露は今夜から白し:白露の節気の変化に応える養生の道

「露従今夜白、月是故郷明(露は今夜から白くなり、月はわが故郷のほうが一段と明るいように思われる)」。杜甫のこの有名な詩句は、「白露」という節気が持つ趣と情感を表しています。

「白露」は通常、公暦9月7日から9日のあいだに到来し、節気が明らかに移り変わり、暑さが引いて、昼と夜の気温差が大きくなり、明け方には草木に白い露が大量に凝ります。

古人は「陰気漸重、露凝而白(陰の気が次第に強まり、露が凝結して白く見えるようになる)」と言い、まさにこの天候の縮図です。漢代の劉楨は「白露塗前庭、応門重其関(白い夜露が前庭を白く染めるほどに降りており、門番は秋の寒さを防ぐために、門のつなぎの横木を厳重に閉めている)」と言い、白露が来たら、寒さに備えて体を温めるようにと人々に呼びかけています。

それでは、日々の暮らしのさまざまな場面で、どのようにこの変化に応じて体を整えていけばよいのでしょうか。
 

「白露」の変化に応える養生

白露の節気を迎えると、暦の上では仲秋に入ります。陽の気は次第に収まり、秋らしさが感じられるようになり、自然界にもその変化がはっきりと現れます。『礼記・月令篇』は白露の三候を記します。「鴻雁来、玄鳥帰、群鳥養羞」。白露を境に寒さが始まり、ツバメは南へと帰っていき、ガンは南へ飛来し、さまざまな鳥たちも冬を越すための食料を蓄え始めます。

同じ天地の下で暮らす私たちの体も、陰陽の気の移り変わりの中で、少しずつ変化していきます。中医学における体を補う考え方は、体系立っていて、段階を踏んで進めるものです。寒さの気配が現れ始める白露の頃から「補露(ほろ)」を行って体の潤いを養い、心身の免疫力を高め、寒さに備えるエネルギーを蓄えていきます。秋の五行は金に属し、中医学の理論では人体の呼吸器系に対応します。そのため、白露の時期の養生で重視されるのは、肺を中心とした呼吸器系を整えることです。日々の暮らしのあらゆる場面で、その方向性をそろえて実践していきます。
 

一、食事の面

(一)「潤」を食し、陰を養い燥を防ぎ肺を潤す

『黄帝内経』では、「春夏は陽を養い、秋冬は陰を養う」という養生の考え方が示されており、この教えは、後世の名医である張仲景の『傷寒雑病論』や、李時珍の『本草綱目』といった著作にも見られます。「養陰」とは、体の潤いを養い、乾燥を防ぐことを指し、秋の養生における中心的なテーマといえます。

「南北杏仁・白きくらげ・いちじくスープ」。全体として穏やかで潤いがあり、肺を潤して痰を取り、陰を養うことに重点を置く。秋冬の長引く空咳や陰虚に適しており、秋冬の変わり目における日常の「肺陰保養レシピ」としても活用できる(曲直/大紀元)

秋の空気は乾燥しており、呼吸器系はその影響を最も受けやすい部分にあたるため、体の潤いを養い、乾燥を防いで肺を潤す必要があります。五行理論では秋は金、五行の色は白で、白い食べ物は秋の養生と相性がよく、とりわけ白くてとろみのある食べ物、白木耳や山薬は、体液を生んで肺を益し、潤いを養い乾燥を防ぐ効果が多く認められています。山薬(やまいも)は、ぬめりがあって色が白く、肺を潤すだけでなく、脾(消化器系)を健やかにし、腎を補う働きもあります。肺・脾・腎の3つの臓に偏りなく作用することから、中医学でも広く推奨されています。伝統中医学では、これらをお粥にして食べることが勧められており、秋の乾燥を和らげ、体液を生み出し潤いを養う効果が期待できます。

(二)陰陽を整える食補

寒に偏る体質は、平和と温補の食材を選べます。平和の食材は、杏仁、百合、蜂蜜、山薬、蓮子、米、糯米、炒りハトムギ、オートミール、白木耳(やや涼潤)、里芋、クコなどです。リュウガンは白露の当令の果実で、温補の食物です。熱性の体質は寒・涼性の食材を選べます。レンコン、大根、ナシ、イチジク、トマト、クワイ、ココナッツ、クレソン、ユズ、豆腐などです。ただし、何事もやり過ぎはよくありません。自分の体質に合わせて、量を調整してください。

(三)酸を量って肝を守る

秋は五行でいう「金」の気が盛んになり、「木」を抑える性質があるため、肝(木に対応する臓器)が損なわれやすくなります。そのため、乾燥を防ぐと同時に、肝もいたわる必要があります。中医学では「酸味は肝に働きかける」とされ、酸味のある食品を適量摂ることで、肺の気を引き締め、肝の潤いを養う助けになるといわれています。ただし、酸味を摂り過ぎると、脾胃(消化器系)の働きを妨げやすくなるため、くれぐれも摂り過ぎには注意してください。また酸味の食品は体の筋膜の強健に益があっても、筋に病ある人は酸を多く食してはなりません。『黄帝内経・素問』第七巻は人に戒めます。「酸走筋、筋病無多食酸。」

 

★酸は筋に通ずるため、筋の病がある人は酸味を摂り過ぎないように。(Shutterstock)
 

二、運動の面

朝起きたら深呼吸を多めに行い、適度な有酸素運動を取り入れましょう。軽く汗ばむ程度で、疲れを感じない範囲にとどめるのがよいでしょう。こうすることで全身の気の巡りを整え、心肺機能を鍛えられるほか、アレルギー性疾患の予防にもつながります。

早朝に運動する際は体を冷やさないよう注意し、夜は露が多く体に負担がかかるため、運動には向きません。自分で続けられる運動を選ぶと効きやすいです。運動中は適時に量を見て水分を補うことが重要で、温飲または常温で飲み、口舌の渇きと皮膚の乾燥を防ぎます。
 

三、睡眠の面

『黄帝内経』の言い方では、秋の三月は「早臥早起、与鶏俱興」が宜しいです。秋は早寝早起きし、早寝は秋の節気に順い陰精を蔵します。体の中を巡る経脈は、夜11時から午前3時にかけて胆経・肝経を通過するとされており、この時間帯が最も睡眠に適しており、体の機能を整える助けとなります。日の出とともに起きることで、陽の気を発散させ、肺の気を清め、生命エネルギーを蓄え補うことができるとされています。
 

四、保温と防寒

白露は一年で昼夜の気温差が最も大きい時節で、夜は天地の気が寒へ転じ始めます。「白露の頃には肌を露出させない」という言葉の通り、肌の露出を控える工夫をしましょう。衣服は肌を守ることを重視し、「玉ねぎのように重ね着をする」ことで、いつでも脱ぎ着をして調節できるようにしましょう。

体の中には、冷えを避けたほうがよい部位がいくつかあります。胃腸、下腹部、へそ、そして足です。防寒保温を整え、食事では生食・冷食を避けて腸胃を傷めないようにします。一般に、体には冷気の影響を受けやすい「八虚(はっきょ)」と呼ばれる箇所があり、乾燥した状態を保ち、温かくしておく必要があります。「八虚」は脇の下、肘の窩、鼠径、膝の窩で、左右あわせて八か所です。これらの部位は入浴後に拭き残さず、乾燥を保ってください。
 

白露の養生で避けるべき習慣

よく見かける習慣の中にも、長く続けることで、養生における大きな落とし穴となるものがあります。この白露の時節には、これらの大忌により留意してください。

一、生冷寒涼の食物を忌む

よくある生冷寒涼の食物は、氷菓子、冷たい飲み物、生菜、スイカ、刺身などです。こうした生もの・冷たい食べ物は、体の中に冷えを呼び込み、痰や余分な水分を生み出しやすくします。その結果、喉や肺を痛め、呼吸器のアレルギー症状を悪化させることがあります。瓜や果物には体を冷やす性質のものが多いため、一度にたくさん食べ過ぎないようにしましょう。多くの人が好む青菜サラダは温菜に変え、青菜に熱気を通し、さっと湯通しするのがよいです。

二、辛辣燥熱の食物を忌む

辛辣燥熱の食物は、ねぎ、しょうが、にんにく、唐辛子、強い酒などです。これらはできるだけ避けるか、量を控えめにしましょう。辛味や温性の食品が体の熱を助長し、肺の乾燥を悪化させるのを防ぐためです。

三、揚げ物・焼き物・脂っこい食物を忌む

揚げ物、焼き物、脂っこい食べ物は、体の潤いを養う「滋陰」の妨げになります。白露を過ぎると、体の陽の気は落ち着き、胃腸の働きも弱まってくるため、こうした食べ物は胃腸に大きな負担をかけてしまいます。

四、体を裸にして涼を招くのを避ける

『黄帝内経・素問』は「肺悪寒、寒則気留滞」と言います。ですから、デリケートな肺を守るためにも、体に冷気が入り込まないよう対策を取りましょう。昼間も涼を取り過ぎないようにし、特に夜寝るときには、寒さ対策を怠らないようにしましょう。乾いていない髪のまま眠らないでください。

「白露塗前庭、応門重其関」寒さへの備えを、決して軽く見てはいけません。白露という節気の変化に寄り添いながら、体によい習慣を、細やかに心を配って実践していく価値があります。変化とは、こうした小さな積み重ねの中にこそ生まれるものです。
 

(翻訳編集 日比野真吾)

容乃加