今月15日の神韻交響楽団の日本初公演が待ち遠しい。これまで北米を中心に演奏活動を行ってきた同楽団は、今年9月、東京そして台湾の12都市でコンサートを開く。同交響楽団の演奏者、陳纓(チェン・イン)さんに、神韻交響楽団やその音楽の魅力について伺った。
陳さんは音楽一家の中で育った生粋のアーティスト。両親ともに中国国家一級演員の称号をもつ演奏家。神韻では、フルート演奏のほか、指揮者、演出も手掛ける。神韻芸術団2015年世界巡回ツアーでは、オーケストラ団長を務めた。
オリジナル曲は演奏会用にアレンジ
神韻交響楽団は100人近い団員から構成され、いずれも神韻芸術団の5つの団体に所属する演奏家。
神韻舞台の演目は、毎年全て一新に創作されたオリジナル作品である。楽曲は、もともとは舞踊音楽として、あるいは歌曲として作曲されるため、交響楽団が単独でコンサートを開く場合、神韻の舞台公演で観客から好評だった演目から選曲してアレンジしている。
神韻の舞台公演と同じように、中国の様々な時代や地域の多様な民族文化を表現するため、交響楽団の演奏会は10数曲の精緻な小品から構成されている。
主なテーマは中国の神話伝説や歴史上の人物、実際の出来事などだが、こうしたオリジナル曲だけでなく、おなじみのクラシック音楽の演目もあり、オーケストラの演奏をバックに、声楽家の独唱や二胡奏者の独奏も演奏会の醍醐味の一つ。
西洋と東洋の良さを兼ね備えた稀有なオーケストラ
神韻音楽でひときわ精彩を放つのが、民族楽器の音色だ。陳さんは、神韻交響楽団の魅力を、二胡や琵琶を始めとするさまざまな中国伝統楽器をオーケストラに組み込み、中国伝統文化の趣を漂わせた斬新な神韻音楽は、他のオーケストラでは味わうことのできないものだと胸を張る。
神韻の音楽は、西洋音楽の壮大な風格と緻密さ、そして東洋音楽の軽やかな躍動感と繊細さ、この本質的に異なる二大音楽体系を見事に融合させ、まさに「神」と「韻」の両方を兼ね備えた稀有な音楽と言える。
西洋の楽器を使って中国伝統音楽の芸術的特徴を表現するのは、容易ではないという。例えば、中国の民族音楽はほとんどが5音音階(ペンタトニックスケール)で構成されている。一方、西洋の楽器は7音音階で作曲された曲を演奏することを前提に作られている。陳さんは、自分の出す音色や強さ、音程、表現方法などに常に注意を払い、他の楽器と調和のとれた音で中国音楽文化の特色を表現する必要があると語る。
陳さんは、今回の巡演でフルートではなくピッコロの演奏を担当しているが、神韻独特の表現方法により伝統的で正統な中華文化の華麗さを表現することは、神韻交響楽団の全ての音楽家に共通する願いだと話す。そしてこの願いは、演奏会当日はもちろん、作曲の段階から練習など、彼らの行うすべての音楽活動の中に込められているという。
神韻の音楽に宿る不思議な力
神韻交響楽団は、2012年にニューヨークのカーネギーホールで初演を飾り、その後北米で開催された4度のツアーでも好評を博している。「私たちの演奏会は、いつも世界一流のコンサートホールで開催されます。そして、聴衆が私たちの演奏に耳を傾けているときの様々な感情の変化を直接感じ取れます。これはとても励みになります」。陳さんは、演奏会を通じた観客との交流を心から楽しんでいると語っている。
コンサートで「慈悲的展現(繰り広げられる慈悲)」を演奏した時のことを、陳さんは今でもはっきりと覚えている。曲が終盤を迎えると、慈愛と威厳に満ちあふれた力が、ホール全体に広がってゆくのを感じ、観客席の聴衆も同じように感動しているのを感じ取った。そして最後の一音が鳴り終わった時、観客は立ち上がって惜しみない拍手を送り続けた。「何度も泣きそうになりました。そしてこの時に感じた高揚感は、ステージを終えてからもしばらく続いていました」。
こうした不思議な力は、いったいどこから来るのだろうか。「正統な中国文化では、人々に対し、善良であり、正義を貫くよう説き、人々が人生の意味やその行きつくところを模索するよう示唆しています。こうした価値観はまた、さまざまな伝統芸術の中にも反映されています」。
陳さんの考える真の芸術とは、単に楽しみを提供するだけでなく、人々の心と体を浄化し、昇華する働きがあり、さらには人々に希望を与えるものだ。そして、神韻交響楽団は、音楽を通してこうした希望に満ちた情報を伝えようとしているため、よい想念を啓発し、人を感動させることのできる神聖な力が音楽に宿るのだと考えている。
「目で見て楽しむ芸術と比べて、音楽は人々にさらに豊かな想像力を与えてくれます。本当に美しく、気高い音楽は、人々を麗しく、非常に崇高な境地に誘(いざな)ってくれるものです。ですから、音楽の実際の力は現実のレベルを超えたものであり、聞く人に音楽以上のものを感じさせることができるのです」
優れた音楽は演奏者に高い技術だけでなく、自分自身の精神の素養やレベルを高め続けるよう要求する。こうした芸術的精神を信条とする神韻の音楽家たちは、練習中でも演奏会でも、しばしば思いがけないインスピレーションや収穫を得ることができるため、彼らの演奏する楽曲には並外れた影響力が備わる。
9月15日に行われる神韻交響楽団の東京公演は、同楽団のアジア初演となる。その後、台湾でも12回の演奏会が予定されており、陳さんは、今回のツアーでアジアの観客と音楽を通じた心の交流ができることを心から楽しみにしていると語った。そして10月15日には、米国で名誉あるカーネギーホールで再び神韻サウンドを披露することが決定している。
(翻訳編集・島津彰浩)
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