど暑くないのに、なんとなく元気が出ない

中医学では、これは「乾燥の影響が肺に及んでいる状態」と捉えます。

処暑は、夏から秋へ移り変わる節目です。暑さはまだ残り、秋の乾燥はすでに始まっています。

肺は乾燥を嫌う臓腑です。乾燥の邪気は口や鼻から入りやすく、最初に影響を受けやすいのが肺や呼吸器です。

対策はとてもシンプルです。
乾燥を潤し、肺を養うこと。その第一歩として、一杯のやさしい甘いスープから始めてみましょう。
 

今日の主役:梨 × 白きくらげのスープ

これは、処暑の時季にとてもよく合う定番の食養生スープです。

食材は素朴で、作り方も簡単です。けれど、それぞれの食材が持つ薬膳的な意味を知ると、この一杯は肺を潤し、乾燥をやわらげ、陰を養って水分を補う「処暑の養生スープ」になります。
 

主役の食材|梨・白きくらげ・氷砂糖・クコの実

(Shutterstock)

性質:涼
味:甘、微酸
帰経:肺・胃

梨は、処暑を代表する食材の一つです。

体のうるおいを生み、喉の渇きを癒し、肺を潤して余分な熱を冷まし、痰や咳をやわらげる働きがあるとされています。

秋の乾燥による乾いた咳、喉のかゆみ、口の渇きには、梨はとても取り入れやすい自然な対策です。

加熱すると性質がより穏やかになり、胃腸が敏感な人でも食べやすくなります。

ミニポイント:梨は皮をむかずに使うのがおすすめ。梨の皮にも肺を潤す働きがあるとされ、皮ごと煮るとより季節に合った一品になります。

 

白きくらげ

性質:平
味:甘
帰経:肺・胃・腎

白きくらげは、「庶民の燕の巣」とも呼ばれる滋養食材です。

陰を養い、肺を潤し、胃を養って体のうるおいを生み、腎を補って体を支える働きがあるとされています。

植物性のゼラチン質を豊富に含み、体の内側からうるおいを補う食材として、秋の乾燥による肌の乾き、口の渇き、便秘などが気になる時期に向いています。

ミニポイント:白きくらげは、あらかじめ冷水で30分ほど戻しておきます。煮込むと、とろりとしたゼラチン質が出やすくなり、口当たりもなめらかになります。
 

氷砂糖

性質:平
味:甘
帰経:肺・脾・胃

氷砂糖は、肺を潤し、咳をやわらげ、中を補って気を養う食材とされています。

梨や白きくらげと合わせることで、味を整えるだけでなく、スープ全体の「肺を潤す」働きをやさしく引き立てます。

使いすぎず、ほんのり甘い程度に仕上げるのがおすすめです。
 

(Shutterstock)

クコの実

性質:平
味:甘
帰経:肝・腎・肺

クコの実は、肝と腎を養い、精を補い、目をすっきりさせ、肺を潤す食材とされています。

処暑の時季に加えることで、乾燥を潤しながら、夏に消耗した精気を少しずつ補う助けになります。

鮮やかな赤色が、淡い色合いのスープに映えるため、見た目のアクセントにもなります。
 

この一杯の薬膳的な組み立て

梨:涼性で甘酸っぱく、肺・胃に関わり、肺を潤して熱を冷まし、咳をやわらげ、うるおいを生みます。

白きくらげ:平性で甘く、肺・胃・腎に関わり、陰を養って肺を潤し、体にうるおいを補います。

氷砂糖:平性で甘く、肺・脾・胃に関わり、肺を潤して咳をやわらげ、全体の味を調和させます。

クコの実:平性で甘く、肝・腎・肺に関わり、精を補い、気を養い、肺を潤して目をすっきりさせます。

全体としては、肺を潤し、陰を養い、余分な熱を冷まし、体のうるおいを生み、乾燥をやわらげる組み合わせです。

 

作り方

材料 2人分

・梨 1個 約250g
・白きくらげ 乾燥 10g
・クコの実 大さじ1
・氷砂糖 20g ※好みで調整
・水 800ml

手順

  1. 白きくらげは冷水で30分ほど戻し、根元の硬い部分を取り除いて、小さめにちぎります。
  2. 梨は芯を取り、皮ごと乱切りにします。
  3. 鍋に水と白きくらげを入れ、強火にかけます。沸騰したら弱火にし、20分ほど煮込みます。
  4. 梨と氷砂糖を加え、さらに弱火で15分ほど煮ます。
  5. 最後にクコの実を加え、3分ほど煮たら完成です。
  6. 温かいうちに食べても、少し冷ましてから食べてもよいでしょう。
     

処暑の食養生、3つのポイント

1. 白い食材を多めに取り入れる

中医学では、白い色は肺に通じると考えます。百合根、白きくらげ、山芋、豆腐、梨など、処暑を過ぎたら白い食材を意識して取り入れることが、最も簡単な肺の潤し方です。

2. 辛いものを控え、肺の気を守る

辛いものは発散する力が強く、気を消耗しやすいとされます。秋の乾燥が始まる時季は、肺の気も弱りやすいため、辛いものを取りすぎると、乾いた咳や肌の乾燥を強めることがあります。

3. 温かく食べて、胃腸を守る

秋に入ると、胃腸も少しずつ弱りやすくなります。甘いスープは、できれば温かく食べるのがおすすめです。冷たい飲み物や冷たい食べ物で胃腸を冷やすと、せっかくの潤す働きも生かしにくくなります。

 

薬膳は、特別なものではありません。

梨と白きくらげを煮込んだ一杯のシンプルなスープこそ、処暑の時季にふさわしい、身近な食卓の養生です。

情報やモノが溢れる現代において、「人生」をテーマに発信する文筆家。趣味は季節の野菜を使ったシンプルな手料理と、スマホを置いて自然に触れること。