焦点:アルゼンチンに広がる経済先行き不安、大統領再選に暗雲

[ブエノスアイレス 19日 ロイター] – アルゼンチンのマクリ大統領にとって、不人気な緊縮政策を進めている以上、支持率の低さは驚くに当たらない。しかし最新の世論調査には、さらに緊縮策を進めて来年の大統領選における再選につながる成果を獲得するのが難しくなりかねないという意味で、ひときわ懸念を誘う数字が含まれている。

地元企業マネジメント・アンド・フィットが2400人の有権者を対象に実施した調査によると、マクリ氏が2015年の大統領選に勝利して以来初めて、この先の景気が「悪くなる」または「非常に悪くなる」と答えた人の割合が60%に達した。1年前の調査では、そうした悲観的な見方は34%にすぎなかった。

マクリ氏は、通貨危機や物価高騰を背景に国際通貨基金(IMF)の金融支援を仰がざるを得なかったこともあり、電気・水道・ガスなどの利用に対する補助金の一層の削減や輸出税の引き上げなどに取り組んできた。そのため今回の世論調査では、支持率が27%を割り込んだだけでなく、かなりの有権者が経済の先行きに希望を失ってしまったことが明らかになったのだ。

物価面でもアルゼンチン政府は何とか上昇を抑制しようと政策金利を60%にまで引き上げるといったショック療法も打ち出したが、9月の物価上昇率は加速し、前年比40.5%となっている。

こうした状況は、マクリ氏の再選戦略を狂わせてもおかしくない。

15年の選挙でマクリ氏に投票した人の多くは、フェルナンデス前大統領の政権と逆の正統的な経済政策が同国に必要な投資を呼び込み、持続可能な経済成長をもたらすだろうという見方に基づいて同氏を選んだ。ところが実際に投資の動きは目にされず、マクリ氏の経済に関する仕事ぶりは最低限の期待にさえ応えられていない。

ブエノスアイレスで昼食を買うために外出してきたアプリ開発に携わっている若者のグループに取材したところ、33歳の男性は「マクリ氏を信頼したことは一度もない」と言い切り、来年の大統領選にフェルナンデス前大統領が出馬するなら、彼女に投票すると話した。

一方同僚の28歳の男性は前回マクリ氏に投票したと明かした上で「全く期待はしていなかったが、これほど事態が悪くなるとは思っていなかった。右派政権で少なくとも犯罪件数は減るかと考えたのに、より貧困が深刻化して犯罪は増加している」と懸念する。

マネジメント・アンド・フィットの調査によると、マクリ氏の支持率は1年前の49.7%から26.8%に低下し、不支持率は42.3%から65.7%に跳ね上がった。

今月に入ってからは連立与党内の亀裂も表面化し、急進市民連盟の議員がマクリ氏の汚職取り締まりの甘さを追及する場面が見られた。急進市民連盟が連立を離脱すれば、IMFからの資金受け取りの条件となっている予算カットや増税について議会の承認を得る上で痛手となるだろう。

マクリ氏としては、IMFや債券市場から財政赤字削減を要求される中で、どうやって再選の確率を下げずに追加的な緊縮策を議会で通過させていくかが問題だ。

コンサルティング会社アンディアン・キャピタル・アドバイザーズを率いるダニエル・オソリオ氏は「(補助金削減による)公共料金引き上げの負担はまだ平均的な家庭の懐に影響を及ぼしていない。それが年末から来年第1・四半期にかけて起きれば、マクリ氏の支持率は今よりも相当低くなる」と予想し、再選を巡る懸念が生じるのは間違いないと付け加えた。

(Hugh Bronstein記者)

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