体内に2つのDNAが

生まれつきのアザ 原因は双子の姉妹

物ごころついた時から、「他の女の子みたいになりたい」という強い願望があったと話すタイラー・ムールさん(Taylor Muhl)。また、彼女の記憶では、何度も母親に「私には双子姉妹がいるの?」と尋ねていたという。いるはずのない双子の存在を感じながら、多感な時期を過ごした。

後に、自分の身体が他の子たちと違うことに気づく。上半身の中央に真っすぐの線が入り、左側の皮膚の色が明らかに違う。その時から、ますます他の女の子みたいになりたいという強迫観念にかられた。その後、彼女の身体は異常に敏感になり、何にでもアレルギーを起こすようになった。

子供の頃、ダンスを習っていたムールさん (The Doctors/Youtube)

ティーンの年頃になり、それまで判明しなかったアレルギーの原因が特定された。それは、彼女がキメラという特殊な状態であること。キメラとは同一個体内に異なる遺伝子情報を持つ細胞が混じることで、ギリシャ神話の怪獣「キマイラ」からきている。医師によれば、二卵性双生児だったムールさんは、母親の胎内にいる時にもう一人の姉(妹)の細胞を吸収してしまったという。皮膚の色が違う部分は双子のもう一人の組織で、彼女の体内には二つのDNAが存在する。そのため、彼女の免疫が異物を排除しようとアレルギー反応を起こしていたのだ。

「身体がそれを排除しようと自己免疫の炎症が起きて、苦しみました」と話すムールさん。「他の女の子みたいになりたい」というムールさんの強い思いは、実はもう一人の双子の願いだったのかもしれない。

お腹の中央に真っすぐの線が入っている(The Doctors/Youtube)

原因が分かり、今は自分の身体を卑下することもなくなったというムールさん。テレビに出演し、「神様がくれたものを喜んで受け入れなきゃ」と話す。

また、SNSには、「身体に異常や差異がある人たちは、もっと無条件に自分自身を愛してほしい。私がこの身体を公開することで、その手助けができたら」とつづっている。

(文・郭丹丹)