トランプ氏が逆転当選? 米株価8%下落、市場は英国EU離脱なみの波乱か
米国大統領選投票日である11月8日まで残り1週間。ヒラリー氏の私用メール問題の再燃で、トランプ氏の逆転当選が現実味を帯びてきた。多くの市場関係者は、トランプ氏が当選すれば、その政策の不確実性から、英国EU離脱と同様に金融市場では短期間にまたも大きな混乱になると警戒する。
米連邦調査局(FBI)が民主党候補者のヒラリー・クリントン氏に対して私用メール問題の調査再開を宣言してから、米紙ワシントンポストとABCニュース(30日付)などの最新世論調査では共和党候補者のドナルド・トランプ氏への支持率が急上昇し、両者の支持率の差がわずか1%となったと報じた。
米経済情報調査企業のマクロエコノミック・アドバイザーズが10月上旬に発表した株式市場見通しでは、トランプ氏の当選で、同氏の米最大貿易相手である中国やメキシコへの厳しい姿勢を含む経済政策の不確実性を嫌う投資家から、大量の売り注文を出される結果、米主要株価指数S&P500種は8%下落すると予想。この1年間の約6%の上げ幅を一気に消し去ることになると示した。
一方、クリントン氏が当選すれば、オバマ政権の政策を引き継いでいくと予想されるため、S&P500種は選挙後2%上昇するとの見通し。
また、市場関係者はトランプ氏が当選後に依然として気まぐれな発言をし、米政府と議会との関係が悪化すれば、投資家の懸念が強まり、米株式市場はさらに下落すると予測する。
日米企業関係の深さや東京証券取引所で取引を行う投資家の半分が外国人であるため、日本株式市場と米国市場とはほぼ連動している。このため、米株価が大きく下落すれば、日本市場でも売り注文が集中すると予想される。主要株価指数日経平均225種は短期間に現在の1万7400円台付近から1万6000円台に、場合によって1万5000円台後半に下落するとみられる。
トランプ氏の当選で、世界金融市場で投資家によるリスク回避が再び活発になり、安全資産とされる金と日本円が買われ、短期間に金価格の大幅な上昇と円高ドル安が予想される。米連邦準備制度理事会(中央銀行にあたる、FRB)が12月に利上げ実施の不透明さと、トランプ氏がかつて「FRBの権限縮小を支持する」「(FRB議長の)イエレン氏は任期満了後に交代させる」など発言し、円安批判をしたことから、今後米金融政策運営に関する不確実性から、今後ドルが下落し円高が一段と進むことをみる。
現在世界各国政治情勢を見ると、英国の想定外のEU離脱、フィリピンの物議を醸すドゥテルテ大統領まで、各国の人々は「現状維持」よりも「変革」を選ぶ傾向にあることがわかる。トランプ氏が米国大統領に当選すれば、人々が「変革」を求めているとの世界的な流れが再び証明されることになる。
(金融評論員・金谷道、翻訳編集・張哲)