他人の不幸は蜜の味? 嫉妬心は人間の性=米研究

なぜ、自分ではなくあいつが抜擢されるのか?なぜ、私よりあの子の方がモテるの?といった小さな嫉妬心なら、誰でも感じたことがあるはず。その嫉妬心は、「相手の不幸を喜ぶ」というレベルにまで発展するケースもあり、その可能性は誰もが持っていると米科学者は指摘する。

 米プリンストン大学のスーザン・フィスク教授(Susan Fiske)は、人はよく知らない相手をステレオタイプ(固定したイメージ)に分類し、その相手に対して攻撃性や嫉妬心を持つことに注目した。彼女の教え子の一人が、アメリカ大リーグのニューヨーク・ヤンキースのファンに囲まれながら、ボストン・レッド・ソックスの帽子を被って試合を観戦したところ、からかいや誹謗中傷に晒されたことに興味を持ったからだ。

 フィスク教授は、老人(憐れみ)、米国の大学生(誇り)、ドラッグ中毒者(嫌悪)、リッチなエグゼクティブ(羨望)の4つのステレオタイプを用意し、それぞれのタイプがラッキーな目に遭ったり、不幸な目に遭ったりするシナリオを被験者らに見せた。彼らの頬には機械を繋ぎ、筋肉が少しでも動けば電気信号を発する。この実験の結果、被験者らは、「羨望」タイプの人が不幸な目に遭う、あるいは不快なことを経験すると、より多く「ほくそ笑んだ」という。

 また、罰を与えるとしたらどのステレオタイプにするかという実験では、多くの被験者が「羨望」タイプを選択した。「羨望」タイプが幸せだと気分が悪くなり、不幸だと気分がよくなるという結果も見られた。

 フィスク教授はこの人間の感情を、シャーデンフロイデ(Schadenfreude)と呼ぶ。ドイツ語で「他人の不幸を喜ぶ」という心理学用語である。同教授によると、嫉妬心と羨望には密接な繋がりがあり、シャーデンフロイデは大なり小なり誰もが持っていると指摘する。「(嫉妬する相手に対して)同情できないのは病気ではない。これは人間の反応であり、すべての人が経験するわけではないが、大多数の人が経験する」と話し、日常生活の中でいつでも起こり得ることだと話す。

 熱狂的な野球ファンがライバルチームの負けを喜んだり、羽振りのよかった芸能人がバッシングを受けるのを見てスカッとしたり、それも人間の感情。しかし、品格ある人間を目指すならば、それらの醜い心は理性で無くしていきたいものだ。

 この報告は、米ジャーナル誌『Annals of the New York Academy of Sciences』に掲載された。

 

(郭丹丹)