【一本のかんざし】

【大紀元日本8月26日】一本のかんざしで修煉機縁を失ってしまった修煉者の物語である。

山奥に庵を結び、一心に修行に励む修煉者がいた。彼は世の中の名誉、利益、色欲などすべての煩悩と欲望を捨て、ひとりで静かに暮らしていた。

ある日、美しい婦人が宿を借りたいと戸をたたいた。修煉者は草ぶきの家を婦人に譲り、自分は外の庭で一晩明かすことにした。彼はすでに色欲を捨てていたので下心はまったくなく、一晩無事に過ごした。翌朝、婦人は彼に礼を言ってその場を去った。

婦人が去った後、彼は婦人の寝床に一本のかんざしが置かれていることに気付いた。ふと彼は思った。「自分には金銭欲がないので不要だが、家族の誰かにあげたら喜んでもらえるだろう」。彼は、そのかんざしをそっと箪笥の中にしまった。

しかし、その瞬間、修煉者は自分が貪欲の戒めを犯したことに気づいた。彼は急いで婦人を追いかけたが、彼女の姿はすでに遥か遠くにあり、次の瞬間、婦人は観音菩薩に変わっていた。

この時、彼は、かんざしは菩薩が彼に与えた試練だったことを悟った。後悔しても遅く、彼は一度きりの成就の機会を失ってしまった。

一時の貪欲な心により、長年の修行を無駄にしてしまった修煉者の物語は、世の中の誘惑に屈せず、高潔な心を捨ててはいけないことを教えている。

 (翻訳編集・蘭因)