豚肉で難産の妊婦を救ったお坊さん

昔、松滋市のあるお寺に悟輪という僧侶がいました。彼は仏教の戒律に精通していましたが、見た目は普通のごく一般的なお坊さんでした。

悟輪は生臭い物は食べておらず、もしお布施でもらった肉を食べてしまった時には激しく嘔吐を起こし、食べたものを全部吐いたりしました。彼は徳行に優れていたため、人々から尊敬されていました。

ある日、悟輪は座禅をしている最中に、突然目を大きく見開くと、急いで銀貨を取り出し、他の行者を呼んで町に行きました。

悟輪はある肉屋の前で足を止めました。そこには二日も売れていないまま置いてある4分の一頭の量の豚肉がありました。
「天気がこんなに暑いのに、お肉が臭くなったらどうしますか」
と聞くと、屠夫は「この前、一頭の豚を殺したのですが、市で売ろうとしても今がちょうど農民の繁忙期なので、なかなか売れないのです」と言い、「あなたのような肉を食べないお坊さんは、肉の美味しさは分からないでしょう」と言いました。

悟輪が「この豚肉で漬物をして賓客を招待したいと思います。仏様は酒と肉は腸を通るものに過ぎないとおっしゃったので、食べても問題ないでしょう。私に半額て売ってくれませんか?」と聞くと、屠夫はなかなか売れないので半額で売ってくれました。

悟輪は連れてきた行者に豚肉を背負わせて街の中を歩き回しました。人と会うたびに、「お肉を食べないお坊さんが最近お肉が食べたくなってたまりません。皆んな私と一緒にお坊さんがお肉を大食いするのを見にいきませんか?」と言い散らすと、あっと言う間に大勢の人が集まりました。数百人の人がお寺の前に集まり、豚肉の調理が進み、悟輪は皆んなの前でお辞儀をしながらこう言いました。
「お坊さんがお肉を食べると、半生の修行が台無しになってしまうので、どなたか私の代わりにこの豚肉を食べてくれませんか?」
人々は大いに笑い、「お坊さんは私たちを御馳走するためにここまで騙して来たのですね」と言い、喜んで豚肉を食べました。

悟輪は豚肉が一つも残らず全部食べ尽くされたのを見て拍手しながら、
「よし!もしまだ存分楽しめなかった人がおるなら、私と一緒に前の村の李氏の家に餅をもらいに行くのはいかがか?」と言いました。

人々はお坊さんの話を半信半疑しながら彼について行きました。李氏の邸宅に着くと、中から生まれたばかりの赤ちゃんの泣き声が響き、そこにいる人々は有頂天になっている様子でした。

詳細を聞いてみると、李氏の家には難産で二日も苦しんでいる産婦がいて、お腹が激痛するものの、赤ちゃんはなかなか生まれて来なかったのが、皆んなが豚肉を食べ尽くす時に生まれてきたとのことでした。

赤ちゃんの前世はあの豚であり、身の悪業が全部償われておらず、豚の肉が千分に切られて悪業を償う必要がありました。皆が豚肉を食べ尽くすと、前世の悪業が償われたので、赤ちゃんがようやく生まれてきたのです。

人々ははっと悟り、悟輪が因果を洞察できる賢者であるとわかりました。その後、彼のもとに前世因果などのことを聞きに来る人が後を断ちませんでしたが、ある日、彼は突然姿を消し、再び戻って来た時は、五台山のお寺で涅槃してついにこの世を去りました。

『夜雨秋燈錄』巻2より

(翻訳/編集 唐玉)