日本を守る鍵は人口である――家族の再建から始める国家百年の計
人口危機を「家計」だけでなく、継承の倫理から問う
文明は国境で倒れる前に、揺籃(ようらん:赤ん坊を寝かせるゆりかごのこと)が空になる。古代スパルタでは、市民兵スパルティアタイの減少が国制の存続を脅かした。アリストテレスは、国家が「人員不足」のため一度の打撃にも耐えられなかったと記す。ローマでも家族と市民共同体の変質が進み、二一二年、カラカラ帝の勅令は帝国内のほぼ全自由民へ市民権を拡張した。ただし、これを単純に「退廃の結果」と断定するのは史実を粗雑にする。勅令には法的統合と課税基盤の拡大という固有の背景があった。歴史が教えるのは、人口・家族・市民資格の均衡が崩れれば、国家の自己理解そのものが変わるということだ¹。
二十世紀に帝国を持った英国、フランス、ドイツ、スペイン、イタリアも、今日では出生力が人口置換水準を下回り、国連は今後五十年の多くを停滞または減少の時代と見込む²。 フランスの作家ルノー・カミュが唱えた「大いなる置換(grand remplacement)」は強い政治的標語だが、移民を敵視する言葉ではなく、「自ら次代を生み育てる意思を失った共同体は持続できるか」という問いへ置き換えるべきである。日本の防衛は、海と空だけでなく、家庭の食卓と子どもの声から始まる。
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