中国共産党の習近平総書記(NICOLAS ASFOURI/AFP via Getty Images)

習近平氏、「富の再分配」を強調 富裕層をターゲット 毛時代再来か

中国共産党の習近平総書記は17日、共産党中央財経委員会の会議に出席し、新たな富の再分配を強調し、高額所得者層への「規制と調節」を強化するよう指示した。民間企業への取り締まりが相次ぐ中、高額所得者もターゲットになったことについて、「資産家や地主を打倒し、土地を分け合う」政治運動を始めることは文化大革命の再来を意味するとの指摘がある。

国営新華社によると、習近平氏は高官らに対して、当局は「社会的な公正」を推進するために、富の再分配を行う制度を構築しなければならないと述べた。

習近平氏は会議で、「高額所得者に対する規制と調整を強化する必要があり」「過剰な所得を合理的に調整し、高額所得者や企業に対して社会への還元を促す」などと発言した。

米CNNは、新華社の報道は詳細を明らかにしなかったものの、習近平政権が高額所得者への大増税などで、富の再分配を行っていく可能性があると分析。また、新華社が「高額所得者」の定義や判断基準を公表しなかったことに対して、中国国民は自身が当局の規制対象になるのではないかと強い不安に陥っているという。

CNNやウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)などの米メディアは、習近平氏が同会議で述べた「共同富裕」に注目した。習近平氏は会議で、共同富裕は国民全体の富裕という意味で、「一部の人が富裕になることではない」と強調した。

毛沢東は1950年代、共同富裕という概念を考案した。この政策方針の下で、毛沢東の統治時代では、共産党は裕福な地主やエリートから土地と資産、権利を次々と奪った。

習近平政権はこのほど、金融リスクの回避や国家安全保障上の懸念などの理由で、国内のIT企業、金融企業、教育関連企業に対して締めつけを強化した。このため、中国国内外の株式市場で、これらの企業の株価が急落し、投資家に莫大な損失をもたらした。

米CNBCは、中国当局が企業に対して規制を強化した背景には、この富の再分配と共同富裕という当局の方針があるとの見方を示した。

いっぽう、豪州在住の中国人学者、皇甫静氏は米ラジオ・フリー・アジア(RFA)に対して、国際社会の中国対抗の動きが加速する中、「習氏は『土豪を倒し、土地を分ける』という政治運動を新たに起こすことで、国民の共産党政権に対する支持を得たいという狙いだ」と指摘した。

共産党は結党した1920年代、富裕層の資産を貧困層に分け与えることによって一般労働者の支持を取り付け、革命の成功につながった。「土豪を倒し、土地を分ける」は当時、打ち出されたスローガンだった。いっぽう、革命成功後、労働者に与えた土地を「人民公社化運動」を通じて再び奪い取った。

皇甫氏は、「習近平氏は完全に毛沢東の失策を繰り返しているだけ」と批判し、「中国が毛時代の鎖国状態に戻ることは、国民にとって大きいな災いになる」と述べた。

1989年の学生らの民主化要求運動に参加した万潤南氏は、「習近平氏の会議での発言と中国共産党の歴史を合わせてみると、中国当局は今後、国内で再び文化大革命を展開する恐れがある」と推測した。

(翻訳編集・張哲)

 

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