今月10日、洪水のためタイの洞窟に閉じ込められていた13人全員が生還し、世界中がほっと胸をなでおろしました。最初にダイバーによって発見されるまでの9日間、彼らは暗闇の中でどのように過ごしていたのでしょうか。奇跡的ともいわれる彼らのタフさに注目が集まっています。
閉じ込められたのは、ミャンマーとの国境に近いタムルアン(Tham Luang) という洞窟。連日の雨の影響で洪水となり、地元サッカーチームの子供たち12人とAkeというコーチ(25)一人が取り残されました。食料は、子供たちが持っていた少しばかりのお菓子だけ。洞窟内にしたたる水滴と寒すぎない室温が幸いし、13人は生き延びました。
サッカーチームとコーチ。一部の子供たちが洞窟に入った(Image copyright Facebook/ekatol)
しかし、暗闇の中、時間の感覚もなく、救助が来るのかも分からない状況下で、一番過酷なのは精神的な苦痛。恐怖と絶望に押しつぶされそうになる中、心を静めるためにAkeコーチが子供たちに教えたのは、瞑想(めいそう)でした。
サッカーの指導者になる前は、仏教の僧侶だったAkeコーチ。子供たちに座禅を教え、空気を使いすぎないよう呼吸のコツも伝授しました。さらに、体力を消耗させないように、子供たちには横になってじっとしているよう指導しました。
9日後、タイ海軍特殊部隊と欧米の熟練ダイバーらが入り口から5キロの地点で子供たちを発見。入り組んだ地形と溢(あふ)れる泥水に阻まれながら、全員の救出が完了したのは、彼らが閉じ込められてから17日目でした。
子供たちとコーチの手紙
BBCの報道によると、ダイバーは洞窟内に食糧や水などを運ぶ一方、子供たちからの手紙を外に届け、心配する家族を励ましました。
「パパ、ママ、お姉ちゃん、愛しているよ。ボクのことは心配しないで」
「ぼくは大丈夫だからね。愛しているよ!」
「パパ、ママ、愛してる。ここを出たら、バーベキューに連れて行ってね!」
Akeコーチも手紙を書き、子供たちの親たちに心から謝りました。
「保護者の皆さん、子供たちは元気です…。一生懸命、彼らの面倒をみることを約束します。救助に来てくれた皆さん、本当にありがとう。そして、保護者の皆さんには、本当に申し訳ないと思っています」
たった一人の大人として、子供たちを連れだした責任を感じていたAkeコーチ。しかし、彼を責める親は一人もいませんでした。ある人は、Akeコーチにこんなメッセージを書きました。
「両親の誰一人として、あなたを責めている人はいません…あなたも子供たちと一緒に、無事に脱出しなければなりません」
「子供たちの面倒と安全に気を配ってくれて、本当に感謝しています」
救出された時、2キロ程度やせていたものの、健康状態は概(おおむ)ね良好だった子供たち。一方、一番弱っていたのはAkeコーチで、残り少ないお菓子を自分はほとんど食べず、子供たちに譲っていたようだとBBCは伝えています。
(翻訳編集・郭丹丹)
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