年々、時間が経つのが早いと感じる記者。心理学者によれば、人は年を取れば取るほど時間の経過を早く感じる傾向があるとか。一日30時間あればいいのに、などと夢想してみる。時間を便宜上、区切っているのは人間であり、考え方や感じ方は人それぞれ。「時間」についての考察を集めてみた。
秩序から無秩序へ
オーストリアの物理学者、ルートヴィヒ・ボルツマンは時間の経過に従って、秩序から無秩序に進む現象を発見し、「エントロピー増大の法則」と定義した。物理学者のショーン・キャロルはこの法則について、宇宙の時間経過を次のように説明する。「もし書類をきれいに積み重ねておいたまま、部屋を出て行ったとする。またしばらくして戻ってきたら、書類が乱雑であっても、そんなに驚かない。ところが、乱雑においたはずの書類がきちんと置かれていたら、驚くだろう」。つまり、時間の経過というのは、徐々に無秩序になっていく過程であり、一方向に進むという考え方だ。「基本的に、我々が観測できる宇宙は137億年前に申し分のないほど秩序の取れた状態で生まれた…宇宙はまるで、ぜんまいで動くおもちゃであり、それがゆっくりと動いているが、最後にはねじも止まってしまうものだ」
4次元の世界
アインシュタインは縦、横、高さの3次元の空間と、時間軸を一体化した「4次元」の空間があると主張した。この理論によれば、空間と時間は伸び縮みし、空間が伸縮すれば、時間も伸縮する。4次元の世界では、未来も過去も同時に、ここに存在する。人間の世界でいう時間という概念はなく、一瞬一瞬に起きる3次元の出来事は、すでに4次元の世界に存在している。
場所によって時間の経過が異なる
ナショナル・ジオグラフィックの報告によると、時計の経過は世界中で、全く同じではないという。高層ビルの一階から最上階まで、それぞれのフロアにひとつづつ非常に精密な時計を設置するとする。すると、上の階層に上がるほど時計の針の進みが遅くなる。時計の遅れは、一秒の10億分の一の単位だ。
「時間」という概念がない部族
アマゾンに住むアマンダワ族は、時間に対する考え方がユニークだ。彼らの言語には「時間」という言葉がなく、「過去」や「遠い将来」という概念がない。また、「月」や「年」といった時間を区切る単位も存在しない。英国ポーツマス大学の言語心理学専門のクリス・シンハ教授によれば、彼らは決して「時間」を感じないわけではなく、また「時間」の外にいるわけでもない。彼らは他の民族のように起きている出来事について話せるし、継続する出来事についても話せる。しかし、その出来事には独立した時間があるという概念がないのだ。シンハ教授によれば、彼らには年齢という概念がないが、コミュニティーの中で自分の立場が変わった時に、名前を変えるという。
ホピ族(ネイティブ・アメリカン)
言語学者のベンジャミン・リー氏も時間は相対的だと指摘する。リー氏によると、ホピ族の言語には「時間」がなく、過去、現在、将来の出来事を区別することがない。
アフリカの時間
ケニヤの哲学者J.S. モビチ氏は、アフリカ人には人間の活動が未発達から発達へ、「前へ」進展しているという概念がない。季節の移り変わりやその他の出来事は認識するが、長期的な計画やそのもっと先の将来を見通すといった考えが存在しない。将来についての考え方をアフリカ人に伝えれば、アフリカの発展に繋がるのではないかと提案している。モビチ氏は、時間について、次のように指摘する。「将来はまだ経験していないのだから、理解することができない。従って、それは時間の一部分とはなり得ず、人々はどうやってそれを考えればいいのかが分からない」
時間とは何か?
古代キリスト教の神学者、アウレリウス・アウグスティヌスは時間について、次のように述べている。「では、時間とは何か。私に誰も問わなければ、私は時間とは何かを知っている。しかし、時間とは何かを問われ、説明しようと欲すると、私は時間とは何かを知らない」
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