米国でAIデータセンター反対運動 トランプ氏「中共が煽動」 米中AI競争の差は

2026/08/15 更新: 2026/08/15

アメリカでは最近、AIデータセンターの建設に反対する動きが広がっている。トランプ米大統領は、その背後で中国共産党(中共)が反対運動をあおり、アメリカのAI開発を遅らせようとしていると主張した。一方、最新の世界AIデータセンターランキングでは、アメリカがAIの計算能力で大きく先行し、中国側は明らかに後れを取っている。アメリカで反対運動が広がる背景は何か。トランプ氏の主張に根拠はあるのか。米中のAI競争の実態を追った。

ここ半年、アメリカではAIデータセンターの建設に反対する声が急速に高まっている。

7月18日には、全米42州で142件の抗議活動が起きた。大型テクノロジー企業によるAIデータセンターの急速な建設に対し、電力や水の大量消費、騒音、企業への税制優遇、雇用創出が限られていることなどに懸念の声が上がった。

トランプ氏は8月4日、Foxニュースのインタビューで、中共が全米でAIデータセンターへの反対運動をあおり、アメリカのAIインフラ整備を遅らせようとしていると述べた。「AIはインターネットより重要であり、過去数百年間に起きたどの出来事よりも重大になる可能性がある」と語った。

米経済学者の黄大衛氏は、中共がこうした抗議活動をあおったり、資金を提供したりして、アメリカ内にもともと存在する社会的対立を拡大させている可能性は十分あると指摘する。

黄氏は、反対運動の背景について、「この対立自体が何もないところから作り出されたわけではない。米国内の民主党と共和党の対立や社会の分断も大きな要因だ」と述べた。

そのうえで、中共にはこうした動きを後押しする動機があるとの見方を示した。「中国は現在、アメリカを懸命に追い上げており、AIをめぐる米中の競争は激しさを増している」

アメリカのAI産業に直接打撃を与えなくても、国内の反対運動によってAIインフラの拡大が遅れれば、中共にとって有利に働くと指摘した。

「米国内のAI拡大が遅れ続ければ、それだけで目的を達成できる」。

一方、中共政治局は7月末、「AI+」行動をさらに推進する方針を示した。中共はAIを「第15次5か年計画」の重要分野の一つにも位置付けている。

しかし、AI研究機関Epoch AIの8月6日時点の統計によると、同機関が収録した世界の大型AIデータセンター75か所のうち、68か所がアメリカにあり、中国側は2か所にとどまった。2施設はいずれも40位以下で、AIの計算基盤では両国に依然として大きな差があることを示している。

台湾国防戦略与資源研究所の蘇紫雲所長は
、中国側のAI開発について、ソフトウェアよりハードウェアの制約が大きいと指摘する。

「中国のAIソフトウェア企業がアメリカの言語モデルを蒸留し、その成果を取り込み、自社モデルに転用していると指摘されてきた。ソフトウェアは比較的取り組みやすい」

一方、ハードウェアでは先端露光装置が大きな壁になっているという。「先端の露光装置がなければ、ハードウェア開発は進まない」

蘇氏によると、中共はEUV露光装置を持たず、DUV露光装置を限界まで使って先端プロセスに対応しているため、歩留まりが低下するという。生産能力も不足していると指摘した。

上海の企業が国産DUV露光装置を開発したとの情報については、「今後10年ほどは、本格的な競争力を持つには至らないだろう」との見方を示した。

黄氏は、アメリカの強みは半導体だけではなく、AIを取り巻く産業全体のエコシステムにあると指摘する。

「AIの計算能力は、資金を投じてデータセンターを建て、大規模なインフラ投資をすれば手に入るものではない。産業体系全体が必要だ。

アメリカの強みは総合的なものだ。ハードウェア、ソフトウェア、人材、法律や規制、自由な競争環境、市場需要、海外資本からの投資など、すべてが一体となっており、中国を上回っている。

中国の問題はデータセンターの有無ではない。高密度で効率的な計算能力に加え、法律や規制、人材の蓄積も不足している」

同氏は、中国がAI競争で必ず敗れるとは限らないが、こうした制約が今後の発展を抑えることになると指摘する。また、今後は米中のAI競争の形そのものが次第に異なっていくとの見方を示した。

「アメリカで計算能力が2倍になったとしても、それがモデルの訓練だけに使われるわけではない。より多くの研究成果を生み出し、より多くの人材を引きつけ、顧客を増やし、次世代のデータセンターへの投資につながる。市場の力によって、この循環が繰り返され、競争力がさらに強化されていく」

同氏は、中共はアメリカと同じ条件で全面的に競争しているわけではないと見ている。「インフラで後れ、サプライチェーンも制約されている。追い上げるためのコストも高まり続けており、非対称な競争になっている」

黄氏は、一方で、アメリカでは難しい手段を使うこともできると指摘した。「例えば人材を引き抜いたり、社会全体から個人情報を含む、いわゆるビッグデータを大量に収集し、AIの訓練に利用したりすることだ」

先端半導体やデータセンター、人材でアメリカが優位を保つ中、中共が国家主導の体制でどこまで差を縮められるかが焦点となる。

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