若葉して御目の雫(しずく)ぬぐはばや(笈の小文)
歌意「みずみずしい初夏の若葉が、御堂の周りに繁っています。その若葉をとってきて、もはや視力を失った和上のお目の涙を、わたくし芭蕉が拭いてさし上げとうございます」。
松尾芭蕉の句。『笈の小文』の旅で、奈良の唐招提寺を訪れた作者が、鑑真和上の尊像に向かって詠んだ、芭蕉名句中の名句です。
芭蕉がこの地を踏んだのは貞享5年(1688)4月。同じ年の9月から「元禄」という元号に変わります。ここで芭蕉は、約900年前の天平時代に仏教の戒律を伝えるため、招聘に応じて来日した唐の高僧・鑑真和上に「対面」しています。もちろんそれは鑑真の姿を映した漆像ですが、芭蕉は確かに、その閉じた両目に光る涙を見たのです。
(聡)
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