米、新型肺炎で緊急事態宣言 強制隔離や入国禁止措置実施へ

[ワシントン/上海/北京 31日 ロイター] – 米政府は31日、新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大について、公衆衛生上の緊急事態を宣言した。

アザー米厚生長官は、前日の世界保健機関(WHO)による緊急事態宣言を踏まえ、「米国としての公衆衛生上の緊急事態を宣言する」と表明した。

米国内での感染拡大阻止に向け、新型肺炎の震源とされる中国・湖北省に渡航した米国民を強制的に隔離するほか、過去14日間に中国に滞在した外国人の入国を拒否する措置を講じる。2月2日から実施する。

中国からの反発は必至だ。この日の緊急事態宣言に先立ち、米国務省は前日、中国への渡航警戒レベルを引き上げ、米国民に中国に渡航しないよう勧告。これに対し、中国外務省の報道官は「WHOは渡航制限を控えるよう各国に促したが、米国はすぐさま正反対の動きに出た」とし、「実に卑劣だ」と批判していた。

これまでに新型コロナウイルスよる肺炎の死者は中国で213人に達し、世界の感染者が1万人に迫っている。

この2日間でロシア、英国、スウェーデン、イタリアで初の感染例が報告され、感染は少なくとも25カ国に広がった。人から人への感染例も日本、米国、ドイツ、ベトナムの4カ国で8件確認されており、他の多くの国も感染拡大防止に腐心する。

ロシアは国内で感染者が確認されたことを受け、中国への直行便の運航を制限する方針を表明した。シンガポールは、中国人旅行者や中国を最近訪れた外国人旅行者の入国をすべて禁止すると発表。2月1日から実施する。イタリアも中国便の運航を当面停止すると発表した。

航空会社による中国便の調整や運休も相次ぐ。米アメリカン航空グループ<AAL.O>とデルタ航空<DAL.N>はこの日、米国と中国を結ぶ全便の運航を停止すると発表。アメリカン航空は同日から3月27日まで中国発着便の運航を停止、デルタ航空は2月6日から4月30日まで運休とする。

新型肺炎の感染拡大による中国経済への打撃が不可避とみられる中、世界株安が続いてる。ムーディーズは影響が「世界にこだまする」恐れがあると指摘する。

中国で事業を展開する企業も対応に追われている。仏PSA<PEUP.PA>新型肺炎の震源とされる湖北省武漢市にある3工場を2月半ばまで引き続き閉鎖すると発表。韓国の現代自動車<005380.KS>は、新型肺炎の感染拡大による供給網の混乱を受け、今週末にスポーツ多目的車(SUV)の生産を停止する計画を示した。

こうした中、新型ウイルスの震源地とされる湖北省では、武漢市を中心に車両の通行が事実上封鎖されているものの、長江に架かる橋を徒歩で渡って同省に出入りすることは依然可能であることが分かった。

武漢市トップの馬国強・市党委員会書記は、コロナウイルスの感染抑制に向け早めに対処すべきだったと述べ、初動対応の遅れを認めた。

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