温泉地の源泉などで、異様な臭いを漂わせている物質は硫黄(いおう)です。
意外なことですが、あの臭う硫黄は、カルシウムやリンと同じく、人の健康維持に欠かせない必須ミネラルの一種なのです。
現在のところ、硫黄の1日の推奨摂取量は示されておらず、「通常の食事をとっていれば、硫黄が不足することはない」と言われています。
体内ミネラルとしての硫黄のはたらきは、例えば髪の毛、皮膚、爪などのタンパク質を合成すること、および体内の解毒作用です。そのため、もしも硫黄が不足すると、脱毛や爪がもろくなる、皮膚が荒れて吹き出物ができやすくなる、などの体調変化が起きてきます。
硫黄の摂取不足が懸念されるのは、タンパク質の摂取量が少ない人、あるいはベジタリアンなど植物性タンパク質だけを摂取している人です。
それらの人は、十分な量の硫黄が吸収または合成されないことにより、タンパク質の熱エネルギー欠乏による低栄養、関節疾患、および体内毒素の蓄積をきたすことがあるため、注意および食事の改善が必要になってきます。
体に必要な硫黄は、特にサプリメントに頼らなくても、日常の食事から摂れます。
硫黄が比較的多く含まれる食品は、肉類、魚類、大豆、卵、ニンニク、タマネギ、ネギ、ニラなどです。
ごらんの通り、「臭いが強い印象の食品」に多く含まれていると言えますが、実際(ニンニク、タマネギ、ネギ、ニラなどの)ネギ科の野菜が発する独特の臭いは、それらに含まれる硫黄のはたらきによるものなのです。
またネギ科と同じく、アブラナ科の野菜にも硫黄は多く含まれています。
アブラナ科の野菜には、カリフラワー、ケール、ルッコラ、クレソン、白菜、大根、ブロッコリー、キャベツなどがあります。
研究者によると、「ネギ科とアブラナ科の野菜から摂取される硫黄は、人が食事から摂取する硫黄の42%を占めており、これらの食材が硫黄摂取に有効であることを証明した」としています。
こうしたネギ科およびアブラナ科の野菜を多く食べることは、各種のがんや心血管疾患、2型糖尿病、神経変性疾患の予防にもなるという利点があります。
そのほか、アボガド、モモ、ラズベリーなど多くの果物にも硫黄が含まれています。
そのような、さまざまな食品をバランス良く食べることで、必須ミネラル16種(ナトリウム、マグネシウム、リン、硫黄、塩素、カリウム、 カルシウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、セレン、モリブデン、ヨウ素)のうちの硫黄については、摂取不足を心配することはなくなるでしょう。
(文・GreenMedInfo/翻訳編集・鳥飼聡)
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