【医学古今】

栄養学と食養生

  栄養学は現代医学の食事指導の基本理論です。栄養の過不足によって起きた健康問題は、この理論に基づいて指導すれば効果が得られます。しかし、原因はあまり認識されず、有効な治療もできません。

 例えば、鉄不足による貧血には鉄剤を補えば効果が表れますが、投薬を止めたら再発することが多々あります。

 高脂血症の場合も、脂質の代謝を改善する薬を投与すれば検査値は改善されますが、薬を止めればやはり同じ状態に戻る場合が多いのです。

 一方、漢方医学では、栄養過不足を起こした生活習慣の問題や臓腑機能の原因を細かく分析し、臓腑機能の改善を重点に考えます。

 鉄不足貧血の場合、鉄の吸収段階の問題であれば脾臓を、貯蔵段階の問題であれば肝臓を、利用段階の問題であれば腎臓を中心に治療するようになります。

 臓腑機能の改善ができれば、薬を止めても病状がすぐ元に戻ることはないはずです。

 伝統の漢方医学には、血液や生体組織の検査により栄養素の過不足を判断する方法はないので、主に体に現れた症状や症候などを通じて体質状況を把握します。体質が改善できれば、栄養代謝が自ら改善される場合が多いのです。

 例えば、ある患者は湿疹、生理不順、疲労感、浮腫みなどの症状で漢方治療を受けていて、体質は「肝脾不足、痰湿停滞」でした。これに対して暫く薬を投与したら、諸症状がすべて改善され、ほとんど無くなりました。同時に、長年来治療を受けても改善できなかった高脂血症も完全に正常に戻りました。

 

(漢方医師・甄 立学)