2020年11月、サイクロン・ニバル接近の知らせを受け、インド・チェンナイ港にボートを繋ぐ漁業者等(AFP/Getty Images)

インド沿岸警備隊の災害準備態勢が 人命保護に貢献

インド国防省が発表した新たな報告書によると、2020年後半に壊滅的な2つのサイクロン発生時に先制措置を講じて漁業者等を保護したインド沿岸警備隊(ICG)は、その人道支援・災害救援(HADR)能力の有効性を見事に実証した。

サイクロン「ニバル(Nivar)」と「ブレビ(Burevi)」はそれぞれ11月下旬と12月上旬にインド南部と周辺沿岸地域で猛威を振るった。複数の報道によると、サイクロン・ニバルにより家屋や会社施設が倒壊して少なくとも12人が死亡し、推定600億円(6億米ドル)の被害がもたらされた。サイクロン・ブレビによる死者は少なくとも9人と報じられているが、物的損害は比較的少なかった。

数年前に発生したサイクロンでは漁業者の死亡数が膨大な数に上ったが、今回は先制措置により多くの人命を守ることができた。インドのPTI(Press Trust of India)通信が報じたところでは、2017年11月にインド南部とスリランカを襲った猛烈なサイクロン「オッキー(Ockhi)」により、インド南西部沿岸に位置するケーララ州で操業していた143人の漁業者を含む218人のインド国民が命を落としたが、インドの空軍、沿岸警備隊、海軍により250人以上の漁業者が救助されている。

2021年3月に発表された報告書には、「サイクロン・ニバルとサイクロン・ブレビ発生時には、合計それぞれ23隊と33隊の沿岸警備隊の災害対応隊(DRT)が待機態勢を整えた」および「サイクロン・ニバルとサイクロン・ブレビ発生時の複数関係者等による予防措置と先制措置により、海洋における事件/事故と死亡事例は皆無であった」と記されている。

報告書によると、サイクロン接近に伴う気象局の注意喚起を受け、インド沿岸警備隊が船舶を派遣し、漁業者等に母国語で避難を指示している。インド災害管理法には必要に応じて軍隊が民政を支援することが定められているが、インド沿岸警備隊の行動は同義務に完璧に準拠したものであった。政府の対応機能においてインド沿岸警備隊は重要な一要素と見なされており、沿岸警備隊の隊員はすべての主要沿岸災害の緊急対応者に指定されている。

サイクロン・ニバルとサイクロン・ブレビに先立ってインド沿岸警備隊が講じた措置が人命保護に貢献したと結論付けたインド国防省の報告書には、「災害管理対策としてインド沿岸警備隊が構築した標準運用手順(SOP)はすべての編隊に浸透しており、これに基づき沿岸警隊備隊員の能力開発と訓練の取り組みが実施されていた」および「インド沿岸警備隊の部署にはすべての州当局と地区当局との緊密な連絡系統と調整体制が確立されている」と記されている。

同標準運用手順には、すべての沿岸警備隊の編隊における高い警戒態勢と優れた即効性の維持、沿岸警備隊・州当局・インド気象局間の継続的な通信の維持、無線による全漁船への陸上避難指示が含まれている。また、近海を通過する商船に対して漁業者等に最寄りの港湾への避難を促し、必要に応じて支援を提供するよう依頼している。 サイクロン・ブレビ発生時には、沿岸警備隊はホバークラフトを使用して小さな島で立ち往生した漁業者3人を救助している。 

(Indo-Pacific Defence Forum)

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