漢文の達人 その不思議な学習体験

【大紀元日本2月26日】「6歳の時から、時折夢の中に孔子と孟子が現れ、私に漢字と儒家の経書を教えてくれた。しかし、しっかり勉強していないと木片で叩かれた。翌朝目を覚ますと、叩かれたところが青くなっている時もあって、とても痛かった」。 これは韓国漢文の達人・両白堂氏が本紙記者に語った体験である。

 夢の中で 古代の先賢が伝授

 両白堂氏の名前は文相鎬、両白堂は号である。韓国において、儒家思想の教育を受けた文化人の多くは自分の漢名や字、号を持っており、彼らの間では互に名前は呼ばず、号を呼ぶのが一般的である。彼は家が貧しく、学校や塾に通うことができなかった。しかし、不思議なことに、彼は幼い時から2千年前の孔子や孟子など先賢たちの夢を見るようになり、彼らが漢文を伝授してくれたという。

 両氏は、孔子や孟子だけでなく、古朝鮮時代の儒学の大家である李滉(号は退渓)と李珥(号は栗谷)も同じように夢の中で彼に漢文を伝授してくれたと話す。当初は、このことを周りの人に話しても「嘘をついている。頭がおかしいのではないか」と言われ、その後は夢のことをを他人に話すこともなくなった。

 成均館の専任教師 漢詩の状元

 両白堂氏は夢の中での不思議な学習により漢文をマスターし、26歳の時に塾を開いて弟子に教え始めた。その後、韓国の儒学最高学府である「成均館」の専任教師となり、93歳(昨年取材当時)になった今でも自宅で漢文を教えている。彼が教えた学生は千人以上に達し、その多くは漢文学習塾の教師になった。前大統領の朴正煕氏も彼の生徒であった。

 また、年一回の全国漢詩コンテストで両氏は度々状元(首席)を受賞。開催委員会は毎年同じ人に状元が贈られることを望まず、彼のために特別賞を設けた。

 超人的な記憶力 不思議な聴覚

 両氏は超人的な記憶力の持ち主である。分厚い本を暗記しようと思えば、2、3回読むだけで一字も間違わずに全文を暗記できる。ある日、数人の漢文学の教授と一緒に車で移動していた彼は、6時間で儒家の経書を暗唱した。これには経書を知り尽くしているはずの教授たちも舌を巻き、その後は彼の前で漢学の知識を自慢する者はいなかったという。また、そのうちの一人が彼の記憶力を試そうと、彼の暗唱した『資治通鑑』を録音し、本と照合し詳しく調べたところ、本の印字に数カ所の間違いが見つかったというエピソードもある。

 両氏によれば、彼は読めない字に出会うと、その字の発音が聞こえてくるという。

 儒家の経典に従って心を修める

 両氏は常に神霊や聖人たちに尊敬の念を抱き、毎日必ず一度韓服に着替えて恭しく孔子と天地の神霊を拝み、本を命のように大事にしている。彼は、「一生の中で最も忙しい事は本を読むことだ」と話す。本を読む時、感心する言葉に出会うと必ずメモをして暗記をする。

「私は儒家の経書を読みながら、たびたび感銘を受ける。本の中には身を処する道理がはっきりと書かれているが、人はなぜそれを固く守ることができず、度々誤りを起こすのか。私が本を読むのは儒生になるためではなく、自分の心を修めるためで、先賢達の行為を学んで自分の心を正すためだ」と彼は語った。
 

(翻訳編集・東山)