わが娘の心に残る「小さな樹」

【大紀元日本8月2日】私のは今、15歳。柔らかくて可愛い子供の手の感触は今でも残っているが、いつの間にか私よりも背の高い少女に成長した。天使のような笑顔、光輝く肌、風とともに揺れる長くて美しい髪…私にとって、目の中に入れても痛くないほど可愛い娘である。

美しく成長していく娘を持つ母親の悩みは、尽きることがない。なぜなら、思春期には異性問題が起きやすいからだ。娘に問題が起きた後、泣き寝入りしたという母親の話をよく聞く。

幸いわが娘には、このような心配はない。真面目な顔をして、私に人生の深さや秘密などを語る娘。無邪気な娘の心の中には、一本の真っすぐな樹が生えているのだ。

娘が3歳の頃、私と一緒にバスを降りようとした娘が、急に私に抱きついて私の後ろに隠れようとした。「どうしたの?」と聞くと、娘は「ママ、怖いよ。そこの小さい樹がとても怖い!」と震えていた。

娘が指差した先には、直径15センチ程の小さい樹が植えてあった。幹は曲がり、タマゴ大の塊が幹のあちこちに出ていて、葉っぱもまばらだった。その樹は、3歳の幼児の目にきっと醜い存在に映ったのだろう。

その樹から1メートルほど離れたところに、幹が太くて真っすぐに伸びた大きな樹が立っていた。それを見つけた私は、とっさに娘に対してよい教育を与えるチャンスだと考えた。

「あの小さい樹はね、大人の言うことを聞かなかったから身体のあちこちにコブができたの。人間も同じなのよ。お母さんの言う事を聞かず、ちゃんとご飯を食べない、寝る時間になっても寝ない、きちんと手を洗わなかったり、しっかり勉強をしなかったりとかね、こんな悪い癖ばかり身についたら、あの樹と同じようにたくさんの醜いコブが体中に出来てしまうのよ」と話して聞かせた。

私は続けて、「隣の大きい樹が、お母さんなのよ。お母さんが小さい樹に真っすぐに立つように言ったのに、小さい樹は言うことを聞かなかったの。文ちゃんは、あの小さい樹のようになりたい?」と娘に聞いた。

娘は首を振りながら、「ママの言うこと聞く。良い子になる」と答え、少し離れた所にある真っすぐに伸びた樹を指差しながら、「あそこの樹になる!」と話した。

その時から、私たちがバスでそこを通る度に、娘は必ずその「小さい樹」が真っすぐに伸びたか、コブが小さくなったかを確かめるようになった。

この出来事は娘の心に深く刻み込まれたようだった。娘はそれから、悩み事があったり、困ったりした時に正しい選択ができるように、いつも「小さい樹」のことを思い出すようにしているらしい。娘はその「小さい樹」のことを、今でも忘れられないと語ってくれた。

今日の高校生は、男女交際に関して比較的緩やかだ。校門前などでじゃれ合う高校生のカップルを見ると、目の置きどころに困る時がある。私はこれらのことに娘が影響されることを心配し、早くから男女交際について娘と話し合った。

しかし、娘の考えはしっかりしていた。「ママ、心配しないで。私は大学に行くまで彼氏は作らないから。高校の男子生徒たちは皆まだ子供みたい。私はそれに時間を無駄にしたくないの。だって私は歪んだ『小さい樹』にはなりたくないもの」と話してくれた。

今振り返ってみれば、その「小さい樹」は娘に道徳を教え、正しく教育する最高の機会だったようだ。夫と私は、神様が娘という貴重な授かり物を与えて下さったことに、改めて感謝の気持ちで一杯になった。

全ての親たちが、子どもという「貴重な授かり物」をしっかりと育て上げ、全ての子どもたちが成長の過程で自分たちの「小さい樹」を見つけることができるよう心から望んでいる。

 (原作・文/翻訳編集・豊山)